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第2話
しおりを挟む「起きなさい! あんた、平民の癖に私に指図したんだから、それなりの罰を受けるべきなのよ、罪には罰! これは当然のことよ!」
今、俺は地べたに寝そべっている。したくてしている訳ではない。
俺は平民を差別するこの貴族様にイラっとしたからちょっと注意しただけだ。
だというのにそれが罪とはお貴族様はこれだから。
まあ、貴族というのは強い、知ってる、俺が地べたに這いつくばっている現状が物語っている。
平民である俺がお貴族様の決闘という名のリンチに対抗する手段はない。世知辛いが、それでも救いはある。
そうだ、このアングルは悪くない、ちょっとパンツが見えるのだ。
お貴族様のご令嬢、顔はいいし、12才にしてはスタイルもそれなりだ、数年後が楽しみといったところか、それに白か、リンチされたことはこの純白で忘れてしまおう。
俺は平民街の育ちで貴族ではない、魔力が僅かにあったからこの魔法学院に入学できた。俺も準貴族としての将来が約束されてるはずなんだが……。
平民だった俺は、どうしても弱気を助ける番町気取りの行動をしてしまったのが不運だった。
だってだ、下級生に対していちいち突っかかる、この女がよくないのは間違いないのだ。
彼女は12才にして魔法学院の3年、俺と同級生だ、ちなみに俺は18才になる、つまりスーパーエリートでミス飛び級さんだ。
だからか、自分より年上の下級生が許せないのか、たびたび突っかかっては喧嘩になる。
彼女が言うにはもっと努力をしろと、……天才さんに努力といわれてもな。それはいじめなんだと何度も説得してるけど。結局は俺が決闘に巻き込まれてズタボロにされるのだ。
何度も言うが俺は平民の生まれだ。
魔法使いの家系でもないし一族に貴族がいたわけでもない、偶然に魔力が発現したということで平民枠で魔法学院の生徒になったのだ。
俺の両親は冒険者だったけどベヒモス討伐任務で仲良く死んでしまったらしい。俺が赤ん坊だったから思い出はない。
それでも俺の入学が決まると、両親には借りがあると言って育ててくれた建設組合のおっちゃん達は喜んでくれた。
両親とおっちゃん達は相当仲が良かったようで、俺の両親の話やご先祖様の話を聞かせてくれた。
どういう訳か俺のご先祖様にはオーガがいるらしい……。俺は人間なんだけどな。
オーガ、怪力の象徴で化け物だというのは周知の事実だが、この国からは程遠い場所に彼らは住んでいる。いつかはいってみたいご先祖様のルーツという感覚だ。
なぜ祖先にオーガがいるのか、詳しく知らないがおっちゃんが両親に聞いた話だと、恋愛結婚だったらしいのでそれはよしとする。
けしてグヘヘ展開の末に俺達の一族が生まれた訳ではないのだ、ほんとだよなご先祖様。
それのせいか、俺の能力は先祖返りしたのかオーガ並みの腕力があるということだ。
それには感謝だ、腕っぷしだけで平民街の番長になったのだから。子供の頃は平民外の平和は俺が守ると息まいていたっけ、腕力は正義だったのだ。
……だが、今の状況、俺と同級生で年下の少女にガチの喧嘩で負けてしまっている、何度も。
まったく、魔法使いとは理不尽な存在だ、拳が届く前に一方的にやられてしまうのだから。
「聞こえなかったのかしら、私の教育の邪魔をした愚か者! 起きなさいな!」
「ふぅ、起きてもいいけど謝らないぞ? 今回も俺が正しい。倫理的にだ。それに起きたらその純白が見えなくなってしまうじゃないか、もう少し堪能したい」
彼女は俺の目線に気付いたのか両手でスカートを抑えた。
「ひっ! まさかずっとみてたの? 信じらんない、もう少しきつめの罰が必要のようね」
見られたくないならスカート丈は長くしろよと思うのだが……。それでも女子の間では短い方がいいらしいのだ、見られたいのか見られたくないのかどっちなんだと俺は思う。
「いやいや、お嬢さん、ずっとは語弊がある、ちらちら程度だよ、でもそれがいいのだよ、じゃあな、今回は俺の負けだ、でもお前のやってることはいじめだ、よくないぞっと」
「待ちなさい! 私はお嬢さんじゃない! シャルロットよ! 名前くらい覚えなさいってば! ちょっとカイル! ……まったく逃げ足は速いわね」
知ってるよ、シャルロット・レーヴァテイン。いろんな意味で有名人だ。
お貴族様のご令嬢、魔力は生まれつき完璧で将来は明るい、何も問題ないスーパーエリートだろ?
まったく、これから授業が始まるというのに、なんで朝っぱらから喧嘩になるのか。
俺は魔法の才能はない、平民出身だからだろう。だが、それでもこの学院で頑張っている。
おもに身体強化の魔法、ヘイストは俺にうってつけだ、逃げるのに適している。情けないが実戦ではそれは最も上策なのだ。才能がなくても、生きてこそだ。プライドとは余裕のあるやつの特権なんだよ。
それにしても、才能の無いやつに対して貴族のプライドとやらを押し付けるのは良くない。
いじめにしか見えなかった。シャルロットは後輩に対して厳しすぎるのだ。
俺はつい止めに入って彼女に正論をぶつけるとこうして喧嘩になり逆に倒されるを繰り返していた。
ちなみに決闘の回数はそろそろ三桁になるかも、まあ数えてないけど、それでも一度も勝ったことがない。
俺の使える魔法は中級魔法のヘイスト、これは運動能力を補助して動きを速くする。
逃げるに特化した俺の得意魔法だ。
あとは初級魔法のマジックシールド、下位のヒールに、ファイアアローくらいか。
落ちこぼれだな、ほとんど一年生で覚える初級魔法から成長していない。
それでも今年で卒業か、三年間というのは長いようで短い、俺は魔法学院の教室に戻る。
――エフタル王国、王立魔法学院にて。
今日も成果はいまいちか、魔法使いの資質の差か……。才能、こればかりは努力でどうにもならないし、それにシャルロットだって才能に奢らず努力しているのだ。
なんやかんやで俺は彼女を尊敬している。
それが行き過ぎて自分より努力してないものに対して突っかかるのだが。
そういえば俺に突っかかってきたことはなかったな。一応俺の努力だけは認めているのだろうか。
まあ、取るに足らない存在としか思われていないのが正解だろう。
「おい、カイル・ラングレン、聞いたぞ、またあの飛び級お嬢さんに負けたんだって?」
俺を呼ぶ声、フルネームで呼ぶこいつは明らかに俺をからかっている。
こいつは同級生のラルフローレン、こいつもお貴族様だが、実力はシャルロットと同等と噂の自称天才様だが、どうも貴族というのは皆して性格が悪いという呪いでも掛けられているんだろうか。
関わるとろくなことはない、そんな輩はガン無視に限る。
俺は教室の窓の外に目を移す。うん? なんだあのでかい馬車は、それに随分とでかいケースが一つだけ。楽器か? 大きさから察するにチェロでも入ってるのだろうか。
「相変わらず僕を無視するその態度。これだから平民は……何を見てるんだ? ああ、あの馬車ね、学院長が最近、機械魔剣ベヒモスをオークションで購入したらしいよ。
学院長は最近羽振りがいいからね、お金がよほど余っているらしい。まったく馬鹿馬鹿しいよ、なんで歴代の所有者はことごとく破産しているというのに、あんな不吉なアイテムを欲しがるんだろうね」
お、珍しく俺と意見があった。
だが、学院長の気持ちは分かる。
魔法機械という偉大な発明をした、天才魔法使いが国家の予算を湯水のように使った、とても高価なガラクタ。芸術作品としてはこれ以上ない逸品だというのはわかる気がするのだ。
「ところでラングレン君、もう少し魔法に真面目に向き合ったらどうだい? このままだと脳みそまで筋肉になってしまうんじゃないかな?」
また俺に突っかかってくる。俺だって真面目に向き合っているのだ。こいつに相談したところで結局は自分の自慢話になるのは目に見えている。
「悪いなラルフ君、そろそろバイトなんだ、俺みたいな苦学生は忙しいんでね、じゃあな」
「おい! 僕を軽く見てるだろ? いつか痛い目をみるぞ」
といってるが俺はこいつにいじめられたことはない、うるさいけど露骨な決闘騒動はないかな、どちらかというとシャルロットの方が暴力的だ、こいつはその後の冷やかし話で突っかかってくる手合いだ。
それでもこんな輩はパンチラ以下だ!
俺は学院を後にするとバイト先へ向かった。
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