貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン

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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【1】

O・SHI・E・TE☆お爺さん。

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 「まあ、リシィ様! 来てくださって嬉しいわ!」

 安心させるように笑顔で言うと、どことなく張り詰めた表情は泣き笑いのように緩められる。

 「あの……聖女様。お誕生日、おめでとうございます。それと、私の兄が仕出かしたこと、大変申し訳ありませんでした。
 本来ならば、私にここにいる資格はないのですが……聖女様に謝罪しなければ、と図々しくもやってきてしまいました」

 申し訳ありません、と頭を垂れる皇女エリーザベト。
 私は首を横に振り、彼女に近付く。

 「顔をお上げ下さい、リシィ様。悪いのは兄君とその部下であり、貴女が謝る筋のことではありませんわ。
 どうかお気に病まないで下さいまし。私はリシィ様のことを大切なお友達だと思っております。ですから、聖女様ではなくマリーと呼んで下さいませんか?」

 そう言うも、悲し気に首を振る皇女。

 「いいえ……実は私は父たる皇帝より、兄達の解放を……友情を盾に働きかけろと命じられております。私に聖女様の友でいる資格等ないのです」

 「大丈夫ですわ、リシィ様。兄君達は既に解放するように手筈を整えましたから」

 「えっ……」

 「そもそも、賠償がきちんと成されれば解放するお約束でしたもの。これで私達の友情に支障はありませんわ」

 「マリー様……!」

 そうなのだ。

 神聖アレマニア帝国皇帝は人質解放の確固たる保証を求めて皇女エリーザベトに命じたのだろうが、こちらとしては賠償さえちゃんと払って貰えれば問題ない。
 ありがとうございます、と感極まるエリーザベトの手を握る私。その傍ではエリーザベト付きの侍女が「リシィ様、本当にようございました」と貰い泣きをしていた。


***


 「今代の聖女様の生誕の日、心よりお慶び申し上げます。ガリア国王陛下より、お祝いの品をお持ち致しました。お納めを」

 「山岳国家ヘルヴェティアを代表し、アルトガルが聖女様の誕生日を寿ぎ奉ります。雪山で作られた品々をお納めください」

 「私共もお招き頂き感謝致します。アヤスラニ帝国皇帝陛下より、聖女様の誕生日を祝してこれらの品々を献上致します」

 ガリア王国は国王からの使者が、山岳国家ヘルヴェティアは何時の間にか王都に戻って来ていたアルトガルが、アヤスラニ帝国はイドゥリース達が連れて来た特使達が口上を述べている。
 ガリア王国はメティとシルからの分もあるので、三重に贈り物を貰っていることになる。何だか悪いなぁ。
 アルトガルの後ろに女性が二人控えていた。誰だろうと思っていると、サリーナに似た感じの癖のある黒髪の女性にグレイが近付いた。

 「お久しぶりですね、アーデルハイド」

 「えっ!?」

 「どうかした、マリー?」

 では、まさか――もう一人はクララ!?
 それは思わず声に出ていたのだろう。金髪の女性が「何故私の名がお分かりに……?」と口元に手をやり驚いている。ハイジアーデルハイドも同様に瞠目していた。

 そう言えば以前、アルトガルに出会って間もない頃。
 『アルム』と呼ばれているお爺さんがいるのかと訊いた事があるので、おんじが居ることは分かっていた。そう言えば、ペーターも居たな。つまり、これで人物が揃ったわけだ。

 となると。

 どうしても確かめるべきことを思い出し、私はアーデルハイドを見た。

 「もしかして、アーデルハイドは『アルムのおんじ』のお孫さんなのかしら?」

 「何故それを!?」

 正解だったらしい。マジか。

 「聖女様には全てお見通し、ということですなぁ」

 アルトガルは苦笑いをしながら驚く面々を眺めている。グレイは呆気に取られてポカンとしていた。
 ちなみにアーデルハイドの祖父アルムのおんじ。盗んだ馬で走り出すような若い時期、ろくでもない連中とつるんでやんちゃして博打と酒で全財産失ったことがあるらしい。この分だと高確率で犬のヨーゼフとかデルフリ村とかも実在してそうだな(確信)。

 「これも聖女様の言った通りでしてな。確認でそのことを訊いた時のおんじ様の顔は見物でしたぞ」

 かっかっか、と笑うアルトガル。どうやら黒歴史だったらしく、暫く追い回されたとか。
 おお、偉大なるヨハンナ(『アルプスの少女ハイジ』の作者)よ!
 かの児童文学作家を内心リスペクトしていると、視界の隅でアヤスラニ帝国の特使達がひそひそと耳打ちしている。

 あ、目が合った。

 「『聖女様は千里眼とも呼ぶべき力をお持ちであることは聞き及んでおりましたが、どこまで見通すことがお出来になるのか興味がございます』」

 特使達の間で一際立派な風采の人物が進み出て来て会話に加わった。

 あれ?
 どこかで会ったことがあるような……って!

 不思議な既視感。精神感応を使ってみた私は仰天した。
 変装しているけれど、目の前の人物は!
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