それは、人に憑く。

蘇 陶華

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闇を歩く除霊師 真冷

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青白い炎は、上下左右にあり、高さを変えずに進んでくる。音羽は、颯太を逃がそうとするが、青白い炎が、移動する方が早かった。音羽は、颯太を庇い、宙から、全身を現した。長い髪を地につけ、片手には、同じような青い光を放つ、ランタンを持っている。
「まかせろ。いいか、絶対、振り返るな」
「って、音羽。怖い」
音羽の声は、緊迫を含んでいた。こんな、音羽の声は初めてだ。青白い光が、自分の背にも感じ、いつも、音羽は、半身しか、現れないのに、全身で、立ち塞がっているようだ。影が細く伸び、いつもとは、違う姿になっている。
「この借りは、後から返せよ」
音羽は、身構えた。蒼白い3つの炎は、近づくと、スッと、止まった。同じ目の高さで、こちらの様子を伺っている。
「お前が、音羽かい」
「姿を表せよ。見せられないくらい、醜いのかい」
一番高い場所にある、青白い炎の間に、三つの目が、開いていた。
「これ以上、進ませる事はできない」
音羽は、その三つの目の主が、誰か、わかっていた。
「人間の味方をするのか?裏切られたくせに」
「あいつに、それは、関係ない」
青白い炎が揺れると、光の中から、両手に、蝋燭を灯す、髪の長い男性が現れた。姿は、恐ろしい訳でもなく、どちらかと言うと、幽霊らしい姿でもあった。
「颯太は、殺人を見た幽霊を探している。お前は、違うな」
「幽霊ではないのは、お前がよく知っているだろう」
そう言うと、両手に置いていた蝋燭の炎が消えた。
「真冷・・・ここにまで、来たのか?」
音羽は、そう名を呼ぶ。
「まだ、続けていたよ。高校生の除霊師がいると聞いたが、音羽。お前と組んでいたんだな」
音羽の姿は、少女の霊ではなく、高く髪を結った遊女の姿になっていた。
「ずいぶん、別れてから、時間が経ったようだ」
真冷は、笑う。両目は、笑っているが、額にある、もう一つの目は、冷たい光を帯びている。
「殺人を目撃した霊を探していたのかい?」
真冷は、聞く。両手に乗せた蝋燭の下には、銀色の皿があり、炎で溶けた蝋で、霊を感知するようだ。
「ここには、もういないよ」
音羽が答えないで、いるので、真冷が、独り言のように呟く。
「同じ者を探していたんだね」
「まさか、ここで会うとは」
音羽は、颯太が、遠くに行ったのを確認する。
「彼には、知られたくないのだな。私の存在を」
「できれば、会いたくなかった」
「同じ世界にいれば、出会う事になっている。音羽。私の所に戻って来る気はないか?」
「お前とは、もう、終わった。用はない」
「終わったか・・・。少年も、同じ目に遭わないといいな」
そう言うと、真冷と言われた男は、音羽に背中を向けた。
「また、会う事になるだろう」
そう呟くと、闇の中に青白い三つの光となって、消えていった。
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