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第5章 おっさん、優勝を目指す
第111話 マスタースピアー
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先鋒戦は1年A組が勝利を収め、試合は次なる次鋒戦へと移ろうとしていた。
次鋒は空術競技でもアンカーを務めたセリナが出ることとなった。
対する相手の出場者はメサイアという女戦士。試合は既に折り返し地点を迎えていた。
「つ、強い……」
「あなた、中々いい動きをするわね。ほんの一瞬だけど本気になってしまったわ」
「うぅ……」
メサイアという女戦士の本職は槍術士、それもその技の数々は達人級とも呼ばれており別名秘槍術士という異名も持っている。そして彼女が片手に持って駆るあの聖剣はトライデントと呼ばれる聖槍だ。
一応聖剣の一種ではあるが、他の物とは違い形状は槍に近い。戦争と死を司ると呼ばれている神、オーディンが持つ聖装グングニールの親戚にあたるものだ。
そして、このトライデントという聖槍の最も大きな特徴は使い手によって大きく左右されるというもの。つまりは契約主の技量によって力の差が顕著に表れるという聖剣の中でも珍しい特色を備えている。
分かりやすく言えば何の技量も能力も持たない者が扱っても意味がないということだ。あの聖剣はあの聖剣が認めた者しか力を解放することはない。まるで生きているかのようにだ。
俺がまだ神魔団でバリバリと働いていた頃はまだ契約主がいない状態でどこかの地下奥深くに眠っていたそうだが、ここ十数年であのメサイアという女が新たな契約主になったようだ。
「情報通り、確かに納得のいく実力だな。巧妙かつ丁寧な槍捌き、武術も一流だ。まるで隙が無い、さすがだな」
「はい。それと私たちが掴んだ情報によるとあの人はかの有名な剣術の流派、エンゲージ流の使い手だとか」
「エンゲージ流?」
「もしかしてレイナード、エンゲージ流派を知らないの?」
「あ、ああ……初めて聞いた」
「エンゲージ流はこの大陸でも三本の指に入るの大流派の一角よ。伝承者はマスターテッドことテッドマン=ヴォルフ・エンゲージ。かつて行われた大陸8大戦争の英雄とも呼ばれた剣聖よ」
「ほう、そんな奴が……」
「まぁ、数年前ほどにお亡くなりになってからはその孫にあたる人物が流派を受け継いでいるそうですけど」
なるほど、剣術の大名家より授かりし秘術を持っているということか。そりゃあ同じく槍術を得意とするセリナには分が悪い敵だ。
強化魔術もバリエーション多く備えているみたいだし、近接戦闘では恐らく十人の中では最強レベルだろう。
「セリナは……勝てるのでしょうか?」
「さぁ、そればっかりはオレにも分からないが彼女は全然諦めていないようだぞ」
何度倒されたとしても立ち上がる。俺の目にはそんなセリナの姿があった。
「負けない……私は絶対に負けない!」
身体はもうボロボロだった。それ故にメサイアも追い討ちを仕掛けない。相手完全に諦めるまでは武人の性として勝負を終わらせたくはないのだろう。
だがそれでも尚、彼女は二つの足で立ち上がるのだ。
「先生、もうやめておいた方が」
「そうですよレイナード、これ以上はセリナの身が危険です!」
二人はやめるように言うが俺は無言を貫く。
今の彼女はもうだれも止めることはできない。もしそんなことをしたらセリナのプライドはズタズタに引き裂かれることになる。
俺は試合前にメサイアの簡単な情報とあることを彼女に言った。
「もしかしたらお前には歯が立たない相手になるかもしれない」と。
それを知った上でセリナは試合に臨んだ。そして試合開始直後すぐに振るってきた相手の一撃を受け止めた時に全てを悟ったはずだ。
自分の実力では勝てない……次元が違うと。
でも彼女は決して下を向かなかった。常に前を……先を見据えて今まで戦ってきたのだ。
なぜ力の差を認識しておいて立ち向かっていけるか?
簡単な話だ。なぜならこの心持ちは俺が皆に教えたことなのだから。
俺はことあるごとにこの言葉を常に言い聞かせていた。
『―――なにがあっても決して諦めるな、下を向くな。前だけを見ろ』
あまりにも幾度となく言ってきたのでクラス内では合言葉のような立ち位置にもあった。
この言葉を聞いた時、セリナは強く心をうたれたらしい。そして自分が強くなるための教訓として心中に留めていた。
彼女の原動力はそのためのものだったのだ。
「はぁ……はぁ……まだ、まだよ!」
息を切らしながらもセリナは槍を構える。
メサイアは未だ余裕そうで疲れすらも見せない。
「中々しぶといわね。いいわ、そろそろ終幕といきましょう」
メサイアの聖槍トライデントが黄金色に輝き始める。
一気に勝負を決めるつもりだ。
「セリナ! 先生、もうやめてください!」
ハルカは必死に訴えかけるが、俺は返答をしなかった。
ただ俺はハルカに「いいから見ていろ」と言わんばかりの目を向ける。
「行くわよ……覚悟はいい?」
「受けて……立ちます!」
獲物を狙うかのような鋭い目を向け、臨戦態勢をとる。
「その目……なるほどね。あなたのその凄まじい根性の源が分かった気がするわ」
「そ、そう……ですか」
「ええ。でもあなたの頑張りもここまで。可哀想だけれどあなたには敗北を味わってもらうわ」
黄金色に煌めく槍を振り回し、構えるメサイア。
そしてそのため込んだ底知れぬ力を一気に解放する。
「呼応せよ我が聖装トライデント。我の力を糧にし力を解放したまえ」
「秘技……《滅槍真撃》!」
次鋒は空術競技でもアンカーを務めたセリナが出ることとなった。
対する相手の出場者はメサイアという女戦士。試合は既に折り返し地点を迎えていた。
「つ、強い……」
「あなた、中々いい動きをするわね。ほんの一瞬だけど本気になってしまったわ」
「うぅ……」
メサイアという女戦士の本職は槍術士、それもその技の数々は達人級とも呼ばれており別名秘槍術士という異名も持っている。そして彼女が片手に持って駆るあの聖剣はトライデントと呼ばれる聖槍だ。
一応聖剣の一種ではあるが、他の物とは違い形状は槍に近い。戦争と死を司ると呼ばれている神、オーディンが持つ聖装グングニールの親戚にあたるものだ。
そして、このトライデントという聖槍の最も大きな特徴は使い手によって大きく左右されるというもの。つまりは契約主の技量によって力の差が顕著に表れるという聖剣の中でも珍しい特色を備えている。
分かりやすく言えば何の技量も能力も持たない者が扱っても意味がないということだ。あの聖剣はあの聖剣が認めた者しか力を解放することはない。まるで生きているかのようにだ。
俺がまだ神魔団でバリバリと働いていた頃はまだ契約主がいない状態でどこかの地下奥深くに眠っていたそうだが、ここ十数年であのメサイアという女が新たな契約主になったようだ。
「情報通り、確かに納得のいく実力だな。巧妙かつ丁寧な槍捌き、武術も一流だ。まるで隙が無い、さすがだな」
「はい。それと私たちが掴んだ情報によるとあの人はかの有名な剣術の流派、エンゲージ流の使い手だとか」
「エンゲージ流?」
「もしかしてレイナード、エンゲージ流派を知らないの?」
「あ、ああ……初めて聞いた」
「エンゲージ流はこの大陸でも三本の指に入るの大流派の一角よ。伝承者はマスターテッドことテッドマン=ヴォルフ・エンゲージ。かつて行われた大陸8大戦争の英雄とも呼ばれた剣聖よ」
「ほう、そんな奴が……」
「まぁ、数年前ほどにお亡くなりになってからはその孫にあたる人物が流派を受け継いでいるそうですけど」
なるほど、剣術の大名家より授かりし秘術を持っているということか。そりゃあ同じく槍術を得意とするセリナには分が悪い敵だ。
強化魔術もバリエーション多く備えているみたいだし、近接戦闘では恐らく十人の中では最強レベルだろう。
「セリナは……勝てるのでしょうか?」
「さぁ、そればっかりはオレにも分からないが彼女は全然諦めていないようだぞ」
何度倒されたとしても立ち上がる。俺の目にはそんなセリナの姿があった。
「負けない……私は絶対に負けない!」
身体はもうボロボロだった。それ故にメサイアも追い討ちを仕掛けない。相手完全に諦めるまでは武人の性として勝負を終わらせたくはないのだろう。
だがそれでも尚、彼女は二つの足で立ち上がるのだ。
「先生、もうやめておいた方が」
「そうですよレイナード、これ以上はセリナの身が危険です!」
二人はやめるように言うが俺は無言を貫く。
今の彼女はもうだれも止めることはできない。もしそんなことをしたらセリナのプライドはズタズタに引き裂かれることになる。
俺は試合前にメサイアの簡単な情報とあることを彼女に言った。
「もしかしたらお前には歯が立たない相手になるかもしれない」と。
それを知った上でセリナは試合に臨んだ。そして試合開始直後すぐに振るってきた相手の一撃を受け止めた時に全てを悟ったはずだ。
自分の実力では勝てない……次元が違うと。
でも彼女は決して下を向かなかった。常に前を……先を見据えて今まで戦ってきたのだ。
なぜ力の差を認識しておいて立ち向かっていけるか?
簡単な話だ。なぜならこの心持ちは俺が皆に教えたことなのだから。
俺はことあるごとにこの言葉を常に言い聞かせていた。
『―――なにがあっても決して諦めるな、下を向くな。前だけを見ろ』
あまりにも幾度となく言ってきたのでクラス内では合言葉のような立ち位置にもあった。
この言葉を聞いた時、セリナは強く心をうたれたらしい。そして自分が強くなるための教訓として心中に留めていた。
彼女の原動力はそのためのものだったのだ。
「はぁ……はぁ……まだ、まだよ!」
息を切らしながらもセリナは槍を構える。
メサイアは未だ余裕そうで疲れすらも見せない。
「中々しぶといわね。いいわ、そろそろ終幕といきましょう」
メサイアの聖槍トライデントが黄金色に輝き始める。
一気に勝負を決めるつもりだ。
「セリナ! 先生、もうやめてください!」
ハルカは必死に訴えかけるが、俺は返答をしなかった。
ただ俺はハルカに「いいから見ていろ」と言わんばかりの目を向ける。
「行くわよ……覚悟はいい?」
「受けて……立ちます!」
獲物を狙うかのような鋭い目を向け、臨戦態勢をとる。
「その目……なるほどね。あなたのその凄まじい根性の源が分かった気がするわ」
「そ、そう……ですか」
「ええ。でもあなたの頑張りもここまで。可哀想だけれどあなたには敗北を味わってもらうわ」
黄金色に煌めく槍を振り回し、構えるメサイア。
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「秘技……《滅槍真撃》!」
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