PictureScroll 昼下がりのガンマン

薔薇美

文字の大きさ
155 / 297
第8弾 降っても晴れても

The man who revived immediately(すぐに復活した男)

しおりを挟む
 

 その4時近く。

「~~♪」

 ジョーは鼻唄混じりにショウのキャストの先頭でキャスト食堂へ向かった。

 足取り軽く、心も軽く、ルンルンとスキップ加減だ。

 
 出入り口の掲示板を見ると本日のサービスメニューはビーフカレーだった。

「おっ、メラリー、ビーフカレーか?俺もビーフカレーにしよっと~♪」

 ジョーはいそいそとメラリーの分までトレイを取って、冷水機からコップに水を汲んで、メラリーのカレーにセルフサービスの福神漬けを盛って、自分のカレーの牛肉をメラリーのカレーにポイポイと入れてやる。

「やたっ、肉だらけっ♪」

 メラリーもコロッと機嫌を直した。

 ジョーのこの下僕っぷりなら今夜はメラリーの肩揉みにも喜んで励むことだろう。


「――ま、姑息な秘策なんかに頼らず、地道にコツコツと腕を磨いていくしかねえよな」

 ロバートがそうメラリーに言って牛乳をグビッと飲む。

「まあ、姑息とは何よ」

 ゴードンはせっかくメラリーが成功したというのに秘策を封じるしかなかったので残念そうだ。

「地道にコツコツかぁ――」

 凄腕ガンマンまでの道のりは遠そうだとメラリーは溜め息する。

「俺等はずうっと地道にコツコツやってるけどな」

「だな」

 トムとフレディの地道なコツコツもいつかは報われる日が来るのだろうか。


「そうですよね。俺だって乗馬の特訓、地道にコツコツとやるしかないです」

 太田はメラリーよりも自分を励ますように言った。

「ああ、今日もダンさんと特訓だろ?俺等も見に行こうぜ」

「そーいや、ダンさんともご無沙汰だし」

 ジョーとメラリーは腹ごしらえを済ませたら太田の乗馬の特訓を見物しにモニュメント・バレーまで行くことにした。


(な、なによ。早々はやばやといつもどおりじゃないの)

 クララはガンマンキャストの後ろ側のテーブルでブスッと膨れっ面していた。

 結局、以前と変わらずジョー、メラリー、太田の3人でくっ付いて自分の入り込む余地など1㎜もなさそうだ。

 メラリーの絶交宣言でチャンスとばかりにウキウキしてしまって損した。

(――ん――?)

 ふと視線に気付いて騎兵隊キャストのテーブルを見るとアランと目が合った。

 またアランはクララを見ていたのだ。

(まったく、油断も隙もないったら)

 クララは(見ないでって言ったでしょっ?)というとがめ顔でアランを一睨ひとにらみすると、スケッチブックを開いてテーブルに立てた。


「……」

 アランは(ああ、はいはい)という諦め顔をして、つまらなそうにビーフカレーを頬張る。

 それにしてもクララにまだマシュマロ入りブラウニーを貰っていない。

 実はクララはアランにあげるはずのブラウニーを昨日、ロバートにあげてしまったのだ。

 そんなこととは知りもしないアランだった。


「ビーフカレーおかわりしよっと~」

「俺も~」

「なんだか今日のビーフカレーは一際、美味しいですね~」

 メラリー、ジョー、太田が手に手にカレー皿を持ってクララの脇の通路をパタパタと通り過ぎていく。

(ふんだ――)

 クララは配膳台に並んでいる3人の後ろ姿を見ながら膨れっ面のままタンブラーのコーヒーをズズッと啜った。


 こうして、

 ジョーはわずか5時間足らずでメラリーロス、略してメラロスから回復した。

 わざわざ病名まで付けた甲斐もなく呆気ないメラロスだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...