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結婚を申し込みなさい、断ってあげるから。

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 彼ったら、ドキッとした表情になったわ。おろおろするように、そんなところは、可愛いじゃない。
「おいおい、そんなことを言われると、本気にしてしまうぞ。」
 そしてすぐに、疑わしいという顔になった、でも鼻の下は伸ばしているけど。
「ここにいるピール公爵令嬢は、かなり魅力的な女性だからね。」
と付け加えて、フェイントをかけてきたわ。
「いいじゃない。あなたが、私と結婚したいのだったら、結婚を申し込みなさいよ。怒らないから・・・即座に断ってあげるから。」
「なんだい、それは?遊びか、なんかのゲームかい?」
 あら、揶揄っているのかとは言わなかったわね、なら・・・あら、私は何を考えているわけ?・・・なんか変な気持ちに・・・とんでもないことを・・・もういいわ、どうでも。さあ、結婚を申し込みなさいよ。しっかり断ってあげるから。
「そういう君は・・・まあ、告白とかは男からするのが礼儀だしな・・・。」
 何自分一人で、自問自答して一人で納得しているのよ。さあさあ、早くなさいよ、そんなうじうじしているから、彼女に捨てられるのよ。さあさあ、申し込みなさいよ、私に断られる結婚の申し込みを。

 彼は、小さく深呼吸して、考えを落ち着かせた、というように見えたわ。そして、暫く黙って、ほんの数秒、いや一秒だったかもしれないけれど、ひどく長く感じたわ、早くなさい、男ならと怒鳴りたくなっちゃった。そして、彼は、よし、という表情になった。
 彼はゆっくり立ち上がって、私の前に直立不動で立った。そして、礼儀正しく頭を下げて言ったの。
「ピール公爵家ご令嬢デュナ様。私、コリアンダー公爵、サムロと結婚していただけませんか。そして、これから二人で愛し合い、幸せになって、自分を捨てた婚約者達と寝取った者達を見返しませんか?」
 なによそれ?馬~鹿みたいじゃない?たしかに、愛してるとかいえる間柄じゃないけど、なによ、そのセリフ。互いのことも、表面上と噂でしかしらないけど。まあ、いいわ。言ってあげる、私の答えを。泣いて、残念がれ!

「コリアンダー公爵閣下。ありがたいお言葉、身に余るも光栄ですわ。謹んで、結婚のお申しでお受けいたしますわ。これから、愛し合い、ともに幸せになって、見返してやりましょう。」
と彼の手をとって・・・言っちゃった・・・。
「へ?」
と彼、目が点になった。言った私も目が点になっちゃった、多分だけど。どうして、こんなことに・・・断ろう、やっぱり撤回しますとか、冗談ですからと・・・でも、考えてみると、彼の言ったように悪くはないわよね、私達の結婚は?で、でも・・・。
 私は、彼の手を取って立ち上がった。
「もう、女の私が受けたのですから、撤回はできませんよ。」
「撤回などはしません。それは、デュナ嬢も同様ですよ。」
 あら、即座に応じたわね。ちょっと拍子抜け。でも、彼、よく見ると顔の造りは整っているし、優しそうだし悪くはないわね。それに、スマートだし、背の高さは淑女の靴を履いて、ふわっとした髪にしてもちょうどいいわ。それに、何か企み、悪だくみを共有している、共犯者のようで、なんか楽しくなってきたわ。共犯者なら、結構こいつ悪党でもあるから、かえって頼もしいくらいだわ。
「では、ここで結婚の誓をするかい?」
「ええ、結婚の誓のキスを。」
 もちろんそこまでよ、わかっているわね。私達、身分も、由緒も正しい国で第二位と第三位の貴族なんですから、庶民とは違うんですから。
 二人の唇が重なって、そのまま互いに舌を差し入れて、絡ませあった。争うように絡ませあった、互いの唾液を喉に流し、注ぎ込んで、一層強く唇を重ね合わせるために、強く抱きしめあう。キスは、舌を絡ませる濃厚なキスは、一応私だって体験済、大したことはないわ、ないはずだった・・・。いったんは、涎を流しあいながら、唇を離すけど、それが単なる息継ぎであるかのように、また、強く唇を重ねあった、舌を絡ませあった。それを繰り返すうちに、体を互いにくねらせて抱き合うようになり、着衣が乱れて、息がどんどん荒くなっていった。もう、止まらなくなっちゃった。彼がだけど、私も止めることができなかった、彼も自分も。

 彼は、結婚後のためという名目で、実際そのために経験をしているし、教わっている。私も、経験はないけど、乳母や侍女達から殿方を喜ばせる方法や身のまかせ方等は教わっている。それを、お互いの体でしっかり実践することになってしまったわけだ。
 私は彼によって全裸に近い姿にさせられ、彼を私は全裸に近い姿にしてしまった。そして、気が付くと、とはいうものの、それまでの経緯、何をして何をやったかはしっかり覚えてはいるのだけれど、私は彼に後ろから、わりと大きい形のいい自慢の乳房を揉まれながら、彼に跨って互いに体を打ち付けあっていた。哀れもない喘ぎ声をだす私に、彼は、
「感じてくれてうれしいよ。」
とか、
「とてもいいよ。」
とか言ってくれたし、うなじを舌で嘗めたりもした。何度も、何度も、私は、
「もう駄目!」
と言ってぐったりとなったけど、すぐにまた体が勝手に動き出して、快感が沸き上がり、喘ぎ声をだすことを繰り返した。それは彼も同じで、私達は延々と愛し合う?ことになってしまった。東屋が、そうした男女の営みを、姿も声も隠すことはできないということも忘れて。

 そして、夜明け近くになって、私達は向かい合って、彼の上に跨って私の乳房が彼の胸に強く押し付けられて抱き合いながら、唇を貪るように嘗めあっていたわ。その体位でさっきまで擦り付けあうように激しく動いていたけど、さすがに二人とも、これ以上は・・・だった。
「今日、結婚式をあげよう。」
「それがいいわね。」
 なんて、言いあっているうちに、また、体が熱くなりかけてきた。私も、彼も。その時だった。パンパンと手を打つ音が耳に入った。

「はいはい。それでは、結婚式の準備をしましょう。」
「お二人とも、やることがいっぱいありますよ。」
 私と彼の侍女達や護衛達が東屋の戸のところに並んでいた。
「え?何時から?」
 二人して、間の抜けたことを言っちゃった。
「艶めかしい声が聞こえる方向を辿ってきたら、裸のお付き合いをされているお二人がおられました。」
 さすがに、カーと恥ずかしくなっちゃった。あれ、皆、着衣が乱れて・・・まさか・・・なおさら、恥ずかしくなっちゃった。サムロ、あなたが悪いのよ。
 とにかく、私の、私達の新しい日々が始まった、ということだけは確かだった。


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