PictureScroll 昼下がりのガンマン

薔薇美

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第9弾 お熱いのがお好き?

Surprise(サプライズ)

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 2人が停留所に着くと15分置きの時間どおりに送迎バスがやってきた。

 まだ夕方の5時半でこんなに早く帰ってしまうゲストなど滅多にいないのでバスに乗るのは仕事帰りのキャストだけだ。

 すると、

「ちょっと待って~ぇ」

 ゴードンが内股走りで追い掛けてきた。

「わたし、昼前にお医者さんの説明を訊いただけで手術中の付き添いはアマンダさんに任せてタウンへ戻ってしまったからマーサさんに逢ってないのよ」

 アマンダ(天野あまの多江たえ)はいなご新聞の争奪戦に参戦したマーサと仲良しのキャスト食堂の調理係だ。

「やっぱり、アランちゃんがきっちりとお詫びを言えるか心配だから、わたしも一緒にお見舞いに行くことにしたわ」

 ゴードンはアランのせいでマーサが大怪我をしたと思っているのでショウの担当者としての責任を感じているのだ。

(俺のせいじゃないのに~)

 アランはゲンナリだった。


「お見舞いを買っていかなきゃね。左腕の骨折だけだから何を食べてもいいだろうし」

 送迎バスを降りるとゴードンは駅前の商店街をキョロキョロした。

「マーサさん、あのお店の和菓子が大好きなんですよ」

 クララが老舗の和菓子屋『うまや』を指し示す。

 温泉街なのでお土産の和菓子屋は数多くあるが、それだけに昔からの地元民は美味しい店を厳選している。

「ま、そうお?クララちゃんが一緒で助かっちゃったわ」

 ゴードンは和菓子屋で3万円もする詰め合わせをお見舞いに買った。

 20個入りの和菓子が何で3万円もするかというと和菓子を納めた箱が豪華な漆塗りなのだ。

 やはり、タウンの地主のマーサにはそれ相応の礼を尽くさなくてはならないらしい。

 アランは今まで配膳係のマーサのことはいつもメラリーにだけオカズをオマケして自分には一度もオマケしてくれない『気に食わないババア』と率直に思っていただけにバツが悪い。

(それにしても、俺はルックスではメラリーなんかに引けを取らないはずなのに、何だってマーサさんはメラリーにだけオカズをオマケするんだろう?)

 騎兵隊キャストはみな貧乏で腹ペコなイケメン揃いだというのにアランは納得いかない。

 そんなことをモヤモヤと考えているうちにすぐに病院へ着いた。


 病院の受付カウンターで用紙にいちいち患者名と続柄と面会時間などを記入して提出してからロビーを進んでいくと、

 やけに背の高いウェスタンファッションの男がエレベーターを待っていた。

「――お?ゴードンさんも来たんだ?」

 振り返った男はジョーだった。

(ジョ、ジョーさんっ)

 クララは嬉しいサプライズに心臓がドキドキと小躍りする。

「ジョーちゃん来てたの」

 ゴードンはジョーの荷物に目を向けた。

「メラリーがお見舞いに行くって言うからよ。俺はマーサさんに頼まれた買い物してきたところ」

 ジョーは大きな紙袋2つを高くかかげてみせる。

 ジョーとメラリーの2人はゴードンとアランがコスチュームルームでスーツなどを選んでいる時にとっくに病院へ来ていたのだ。


 マーサの病室は5階の特別室だった。

 寝室と応接室がくっ付いたような広い病室でコンパクトなキッチンにトイレまである。

(ふええ――)

 アランは水戸黄門の印籠を突き付けられたように「お見それしました」という気分になった。

 やはり、キャスト食堂の配膳係のオバサンのマーサは世を忍ぶ仮の姿で、その実体は大地主の奥様なのだという認識を強くする。

「ほほほっ」

 マーサはリクライニングベッドの背凭れを起こして座って上機嫌でメラリーと談笑していた。

 メラリーは『ガンマン・メラリーを援護射撃する会』の爺さん連中もまんまと手懐けたし、ジジババのご機嫌を取るのはお手のものなのだ。


「マーサさん、ホントにこの度はうちのアランちゃんのせいで大怪我をさせてしまってお詫びの言葉もございません」

 ゴードンはお見舞いの和菓子の包みを差し出し、「ほらっ」とアランを促して一緒に深々と頭を下げた。

(俺のせいじゃないのに~)

 アランは不承不承に頭を下げる。

「おやまあ?アランちゃんのせいじゃないのにぃ。わたしが強引にアランちゃんの背中によじ登って、頭を引っ掴んでアランちゃんをけさせちゃったんだからぁ」

 マーサは自分の怪我がアランのせいになっていることにビックリしたようだ。

 それどころか、

「わたしのせいで周りのみんなまで巻き添えにして、何人もバタバタ将棋倒ししちゃったでしょぉ?どうしようって責任を感じてたんだよぉ」

 マーサは眉を八の字にして視線を下に向けたままオロオロと言う。

 面目なく合わせる顔がないというようなしおらしい態度だ。

(な、なんだ。ヒトの背中によじ登って、頭を鷲掴みしてきた時にはとんでもないババアだと思ったけど、意外にマトモなオバサンだったんだ)

 アランは心の底からホッと安堵した。

「気にしなくて大丈夫だよ。怪我したのマーサさんだけだし」

 メラリーがケロッとマーサを励ました。
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