26 / 56
第2章 とんでもない異変!編
26.プロローグ:お伽噺
しおりを挟むむかーしむかし。何千年もむかし。
朝をもたらす大きな神様と夜をもたらす三つ子の神様、二柱の神様が見守っているこの星には、人間が半分と魔物が半分ずつ暮らしていました。
人間には知恵を与え、魔物には力を与え、この星がどうなるのかを見ているのです。
魔物には王様がいて、魔物たちに人間や人間が作った食べ物を集めさせます。
自分達がお腹一杯になる為に、人間も食べ物も食べてしまうのです。
人間にも王様がいて、知恵を絞って武器を作ってみんなで魔物たちから人間を守ろうとしますが、力の弱い人間達は魔物に負けてしまいます。
人間は少し、また少しと数が減っていき、『このままではみんないなくなってしまう』と、困り果てていました。
その時、この星の様子を見ていた二柱の神様が――
「このままでは人間たちがいなくなって、魔物だらけの星になってしまう」
二柱の神様は力を合わせて、人間の為に魔物と戦える七体の動物の姿をした強い魔法使いを創りました。
火の魔法が上手な熊。
水の魔法が上手な亀。
風の魔法が上手な鳥。
土の魔法が上手な土竜。
光の魔法が上手な狼。
闇の魔法が上手な蝙蝠。
呪の魔法が上手な蜘蛛。
七体の強い魔法使いは、得意な魔法で魔物たちと戦いました。
火の魔法で魔物を焼き払い――
水の魔法で魔物を沼に沈め――
風の魔法で魔物を切り裂き――
土の魔法で魔物を圧し潰し――
光の魔法で魔物を串刺しにし――
闇の魔法で魔物を影に閉じ込め――
呪の魔法で魔物を狂わせ――
どんどん魔物の数を減らしていきます。
魔物の数が減ってきて、魔物の王様は魔物たちと一緒に人間のいない遠い遠いところへ逃げて行きました。
この星は、争いが減って少しずつ平和になっていきました。
人間は七体の魔法使いに感謝し、七体の魔法使いを大切に大切にお世話します。
人間の住む場所が平和になると、少しずつ人間の数が増えて、住む場所も新しい場所へと少しずつ広がっていきます。
魔物たちも、逃げた場所で少しずつ数を増やしていきました。住む場所も広がっていきます。
人間の住む場所が広がり、魔物の住む場所も広がると、人間と魔物の距離が近くなって、また争うようになりました。
でも、今度は人間の住む場所が広くなりすぎて、七体の魔法使いだけでは守れなくなっていました。
七体の魔法使いも、魔法使いではない人間も困ってしまいました。
人間の王様は、七体の魔法使いにばかり頼らないで、自分達も戦おうと決意します。
でも、自分たちは力が弱く、前も魔物に勝てなかったので、人間の王様は七体の魔法使いにお願いをします。
「私たちにも魔法を教えてくれないでしょうか?」
七体の魔法使いは答えます。
「私たち以外の人間も魔法を使える方法を考えましょう」
七体の魔法使いと人間は、知恵を出し合って、人間が魔法を使える方法を作りました。
それが、魔術です。
七体の魔法使いは、それぞれの魔法を他の人間も使えるようにした魔術を教え、人間に魔術師ができました。
魔術は魔法よりも弱いけれど、人間みんなが魔術を使えるわけではなかったけれど、魔術を使える人間ができました。
七体の魔法使いと人間の魔術師は、武器を持った人間を連れて自分たちの場所を守る為に戦いに行き、魔物たちを倒していきました。
魔物たちはまた遠く遠くへ逃げ、人間達は数を増やして住む場所も広くなっていきました。
魔物たちは、人間と出会わないようにひっそりと暮らすようになり、人間たちは平和を取り戻します。
でも――
人間たちの平和は、崩れました。
魔術を覚えた人間が、魔術を使えない人間をいじめるようになったからです。
火の魔術を使って、みんなを困らせる人。
水の魔術を使って、みんなを困らせる人。
風の魔術を使って、みんなを困らせる人。
土の魔術を使って、みんなを困らせる人。
光の魔術を使って、みんなを困らせる人。
闇の魔術を使って、みんなを困らせる人。
呪の魔術を使って、みんなを困らせる人。
魔術を使えない人間は怒りました。
魔術を使えない人間は、魔術を使える人間よりもたくさんいたので、武器を手にみんなで魔術を使える人間と戦うことにしました。
七体の魔法使いは困りました。
自分たちは、神様から魔物と戦う為に作られたので、人間たち同士の争いに手を出せないのです。
七体の魔法使いが手を出せないので、人間同士の争いは激しくなっていきました。
光の魔法使いだけは、人間たちに争いをやめるように説得しますが、言うことを聞く人間はいませんでした。
人間同士が争っているのを見た魔物たちも、この隙にまた人間を食べようとしてきます。
魔術を使えない人間と魔術を使える人間、そして魔物たちがいたる所で戦いをするようになりました。
この星が、以前よりも酷い争いになったことを悲しんだ神様は、何とかしようと考えます。
神様が七体の魔法使いを創り、その魔法使いが人間の中に魔術師を作って、人間たちに争いが生まれた。
人間たちが魔術を使えなくなれば、また人間同士で協力するのではと考えたけれど、魔術は七体の魔法使いと人間が知恵を絞って考えた物。神様が手を出せないのです。
そこで二柱の神様はもう一度協力して、この星から魔法使いを消そうとします。
七体の動物を消すことは出来ませんでしたが、魔法を消すことは出来ました。
そして、これ以上人間達に魔術が継承されないように、人間の知恵を少し減らしました。
魔法使いが消えた後、人間たちは、魔物の脅威に対抗するために再び協力して戦い、追い払いました。
人間と魔物は、また離れ離れになり、人間たちも魔術を失っていき、この星に平和が戻ります。
この星に魔法使いはいなくなったけれど、七種類の動物はこの星に残り、種類も数も増えていき、この星は人間と動物と魔物が住む星になりました。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
公爵家の半端者~悪役令嬢なんてやるよりも、隣国で冒険する方がいい~
石動なつめ
ファンタジー
半端者の公爵令嬢ベリル・ミスリルハンドは、王立学院の休日を利用して隣国のダンジョンに潜ったりと冒険者生活を満喫していた。
しかしある日、王様から『悪役令嬢役』を押し付けられる。何でも王妃様が最近悪役令嬢を主人公とした小説にはまっているのだとか。
冗談ではないと断りたいが権力には逆らえず、残念な演技力と棒読みで悪役令嬢役をこなしていく。
自分からは率先して何もする気はないベリルだったが、その『役』のせいでだんだんとおかしな状況になっていき……。
※小説家になろうにも掲載しています。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。
光子
ファンタジー
前世、神様の手違いにより、事故で間違って死んでしまった私は、転生した次の世界で、イージーモードで過ごせるように、特別な力を神様に授けられ、生まれ変わった。
ーーー筈が、この世界で、呪われていると差別されている紅い瞳を宿して産まれてきてしまい、まさかの、呪われた子と、家族に虐められるまさかのハードモード人生に…!
8歳で遂に森に捨てられた私ーーキリアは、そこで、同じく、呪われた紅い瞳の魔法使いと出会う。
同じ境遇の紅い瞳の魔法使い達に出会い、優しく暖かな生活を送れるようになったキリアは、紅い瞳の偏見を少しでも良くしたいと思うようになる。
実は神様の祝福である紅の瞳を持って産まれ、更には、神様から特別な力をさずけられたキリアの物語。
恋愛カテゴリーからファンタジーに変更しました。混乱させてしまい、すみません。
自由にゆるーく書いていますので、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
どうやら私(オタク)は乙女ゲームの主人公の親友令嬢に転生したらしい
海亜
恋愛
大交通事故が起きその犠牲者の1人となった私(オタク)。
その後、私は赤ちゃんー璃杏ーに転生する。
赤ちゃんライフを満喫する私だが生まれた場所は公爵家。
だから、礼儀作法・音楽レッスン・ダンスレッスン・勉強・魔法講座!?と様々な習い事がもっさりある。
私のHPは限界です!!
なのになのに!!5歳の誕生日パーティの日あることがきっかけで、大人気乙女ゲーム『恋は泡のように』通称『恋泡』の主人公の親友令嬢に転生したことが判明する。
しかも、親友令嬢には小さい頃からいろんな悲劇にあっているなんとも言えないキャラなのだ!
でも、そんな未来私(オタクでかなりの人見知りと口下手)が変えてみせる!!
そして、あわよくば最後までできなかった乙女ゲームを鑑賞したい!!・・・・うへへ
だけど・・・・・・主人公・悪役令嬢・攻略対象の性格が少し違うような?
♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟
皆さんに楽しんでいただけるように頑張りたいと思います!
この作品をよろしくお願いします!m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる