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第3話
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俺は王国の周囲を囲う外壁の補修工事の現場でアルバイトをしている。
どうやら俺はオーガの血が濃いらしく見た目以上に怪力という能力がある。
筋肉はそれなりについているし、我ながら良い身体だという自負はあるが、それでも現場のおっちゃん達の方が筋骨隆々だ。
これもオーガの血ということなのだろう、腕力はおっちゃん達よりあるはずなんだけど、これが才能だというなら、どれだけ鍛えてもああいうマッチョマンにはなれないのか。
マッチョマンは外見が全てだと俺は思う、俺は幼いころにおっちゃんの二の腕にぶら下がったことを思い出した。おばちゃんもおっちゃんに負けずに筋骨隆々だった。
俺の周りの人間は貴族様に比べると下品だけど、悪意はない。喧嘩をしても翌日にはリセットされるのだ。
腕力は人生を豊かにする。
……まあ実戦ではなんの役にも立たないけどな、ご先祖様には悪いけど少しだけ魔法の才能を授けてほしかった。
だが建設資材を運ぶという作業においてはとても役に立った。
現場では俺はヒーローである。重たいものをただ運ぶ、これだけで皆の役に立てる、うれしいじゃないか。
俺は街の外れにある城壁の修復作業の現場でせっせと汗を流す。
死んだ両親の代わりに俺を育ててくれたおっちゃん達の仕事場だ。顔見知りが多いし、気兼ねなく話せる。
俺が例の飛び級少女にコテンパンにされた話をしても笑って答えてくれる。
「カイル、そりゃ、ウィンウィンじゃねぇか、年齢的には俺の守備範囲外だけど、べっぴんさんなんだろ? そんな子にタダでいたぶられるなんて羨ましいってもんだ」
「そうだぞ、それにだ、その貴族の娘っ子はお前に気があるんじゃねぇか? 毎回毎回お前に突っかかってくるんだからよ。いっそおそっちまいねぇ。案外オーケーかもしれんしな、ガハハ!」
「おっちゃん、おそったら逆に殺されてしまうよ。相手は貴族なんだぞ! 俺としてはパンツが拝めただけでもチャラだよ」
「はは、そりゃ違いねぇか。おし、今日はこれでラストだ、お疲れさん。また明日な」
工事現場には貴族いない、みんな平民だ、だからか居心地がいい。
俺だって多少魔法が使えて卒業後は準貴族になるというのに俺には変わらずに優しい。
まあ、俺は準貴族だっていっても才能がないし、実際平民の彼らのほうが気持ちのいい人たちばかりだ。
おれの就職先は魔法使いというより、今と変わらず皆と汗を流すのがいいのだろうか。
育ててくれたおっちゃん達は俺に期待して魔法学院に入学させたが、すまん、俺の魔力ではつらいのよ。卒業したら皆で汗をながそうじゃないか。
仕事を終えて、一息ついていると遠くで爆発音が聞こえた。
どこで? 魔法学院が燃えている。その崩れかけの学院の尖塔の上に巨大な生き物が立っている、まさか、ドラゴンか?
ドラゴンは今度は王城に向かってドラゴンブレスを放つ。
ドラゴンブレス、噂には聞いていたが、それは炎というよりは青白い光の線のようだった。
王城の外壁には対魔法結界が施されていたが、それを無視するかのように結界は破られる。
ドラゴンブレスは外壁に当たると、外壁は溶けるより速く蒸発して爆発をおこした。
何度もブレスを放つドラゴンに、王城にいた魔法使い達は手も足も出ない。
王城にいる貴族はエリート中のエリートの魔法使いばかりだし多少は反撃できたのだろうか。
でも、それすら確認できずに王城は崩れ落ちた。何人死んだのだろう、王様や貴族たち、あれじゃ生きてはいないだろう。
俺はまだ建物が残っている魔法学院の校舎にむかって全力で走った。
誰か、生き残ってくれれば……いた! 校舎の前に呆然と立っている少女――シャルロットだ。
「カイル? ……私、逃げちゃった。目の前にいるあいつと目が合って足が震えた。勝てないと思った、あんたが言ってたこと正しかった。逃げるが勝ちだっけ……。
勇敢に戦った先生や皆は死んじゃったのよ、あれには勝てない、どうしよう」
今のところはドラゴンは攻撃を止めている。
校舎の別の建物に移り何かを物色しているようだった。
ドラゴンの修正として宝物を集めるというのを聞いたことがあった。おそらくは何かを探しているのだろう。
いや、今はこれからどうするかだ。ドラゴンは紛れもなく勝ち目のない人類の天敵、だがやつらは俺達を見下している。
逃げることに専念すれば生き残れるはずだ。生き延びなければ。
「とりあえず、ここから離れよう――!」
そのとき、まだ無傷だった校舎に、ドラゴンブレスが放たれた。
俺の数メートル先にいたシャルロットは爆発に巻き込まれてしまった。
ドラゴンは言葉を放った。ドラゴンは人語を話せる。
俺に話しかけたわけではないのだろう。
『ふん、魔法使いというのはこの程度か、最後に手土産でも貰っていこうと思っていたがガラクタしかないではないか! ここは魔法使いの巣なのだろう?』
ドラゴンが摘まみ上げたケースは彼の指先が触れると砕けて、中から一つの剣が落ち地面に突き刺さる。
『剣か、我には興味がない。王城にはもっとましなものがあると期待しようか。財宝の質によってはこのまま見逃してやろうではないか。グハハハ』
ドラゴンは瓦礫となった王城に向かって飛び立つ。
命拾いした……のか?
――っ! シャルロットだ! さっきの爆発に巻き込まれて行方が分からない。
「シャルロット! どこだ! 返事をしろ!」
俺は、ひたすら瓦礫の中からシャルロットを探す。何度も彼女の名前を叫びながら。
「……うるさいったら。私はここよ、それにしてもやっと私を名前で呼んだわ……ね……」
「シャルロットよかった。無事だったか」
俺は彼女の声のする方へ向かい瓦礫をどかす、そこには彼女が横たわっていた。
暗闇だったが彼女の綺麗な金髪と白い肌が月明かりに照らされていたため簡単に発見できた。
「無事……そうね、幸いにも致命傷は避けたのかしら。呼吸はできるし血も吐いてないから。けど……痛みが感じない、最初は凄く痛くて気絶するかと思ったけど。
今はなんか、暖かいというか、寒いというか、なんか下半身が濡れてるのよ、あはは、私12才になってもお漏らししちゃったかしら、情けない」
俺はシャルロットの目を隠した。
シャルロットの両足がない……。彼女は自身の生暖かい血だまりに横たわっていたのだ。
息はある。でも、これではもう、俺の回復魔法では、くそ、俺に魔法の才能があれば。
俺は必死で止血をする。その際に傷口に触れたせいで再び激痛を感じたのか、絶叫の後にすぐに彼女は意識を失った。
俺の初級回復魔法では間に合わない、なんとか血を止めないと。
工事現場での仕事帰りが幸いしたのか工具箱からロープを取り出し欠損した部位を硬く縛る。
なんとか、これで出血は止まったか、あとは医療魔術の先生か宮廷魔術師か、……いや、皆死んでしまってるだろう。
何かないのか?
俺は死に物狂いで周囲の瓦礫を探す。何か治療に仕える、ポーションでもなんでもいい、何かないのか。
瓦礫の中から、大きな剣が出てきた。それは地面に突き刺さっていた。
剣? 剣なのか? 確かに形が剣だが、それにしては巨大すぎるし、……そうか、これはさっきドラゴンが放り捨てた機械魔剣ベヒモスだ。
魔剣だ、ということは魔力がある。もしかしたらこの展開を覆す何かがあるはずだ。
地面に刺さった機械魔剣ベヒモスを抜き、空に掲げて叫んだ。
「たのむ! なんでもいい! 天才の作った最強の魔法の武器なんだろ! たのむよ、助けてくれ!」
どうやら俺はオーガの血が濃いらしく見た目以上に怪力という能力がある。
筋肉はそれなりについているし、我ながら良い身体だという自負はあるが、それでも現場のおっちゃん達の方が筋骨隆々だ。
これもオーガの血ということなのだろう、腕力はおっちゃん達よりあるはずなんだけど、これが才能だというなら、どれだけ鍛えてもああいうマッチョマンにはなれないのか。
マッチョマンは外見が全てだと俺は思う、俺は幼いころにおっちゃんの二の腕にぶら下がったことを思い出した。おばちゃんもおっちゃんに負けずに筋骨隆々だった。
俺の周りの人間は貴族様に比べると下品だけど、悪意はない。喧嘩をしても翌日にはリセットされるのだ。
腕力は人生を豊かにする。
……まあ実戦ではなんの役にも立たないけどな、ご先祖様には悪いけど少しだけ魔法の才能を授けてほしかった。
だが建設資材を運ぶという作業においてはとても役に立った。
現場では俺はヒーローである。重たいものをただ運ぶ、これだけで皆の役に立てる、うれしいじゃないか。
俺は街の外れにある城壁の修復作業の現場でせっせと汗を流す。
死んだ両親の代わりに俺を育ててくれたおっちゃん達の仕事場だ。顔見知りが多いし、気兼ねなく話せる。
俺が例の飛び級少女にコテンパンにされた話をしても笑って答えてくれる。
「カイル、そりゃ、ウィンウィンじゃねぇか、年齢的には俺の守備範囲外だけど、べっぴんさんなんだろ? そんな子にタダでいたぶられるなんて羨ましいってもんだ」
「そうだぞ、それにだ、その貴族の娘っ子はお前に気があるんじゃねぇか? 毎回毎回お前に突っかかってくるんだからよ。いっそおそっちまいねぇ。案外オーケーかもしれんしな、ガハハ!」
「おっちゃん、おそったら逆に殺されてしまうよ。相手は貴族なんだぞ! 俺としてはパンツが拝めただけでもチャラだよ」
「はは、そりゃ違いねぇか。おし、今日はこれでラストだ、お疲れさん。また明日な」
工事現場には貴族いない、みんな平民だ、だからか居心地がいい。
俺だって多少魔法が使えて卒業後は準貴族になるというのに俺には変わらずに優しい。
まあ、俺は準貴族だっていっても才能がないし、実際平民の彼らのほうが気持ちのいい人たちばかりだ。
おれの就職先は魔法使いというより、今と変わらず皆と汗を流すのがいいのだろうか。
育ててくれたおっちゃん達は俺に期待して魔法学院に入学させたが、すまん、俺の魔力ではつらいのよ。卒業したら皆で汗をながそうじゃないか。
仕事を終えて、一息ついていると遠くで爆発音が聞こえた。
どこで? 魔法学院が燃えている。その崩れかけの学院の尖塔の上に巨大な生き物が立っている、まさか、ドラゴンか?
ドラゴンは今度は王城に向かってドラゴンブレスを放つ。
ドラゴンブレス、噂には聞いていたが、それは炎というよりは青白い光の線のようだった。
王城の外壁には対魔法結界が施されていたが、それを無視するかのように結界は破られる。
ドラゴンブレスは外壁に当たると、外壁は溶けるより速く蒸発して爆発をおこした。
何度もブレスを放つドラゴンに、王城にいた魔法使い達は手も足も出ない。
王城にいる貴族はエリート中のエリートの魔法使いばかりだし多少は反撃できたのだろうか。
でも、それすら確認できずに王城は崩れ落ちた。何人死んだのだろう、王様や貴族たち、あれじゃ生きてはいないだろう。
俺はまだ建物が残っている魔法学院の校舎にむかって全力で走った。
誰か、生き残ってくれれば……いた! 校舎の前に呆然と立っている少女――シャルロットだ。
「カイル? ……私、逃げちゃった。目の前にいるあいつと目が合って足が震えた。勝てないと思った、あんたが言ってたこと正しかった。逃げるが勝ちだっけ……。
勇敢に戦った先生や皆は死んじゃったのよ、あれには勝てない、どうしよう」
今のところはドラゴンは攻撃を止めている。
校舎の別の建物に移り何かを物色しているようだった。
ドラゴンの修正として宝物を集めるというのを聞いたことがあった。おそらくは何かを探しているのだろう。
いや、今はこれからどうするかだ。ドラゴンは紛れもなく勝ち目のない人類の天敵、だがやつらは俺達を見下している。
逃げることに専念すれば生き残れるはずだ。生き延びなければ。
「とりあえず、ここから離れよう――!」
そのとき、まだ無傷だった校舎に、ドラゴンブレスが放たれた。
俺の数メートル先にいたシャルロットは爆発に巻き込まれてしまった。
ドラゴンは言葉を放った。ドラゴンは人語を話せる。
俺に話しかけたわけではないのだろう。
『ふん、魔法使いというのはこの程度か、最後に手土産でも貰っていこうと思っていたがガラクタしかないではないか! ここは魔法使いの巣なのだろう?』
ドラゴンが摘まみ上げたケースは彼の指先が触れると砕けて、中から一つの剣が落ち地面に突き刺さる。
『剣か、我には興味がない。王城にはもっとましなものがあると期待しようか。財宝の質によってはこのまま見逃してやろうではないか。グハハハ』
ドラゴンは瓦礫となった王城に向かって飛び立つ。
命拾いした……のか?
――っ! シャルロットだ! さっきの爆発に巻き込まれて行方が分からない。
「シャルロット! どこだ! 返事をしろ!」
俺は、ひたすら瓦礫の中からシャルロットを探す。何度も彼女の名前を叫びながら。
「……うるさいったら。私はここよ、それにしてもやっと私を名前で呼んだわ……ね……」
「シャルロットよかった。無事だったか」
俺は彼女の声のする方へ向かい瓦礫をどかす、そこには彼女が横たわっていた。
暗闇だったが彼女の綺麗な金髪と白い肌が月明かりに照らされていたため簡単に発見できた。
「無事……そうね、幸いにも致命傷は避けたのかしら。呼吸はできるし血も吐いてないから。けど……痛みが感じない、最初は凄く痛くて気絶するかと思ったけど。
今はなんか、暖かいというか、寒いというか、なんか下半身が濡れてるのよ、あはは、私12才になってもお漏らししちゃったかしら、情けない」
俺はシャルロットの目を隠した。
シャルロットの両足がない……。彼女は自身の生暖かい血だまりに横たわっていたのだ。
息はある。でも、これではもう、俺の回復魔法では、くそ、俺に魔法の才能があれば。
俺は必死で止血をする。その際に傷口に触れたせいで再び激痛を感じたのか、絶叫の後にすぐに彼女は意識を失った。
俺の初級回復魔法では間に合わない、なんとか血を止めないと。
工事現場での仕事帰りが幸いしたのか工具箱からロープを取り出し欠損した部位を硬く縛る。
なんとか、これで出血は止まったか、あとは医療魔術の先生か宮廷魔術師か、……いや、皆死んでしまってるだろう。
何かないのか?
俺は死に物狂いで周囲の瓦礫を探す。何か治療に仕える、ポーションでもなんでもいい、何かないのか。
瓦礫の中から、大きな剣が出てきた。それは地面に突き刺さっていた。
剣? 剣なのか? 確かに形が剣だが、それにしては巨大すぎるし、……そうか、これはさっきドラゴンが放り捨てた機械魔剣ベヒモスだ。
魔剣だ、ということは魔力がある。もしかしたらこの展開を覆す何かがあるはずだ。
地面に刺さった機械魔剣ベヒモスを抜き、空に掲げて叫んだ。
「たのむ! なんでもいい! 天才の作った最強の魔法の武器なんだろ! たのむよ、助けてくれ!」
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