機械魔剣ベヒモス

神谷モロ

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第4話

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『ぱんぱかぱーん! おめでとう! 君は我が剣の所有者に相応しい腕力を持っているようだ。腕力は正義だね。
 さあ、これから装備登録をするよ。さっそくだけど所有者名の登録と、この剣の名前を決めるといい、カッコいいのでたのむぞいっ!』

「剣がしゃべった! これが機械魔剣ベヒモスだというのか!」

『あほ! 剣がしゃべるわけないじゃろがい! ……こほん、吾輩はルカ・レスレクシオンであーる。
 とりあえず、我が剣は『ベヒモス』という名前で登録っと、あとは少年よ、君の名は?』

「え? あ! 俺はカイル・ラングレンです。って、ルカ・レスレクシオン? 伝説の天才魔法使いの? マジかよ」

『マジであーる。 あっ! ……ちなみにこれは録音データであるので、会話は成立しないのだ。初心者の為のチュートリアルと思うがよい。吾輩はやさしいのであーる』

 ありがたい。ルカ・レスレクシオンが本当なら、何とかなるかもしれない。

『さてさて、さっそくチュートリアルを始めよう。君は今、目の前に強敵がいる、あくまで想定の話だ。
 ドラゴンとかそういう感じだと想定しよう。ではさっそくアクティブモードに変形しようか』

 そう言うと、魔剣の刀身が二つにわれ左右に展開し、その中央から細長い棒の様な物が露出した。

『この状態になったら、普段通り魔法を使うといい。デフォルトでは等倍の増幅率になっておる。つまりただの魔法の杖ということだ。
 仮にドラゴンの様な強力な個体を倒したい場合は状況に応じて倍率を変化させてみるといいじゃろう。
 ちなみに初回特典として、魔剣には魔力をフルチャージしておいたぞ、さて、なにか撃ってみるがよかろう』

 本当に録音データか? 会話が成立しているというか、現在の状況を理解しているように思える。

 いや、今はそれどころじゃないか、それにドラゴンは王城での財宝探しに不満だったのか、今度は周囲の大きな建物から順番にドラゴンブレスを放っていた。

 魔剣の重さは相当だが振り回せない訳ではない。

 俺はドラゴンに魔剣の先を向けて、魔法を放つ。俺が使える攻撃魔法、初級魔法のファイアアローしか使えないんだけどな。

 中心の棒から複数のリング状の光の魔法陣が浮かび上がる。
 その直後に、ドラゴンに向かって、青白い光の線が放たれた。
 その光りはドラゴンの防御結界を貫通し、片方の翼を切り裂く。

 ――――っ!

 ファイアアローの威力じゃない! それこそドラゴンブレスと同等かそれ以上はある。

 片方の翼を失ったドラゴンは俺を睨んだ。
『グゥ……人間、よくも我が翼を。許せんぞ!』
 突然の激痛によって怒り狂ったドラゴンは真っすぐこちらめがけて突進してくる。 

 魔法を放ち終わると魔剣のブレードは閉じ再び大剣の状態に戻る。

『さて、次はパッシブモードの説明に移るよ、ドラゴンは怒り狂い君に襲い掛かってきてるだろう。……と想定されます。
 パッシブモードはただの剣みたいだけど、それにも一工夫しているのだ。
 その状態は術者の魔力を回復させつつ接近戦に対応するモードなのだ。
 ブレード自体に魔力ドレインの術式を刻んでいる。切った対象から魔力をごっそりといただくって戦法なのだよ。
 ちなみその特性から、魔法結界を無力化することもできる。強力な結界であればあるほど吸収する魔力は大きい、防御無視からのドレイン、我ながら天才だと思ったよ』

 なるほど、つまりは普通の剣としてつかえると、それに重いといってもバイトで運んでた石材よりも少し重いだけだ。

 ――いける! さあ、かかって来い! 

 ドラゴンは油断していた、魔法使いは極大魔法をつかった後は魔力を失い行動不能になるのを知っていたからだ。
 これまで何人も殺してきた。今回もそうだろうと油断して接近戦に持ち込んだが、間違いだった。

 気づいたらドラゴンの視線は空中を舞い、首のない自身の胴体を見ながらこと切れた。

『おめでとう、カイル君、さてチュートリアル用の魔力がまだ残っているようだ、最後に回復魔法を使ってあげた方がいいんじゃないかな? 彼女死んじゃうよ?』

 そうか、魔法が増幅できるのなら、俺の初級のヒールでも彼女を完全回復させることができるはずだ。

 ――夜が明ける。 

 ベッドに寝かせておいたシャルロットが目を覚ましたのかブランケットがもぞもぞと動いている。

「すまんな、緊急だったから俺の部屋で寝かせたんだが、安心しろ何もしてない。あと今着る服を持ってくる。ちなみに服を脱がせたのはおばちゃんだから安心しろ」

 シャルロットは自分が裸になっていることに驚いたが、だんだん記憶がはっきりしてくると。そんなことよりも自身の五体が無事であることに安堵した。

「服だけど、女性ものが無いからこれで我慢してくれ。おばちゃんのだとサイズが合わないからな、じゃあ着替え終わったら声を掛けてくれよ」

 シャルロットは渡された男物のシャツとズボンにフード付きのマントを羽織る。

「着替えたわ、ところで、昨日のことだけどあれから何があったの?」

「ああ、それだけど、今はそれどころというか――」

「貴族がいたぞ! 囲え、一人も逃がすな! 捕まえようとは思うな! 奴らは魔法使いだ、見つけたらすぐに殺せ!」

 外から大きな声が聞こえる。
 
 おっちゃんとおばちゃんが部屋に入ってきた。
「カイルよ、……すまねぇ、今すぐ出てってくれねぇか……お前たちをここに置くわけにはいかねえんだ……」

「おっちゃん……、外の雰囲気からなんとなくわかるよ」
 貴族狩りが始まったんだろう。ドラゴンを呼び寄せた罪とかそんなところだろうか。

 実際、貴族たちは率先して魔獣狩りを行っていた。強力な魔獣からとれる牙や毛皮などは価値があるし、彼らの財源の一つである。

 そのたびに魔獣たちの報復を受けて死ぬのは大抵が平民だった。今回のドラゴンがその報復だったかは分からない。

 でも証拠など必要ないし。貴族たちは昨晩のドラゴン襲撃でほとんどが死傷しているし、拠点である王城や大貴族の屋敷、魔法学院はない。

 貴族に対する復讐を叶えるのは今しかないのだというのは簡単に予想できる。

 今は散発的に起こっている暴動は数日と待たずに王国全体に広がるだろう。

「おっちゃん、おばちゃん、お世話になりました。おっちゃん……そんな顔すんなって、育ててくれたこと本当に感謝してるよ、じゃあ、時間がないみたいだし、それに俺たちを匿ってたらおっちゃん達が危ない」

 外では逃げてた貴族が捕まったのだろうか、静まり返ったと思ったら断末魔が一瞬だけ聞こえた。 

 おばちゃんはシャルロットにカバンを手渡す。中には食料と水が入っているようだった。
「お嬢ちゃん、無事逃げたら、二人で食べなさい。硬いパンと干し肉だから口に合うかわからないけど……」

「おばさん、ありがとう、見ず知らずの私の為に服までくれて」

「さあ、行くぞシャルロット、目的地はないけど、とりあえず街の外に無事に逃げること、それだけを考えよう」

 おっと、これを忘れるところだった。
 俺は機械魔剣ベヒモスを担ぐと、ルカ・レスレクシオンの最後の言葉を思い出した。

『チュートリアル終了! よくやったぞ! なお、この録音音声は自動で消去されます。
 他の使い方は君自身の手でつかみ取るのだ! ちなみに吾輩は迷宮都市にいるかもしれないから、尋ねてくるとよいぞ!』

 迷宮都市か、遠いな。まあ目的地があるだけマシだし、一人ではない。何とかなるだろう。
 逃げるが勝ち、生きてこそだ。
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