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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【1】
和菓子と緑茶で一服。
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「本日のお茶会は趣向を凝らしておりまして、東方の異国風なんですの。お菓子もそれに合わせて拵えさせたのですわ」
目の前には和菓子が並べられている。米粉とジャガイモ由来の片栗粉から求肥もどきが作れたので、大福やカボチャを使った菊を象った練り切り等を作らせたのだ。
砂糖は控えめ。試食した時は上品な甘さに仕上がっており、完成度に感動したものだ。全て野菜から作ったお菓子だというと、斬新だと驚かれた。
見た目の美しい異国の菓子、そして珍しい緑茶――王族も居るこの場は最高の促進販売会場なのである。
「本日ご用意した緑のお茶は淹れ方が難しいんですの。適切な温度管理が必要なのですわ――」
緑茶は高温である程苦みが増し、低温であれば程良い調和を生み出す。
サリーナ達が実演して、高温と低温で淹れたお茶をそれぞれ給仕した。
飲み比べさせて違いを体験してもらう。
「苦みがこれほどに違うのですね」
女王リュサイが驚いたように声を上げた。私はええ、と頷く。
「ただ、高温でわざと苦くする場合もあるんですのよ。この苦みには疲労と眠気を吹き飛ばす薬効がありますわ。朝飲む場合は苦い方が目覚ましの効果が得られるのです」
逆に低温で淹れると心を落ち着かせる薬効が強くなるんですの。仕事や勉強の合間に召しあがるのならばこちらですわね。
時と場合に応じた淹れ方・飲み方が出来るのだと言うと、皆緑茶に興味深々になっていた。
温度管理という一手間が特別感を出し、緑茶の健康効果についても触れる――難易度が高い作法や高度な知識というものは人に一目置かれる要素になるものである。
太りにくくなる作用や、抗酸化作用、美肌効果もあると言うと、三夫人が目を輝かせた。他の女性陣も遠慮がちに欲しそうにしている。グレイがお試しとして幾らかお分け致しましょう、と微笑むと、色めき立った。
この分であれば、緑茶が社交界に広まるのはあっという間だろう。
***
和やかに、そして平和にお茶会が進んで行く。
レアンドロ王子はめげずに私を口説く方向へ持って行こうとしていたが、悉く三夫人によって妨害されて借りて来た猫のように大人しいものだった。
しかしカレル兄に謝罪する筈が、その素振りすら見せない。
――あの男、俺に謝りたいんだろう? 一体何しに来たんだろうな。
カレル兄の小さな呟き。うん、本当にな。
外交官の男は、ホセ・デ・ラソン子爵と名乗った。皆様に比べれば取るに足りない者ですので略式にて失礼致します、と恐縮したのか気を利かせてくれたのか。
「マリー様、そろそろ」
サリーナが耳元で囁く。
振り返ると、サリューン枢機卿がメンデル修道院長やエヴァン、イエイツ、メイソン三名の修道士達、べリーチェ達数名の修道女、そして刻印の運び手の子らを従え準備を整えスタンバイしており。オディロン王がいよいよ種痘を受けるべく立ち上がったところだった。
「これより種痘が始まります。王族に刻印を施す間、私が立ち会うことになっておりますので少し失礼致しますわね」
断って私は立ち上がる。
接種時、聖女である私に傍で立ち会って欲しいという要望があったからである。女王リュサイ、皇女エリーザベトも受けるので名を読んで促すと、「私達も受けるわぁ」と三夫人も立ち上がってくれた。
「では、私も見学をさせて頂くこととしよう」
レアンドロ王子が宣言する。グレイは既に受けているのでテーブルに待機である。カレル兄は皇女に何事かを言われ――乞われたのだろう、共に付きそうことに。何故か外交官の子爵ホセは残っていた。
二人だけで大丈夫だろうか。
じっと見ていると、グレイがこちらを見た。
「大丈夫だよ。行ってらっしゃい」
ここは我が家だし、侍女ナーテと中脚もいるから大丈夫か。
微笑み返して手を振り、私はオディロン王の元へ急いだのだった。
「聖女様、こんなものでしょうか?」
「チクリとしただけで、思ったより簡単でしたね」
オディロン王とアルバート王子はあっさりと終わった種痘にそんな感想を述べる。私はええと頷いた。
「これより四半時程体調に変化がないか様子を見ますわ。それからは七日の間で刻印が完成したかどうかを確認して終わりですわ」
王と王子が接種をしたということで安心したのか、他の貴族達がそれに続く。接種を迷っていた者も、希望するようになった。
目の前には和菓子が並べられている。米粉とジャガイモ由来の片栗粉から求肥もどきが作れたので、大福やカボチャを使った菊を象った練り切り等を作らせたのだ。
砂糖は控えめ。試食した時は上品な甘さに仕上がっており、完成度に感動したものだ。全て野菜から作ったお菓子だというと、斬新だと驚かれた。
見た目の美しい異国の菓子、そして珍しい緑茶――王族も居るこの場は最高の促進販売会場なのである。
「本日ご用意した緑のお茶は淹れ方が難しいんですの。適切な温度管理が必要なのですわ――」
緑茶は高温である程苦みが増し、低温であれば程良い調和を生み出す。
サリーナ達が実演して、高温と低温で淹れたお茶をそれぞれ給仕した。
飲み比べさせて違いを体験してもらう。
「苦みがこれほどに違うのですね」
女王リュサイが驚いたように声を上げた。私はええ、と頷く。
「ただ、高温でわざと苦くする場合もあるんですのよ。この苦みには疲労と眠気を吹き飛ばす薬効がありますわ。朝飲む場合は苦い方が目覚ましの効果が得られるのです」
逆に低温で淹れると心を落ち着かせる薬効が強くなるんですの。仕事や勉強の合間に召しあがるのならばこちらですわね。
時と場合に応じた淹れ方・飲み方が出来るのだと言うと、皆緑茶に興味深々になっていた。
温度管理という一手間が特別感を出し、緑茶の健康効果についても触れる――難易度が高い作法や高度な知識というものは人に一目置かれる要素になるものである。
太りにくくなる作用や、抗酸化作用、美肌効果もあると言うと、三夫人が目を輝かせた。他の女性陣も遠慮がちに欲しそうにしている。グレイがお試しとして幾らかお分け致しましょう、と微笑むと、色めき立った。
この分であれば、緑茶が社交界に広まるのはあっという間だろう。
***
和やかに、そして平和にお茶会が進んで行く。
レアンドロ王子はめげずに私を口説く方向へ持って行こうとしていたが、悉く三夫人によって妨害されて借りて来た猫のように大人しいものだった。
しかしカレル兄に謝罪する筈が、その素振りすら見せない。
――あの男、俺に謝りたいんだろう? 一体何しに来たんだろうな。
カレル兄の小さな呟き。うん、本当にな。
外交官の男は、ホセ・デ・ラソン子爵と名乗った。皆様に比べれば取るに足りない者ですので略式にて失礼致します、と恐縮したのか気を利かせてくれたのか。
「マリー様、そろそろ」
サリーナが耳元で囁く。
振り返ると、サリューン枢機卿がメンデル修道院長やエヴァン、イエイツ、メイソン三名の修道士達、べリーチェ達数名の修道女、そして刻印の運び手の子らを従え準備を整えスタンバイしており。オディロン王がいよいよ種痘を受けるべく立ち上がったところだった。
「これより種痘が始まります。王族に刻印を施す間、私が立ち会うことになっておりますので少し失礼致しますわね」
断って私は立ち上がる。
接種時、聖女である私に傍で立ち会って欲しいという要望があったからである。女王リュサイ、皇女エリーザベトも受けるので名を読んで促すと、「私達も受けるわぁ」と三夫人も立ち上がってくれた。
「では、私も見学をさせて頂くこととしよう」
レアンドロ王子が宣言する。グレイは既に受けているのでテーブルに待機である。カレル兄は皇女に何事かを言われ――乞われたのだろう、共に付きそうことに。何故か外交官の子爵ホセは残っていた。
二人だけで大丈夫だろうか。
じっと見ていると、グレイがこちらを見た。
「大丈夫だよ。行ってらっしゃい」
ここは我が家だし、侍女ナーテと中脚もいるから大丈夫か。
微笑み返して手を振り、私はオディロン王の元へ急いだのだった。
「聖女様、こんなものでしょうか?」
「チクリとしただけで、思ったより簡単でしたね」
オディロン王とアルバート王子はあっさりと終わった種痘にそんな感想を述べる。私はええと頷いた。
「これより四半時程体調に変化がないか様子を見ますわ。それからは七日の間で刻印が完成したかどうかを確認して終わりですわ」
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