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第三章 魔人救済編
220 身体が妙に熱い
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自分でもできるかどうか知りたくて、空の水魔石に魔力を注ぎこんでみた。けっこう抵抗が大きいな……なかなか貯まらない。
小魔石一つを容量いっぱいにするのに、体感で二十分はかかった。魔力の支配を持っててもこれか……普通の獣人にはまず無理だろうなあ。
俺が何をするのか口を挟まずに見守っていたカイルが、ボソッと呟いた。
「魔人はイツキのようなやり方で、魔石を用意するわけじゃない」
「どうするんだ?」
「魔力のこもった水や血、体液の中に魔石を浸して、魔石は作られている」
「まじか……」
血や体液とか知りたくなかったな……魔力のこもった水自体は、ダンジョンに湧きでるとのこと。これじゃ獣人が魔石を作るのは望み薄だな。
「んー、わかった。だったら今日は補充方法を考えるのはやめて、電池を作る」
「電池だと?」
「そう。できるかわかんねえけど、雷の魔石から一定の力で電力を流したいんだ」
「一定の力を流すだけでいいなら、機構がわかる」
「本当か!? さっすがカイル、教えてくれ」
魔法金属をああだこうだ言いながら、魔力を込めて捏ねまわす。青い金属は魔力を込めると、面白いくらいに簡単に変形した。
「ここの辺りに筒を作って……威力を調整しやすいように巻いておけ」
「わかった」
昼飯を摘んだ後も練り練りと金属の形を整えて、なんとかそれらしき物を作り終えた。
出来上がった試作品一号を、さっそく起動してみる。電気が放出される先として、ミスリルの短剣を選んだ。
極々弱い電流を流してみると、パチッと静電気のような音が弾けた。
「おっ、ちゃんと電気が流れてるな」
ボルト数が調整できれば、スマホの充電ができそうだ。これでカイルの貴重な表情を集めた、珠玉のアルバムを作成できるな!
楽しくて興奮したせいなのか、いやに体がポカポカと熱をもっているのに気づいた。
パタパタと胸元に空気を送りこむが、それでも暑い気がして、耳を持ち上げて熱を冷まそうと試みる。
すると、ハラリと落ちるモカブラウンの抜け毛……俺はピンときた。そうか、春にも換毛期があって然るべきだよな。
カイルもすぐに俺の変化に気づいて、体調を気遣ってくれる。
「毛が抜けた……イツキ、大丈夫か」
「今のところは、暑いってくらいしか変化がねえな」
「そうか。今日は早めに休め。実験は一旦終了だ」
すでに時刻は夕暮れだった。インベントリから食事を取りだして、火魔法で温めて食べている間にも、カッカと体が火照る。
「暑いな……」
「これを食べて、ブラッシングを終えたら寝ろ」
「うん……そうさせてもらうよ」
例によって例のごとく、カイルが当たり前のように耳をブラッシングしてくれた。
敏感になった耳を触られて、反応しないようにするのは大変だった。
「ん……っ」
「見ろイツキ、ごそっと抜けた」
「うわ、こんなに……」
尻尾の毛だけは自分でブラシをかけると言い張り、浴室にこもろうとするがカイルに止められた。
「待て。どうせ毛がすでに落ちているから、ここで尻尾も綺麗にしてしまうといい。後でまとめて掃除しておく」
「え、でも……」
「ちゃんと抜け毛が落とせているか見てやるから、ここでやってしまえ」
カイルの勢いに押されて、頭がボーッとしはじめた俺はリビングで尻尾を出す。
椅子の背もたれに片手をかけて体を支える。ビクンビクンしながらも、なんとか櫛をかけ終えた。
「ふっ、ふう……」
「いい眺めだな……」
「バカ……っ」
手入れをしている間、カイルの視線がやたらと刺さってきた。やっぱり浴室に行けばよかった。
「じゃあ、もう寝るから。あとよろしくな」
「わかった」
本を読むというカイルをおいて、一足先に寝室のベッドを占領した。
小魔石一つを容量いっぱいにするのに、体感で二十分はかかった。魔力の支配を持っててもこれか……普通の獣人にはまず無理だろうなあ。
俺が何をするのか口を挟まずに見守っていたカイルが、ボソッと呟いた。
「魔人はイツキのようなやり方で、魔石を用意するわけじゃない」
「どうするんだ?」
「魔力のこもった水や血、体液の中に魔石を浸して、魔石は作られている」
「まじか……」
血や体液とか知りたくなかったな……魔力のこもった水自体は、ダンジョンに湧きでるとのこと。これじゃ獣人が魔石を作るのは望み薄だな。
「んー、わかった。だったら今日は補充方法を考えるのはやめて、電池を作る」
「電池だと?」
「そう。できるかわかんねえけど、雷の魔石から一定の力で電力を流したいんだ」
「一定の力を流すだけでいいなら、機構がわかる」
「本当か!? さっすがカイル、教えてくれ」
魔法金属をああだこうだ言いながら、魔力を込めて捏ねまわす。青い金属は魔力を込めると、面白いくらいに簡単に変形した。
「ここの辺りに筒を作って……威力を調整しやすいように巻いておけ」
「わかった」
昼飯を摘んだ後も練り練りと金属の形を整えて、なんとかそれらしき物を作り終えた。
出来上がった試作品一号を、さっそく起動してみる。電気が放出される先として、ミスリルの短剣を選んだ。
極々弱い電流を流してみると、パチッと静電気のような音が弾けた。
「おっ、ちゃんと電気が流れてるな」
ボルト数が調整できれば、スマホの充電ができそうだ。これでカイルの貴重な表情を集めた、珠玉のアルバムを作成できるな!
楽しくて興奮したせいなのか、いやに体がポカポカと熱をもっているのに気づいた。
パタパタと胸元に空気を送りこむが、それでも暑い気がして、耳を持ち上げて熱を冷まそうと試みる。
すると、ハラリと落ちるモカブラウンの抜け毛……俺はピンときた。そうか、春にも換毛期があって然るべきだよな。
カイルもすぐに俺の変化に気づいて、体調を気遣ってくれる。
「毛が抜けた……イツキ、大丈夫か」
「今のところは、暑いってくらいしか変化がねえな」
「そうか。今日は早めに休め。実験は一旦終了だ」
すでに時刻は夕暮れだった。インベントリから食事を取りだして、火魔法で温めて食べている間にも、カッカと体が火照る。
「暑いな……」
「これを食べて、ブラッシングを終えたら寝ろ」
「うん……そうさせてもらうよ」
例によって例のごとく、カイルが当たり前のように耳をブラッシングしてくれた。
敏感になった耳を触られて、反応しないようにするのは大変だった。
「ん……っ」
「見ろイツキ、ごそっと抜けた」
「うわ、こんなに……」
尻尾の毛だけは自分でブラシをかけると言い張り、浴室にこもろうとするがカイルに止められた。
「待て。どうせ毛がすでに落ちているから、ここで尻尾も綺麗にしてしまうといい。後でまとめて掃除しておく」
「え、でも……」
「ちゃんと抜け毛が落とせているか見てやるから、ここでやってしまえ」
カイルの勢いに押されて、頭がボーッとしはじめた俺はリビングで尻尾を出す。
椅子の背もたれに片手をかけて体を支える。ビクンビクンしながらも、なんとか櫛をかけ終えた。
「ふっ、ふう……」
「いい眺めだな……」
「バカ……っ」
手入れをしている間、カイルの視線がやたらと刺さってきた。やっぱり浴室に行けばよかった。
「じゃあ、もう寝るから。あとよろしくな」
「わかった」
本を読むというカイルをおいて、一足先に寝室のベッドを占領した。
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