170 / 297
第8弾 降っても晴れても
I feel very feverish.(とても熱っぽい)
しおりを挟む「――メラリーちゃん、なんだか顔が赤いですけど?」
太田がメラリーの顔を覗き込んだ。
「――え?そう?」
メラリーは自分の両頬を押さえる。
そういえば、さっきから頬が火照っている感じがする。
トムとフレディとやり合ってカッカしたせいかと思ったが、まだ冷めないどころか火照りが増してきた。
「熱があるんじゃ?すぐに帰って休んだほうがいいですよ」
太田が心配そうな顔をする。
「――うん」
外を見るとちょうど巡回バスが着いたところだ。
「あ、俺、ちょっと買い物してから帰るわ。あとで部屋、行くからよ」
ジョーは急に思い付いたように送迎バスの停留所のほうを見やった。
バックステージの施設をグルグルと回るのがキャスト用の巡回バスで、タウンと駅前を往復するのがキャストもゲストも利用する送迎バスだ。
「あっ、俺、着替えてこなきゃ」
太田は自分のカウボーイファッションを見下ろした。
家族に退職したことがバレないように講師をしていた学習塾で仕事してきたという体で帰宅しなくてはならない。
「じゃ、お先に~」
メラリーは1人で巡回バスに乗ってキャスト宿舎へ帰っていった。
ほどなくして、
ジョーが駅前でタウンの送迎バスから降りてきた。
荒刃波温泉の駅前には温泉客が旅館の浴衣に丹前を着てブラブラと歩くにも調和する昔ながらの店構えのアラバハ商店街がある。
(――う~ん?――薬局は――と――)
めったに駅前で買い物などしないのでキョロキョロして薬局を見つけると、白衣姿の爺さんが棚の商品のラベルの向きをせっせと直していた。
「いらっしゃいませ~。――お?ジョーちゃんじゃないの~」
振り返った爺さんが満面の笑みを見せる。
「あ~、ガンマン会の――」
そういえば、『ガンマン・メラリーの援護射撃する会』の爺さん連中はみなアラバハ商店街の店主やご隠居さんなのだ。
「ジョーちゃんが買い物に来るなんて珍しいね~」
「体温計とオデコ冷やすヤツ買おうと思ってよ」
「体温計?いっぱいあるよ~。これなんか最新式のオデコに当ててピッと測れるヤツ。これは口に咥えて基礎体温を測る婦人用のヤツ――」
爺さんは店番で暇を持て余していたらしく体温計をカウンターに並べながら、いちいち商品説明を始めた。
(何故、婦人用の基礎体温計まで並べる?)と思いながらもジョーはふんふんと頷きながら説明を聞いていた。
一方、
「――う~ん――、――あ?まだ8時ちょっと過ぎじゃん~」
メラリーは枕元の目覚まし時計を見た。
ちょっと寝ただけで汗をいっぱい掻いてスッキリした気分だ。
布団からズルズルと這い出て、キッチンの冷蔵庫を開ける。
「――あ、なんにもない――っ」
空っぽの冷蔵庫に茫然とする。
4時頃にステーキ丼を食べただけなので、もう腹ペコだった。
普段なら今頃はバックステージで射撃練習を終えてキャスト食堂で夜食をモリモリと食べている時間なのだ。
ジョーは「あとで部屋、行く」と言っていたが、『あとで』とは何時頃のことだろう。
「なんか美味しい物、買ってきてくれるのかな~?」
しかし、もうお腹と背中がくっ付きそうに腹ペコで、ジョーの帰りなど待っていられそうもない。
「――む~ん、面倒臭いけど、買い物、行って来よっかな~」
メラリーは溜め息をついて、汗を流しにバスルームへ入った。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる