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第8弾 降っても晴れても
The man who revived immediately(すぐに復活した男)
しおりを挟むその4時近く。
「~~♪」
ジョーは鼻唄混じりにショウのキャストの先頭でキャスト食堂へ向かった。
足取り軽く、心も軽く、ルンルンとスキップ加減だ。
出入り口の掲示板を見ると本日のサービスメニューはビーフカレーだった。
「おっ、メラリー、ビーフカレーか?俺もビーフカレーにしよっと~♪」
ジョーはいそいそとメラリーの分までトレイを取って、冷水機からコップに水を汲んで、メラリーのカレーにセルフサービスの福神漬けを盛って、自分のカレーの牛肉をメラリーのカレーにポイポイと入れてやる。
「やたっ、肉だらけっ♪」
メラリーもコロッと機嫌を直した。
ジョーのこの下僕っぷりなら今夜はメラリーの肩揉みにも喜んで励むことだろう。
「――ま、姑息な秘策なんかに頼らず、地道にコツコツと腕を磨いていくしかねえよな」
ロバートがそうメラリーに言って牛乳をグビッと飲む。
「まあ、姑息とは何よ」
ゴードンはせっかくメラリーが成功したというのに秘策を封じるしかなかったので残念そうだ。
「地道にコツコツかぁ――」
凄腕ガンマンまでの道のりは遠そうだとメラリーは溜め息する。
「俺等はずうっと地道にコツコツやってるけどな」
「だな」
トムとフレディの地道なコツコツもいつかは報われる日が来るのだろうか。
「そうですよね。俺だって乗馬の特訓、地道にコツコツとやるしかないです」
太田はメラリーよりも自分を励ますように言った。
「ああ、今日もダンさんと特訓だろ?俺等も見に行こうぜ」
「そーいや、ダンさんともご無沙汰だし」
ジョーとメラリーは腹ごしらえを済ませたら太田の乗馬の特訓を見物しにモニュメント・バレーまで行くことにした。
(な、なによ。早々といつもどおりじゃないの)
クララはガンマンキャストの後ろ側のテーブルでブスッと膨れっ面していた。
結局、以前と変わらずジョー、メラリー、太田の3人でくっ付いて自分の入り込む余地など1㎜もなさそうだ。
メラリーの絶交宣言でチャンスとばかりにウキウキしてしまって損した。
(――ん――?)
ふと視線に気付いて騎兵隊キャストのテーブルを見るとアランと目が合った。
またアランはクララを見ていたのだ。
(まったく、油断も隙もないったら)
クララは(見ないでって言ったでしょっ?)という咎め顔でアランを一睨みすると、スケッチブックを開いてテーブルに立てた。
「……」
アランは(ああ、はいはい)という諦め顔をして、つまらなそうにビーフカレーを頬張る。
それにしてもクララにまだマシュマロ入りブラウニーを貰っていない。
実はクララはアランにあげるはずのブラウニーを昨日、ロバートにあげてしまったのだ。
そんなこととは知りもしないアランだった。
「ビーフカレーおかわりしよっと~」
「俺も~」
「なんだか今日のビーフカレーは一際、美味しいですね~」
メラリー、ジョー、太田が手に手にカレー皿を持ってクララの脇の通路をパタパタと通り過ぎていく。
(ふんだ――)
クララは配膳台に並んでいる3人の後ろ姿を見ながら膨れっ面のままタンブラーのコーヒーをズズッと啜った。
こうして、
ジョーはわずか5時間足らずでメラリーロス、略してメラロスから回復した。
わざわざ病名まで付けた甲斐もなく呆気ないメラロスだった。
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