PictureScroll 昼下がりのガンマン

薔薇美

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第7弾 明後日に向かって撃つな!

Splash pressure(プレッシャーを跳ね返せ)

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 あくる日。

 空は雲一つない快晴。

 絶好の射撃日和だ。

「せーの、メッッラッリーーンッ」

 野外ステージの観客席から男ばかりの野太い声援が飛ぶ。

 観客席の一角を占めるほどの団体客。

 みなお揃いのピンク色のハッピとハチマキの姿で手に手にメラリーの顔写真を印刷したピンク色の団扇うちわとメガホンを持っている。

 まるで昭和のアイドルの親衛隊のようだ。

「メッッラッリーーンッ」

 野太い声援は本番前の練習らしい。


「な、何なんだ?あの応援団は?」

「あんなハッピにハチマキ、団扇、タウンには売ってないわよ。わざわざ自作したのかしら?」

 ジョーとマダムは楽屋から観客席を眺めて呆気に取られた。

 楽屋の窓はマジックミラーで外側からは中が見えないが、楽屋からは観客席が一望なのだ。

「うふふ、メラリーちゃんの学生時代のお友達よ。みんな大学生で冬休みだから団体チケットでわざわざ東京から応援に駆け付けてくれたのよ」

 ゴードンはホクホク顔である。

「メラリーちゃんは名門私立の附属校だったでしょ。お友達もお金持ちのコばっかしだから団体でこの温泉地のホテルにお泊まりらしいわ」

 応援団の中には高3の夏休みにメラリーと一緒にタウンへ遊びに来ていた伊集院、二階堂、西園寺の顔も見える。

「ああ、あの夏休み、たまたまタウンでメラリーちゃんを見掛けてスカウトした自分を褒めてやりたい」

 なにしろメラリーの応援団だけでチケットが100枚も売れたのだ。

「ああっ?あの爺さん達っ?」

 ジョーは応援団の向かい側の観客席を見た。

『ガンマン・ジョーを援護射撃する会』の商店街の爺さん連中が来ている。

 それも、『ガンマン・メラリーを援護射撃する会』と書かれた横断幕を掲げているではないか。

「いつの間にっ?」

 ジョーはギャフンである。

 メラリーはまんまと自分の売り込みに成功し、爺さん連中をジョーからメラリーの後援会に鞍替えさせたのだ。

「さすが牛肉王子、ガツガツのガッツだな。いや、それよか、所詮、俺等、庶民はセレブの人脈には敵わねえんだよな」

「だな」

 トムとフレディはメラリーの集客力にぐうの音も出ない。

「あのド派手な応援でメラリーがテンパらず練習どおりにやれるといいんだが」

 ロバートはちょっと心配そうだ。

「――(うんうん)」

 バッキーの太田もロバートと同じく心配する。

 そこへ、

「すみません~。早変わりのドレスの着付けで手間取っちゃって~」

 メラリーが新バージョンのコスチュームのドレス姿で楽屋へ入ってきて、

「――わっ?なに?あの観客っ?」

 窓から見えた観客席のピンク色の応援団にギョッと目を見張った。

「ガンマンデビューが決まった時にメールで友達3人に知らせただけなのに。――あ、部活の先輩や後輩も、先生達まで来てる」

 メラリーは楽屋の窓に張り付いて唖然とする。

「ああ、お電話をいただいて団体チケットの予約を頼まれた時に当日にビックリさせたいからメラリーちゃんには内緒にと言われて黙ってたのよ」

 ゴードンはとっくに知っていたのだ。

「……」

 メラリーは思いっ切り顔をしかめた。

 あんな目立つ応援をされたら気が散ってしまう。

 ハッキリ言って、ありがた迷惑だ。


「メラリーは親の反対を押し切って大学進学しないでショウのキャストになったんだよな~?」

「あんなド派手な応援団まで来てガンマンデビューでミス連発したら赤っ恥だよな~?」

 トムとフレディは嫌がらせのようにメラリーにプレッシャーを掛ける。

「む――っ」

 メラリーはプレッシャーを跳ね返すように窓からバッと振り返ると、

「あ~っ、ガンマンデビューに応援いっぱいで嬉しいな~っ。ガンファイトでジョーさんをコテンパンに負かしてやるところをみんなに見せられるし~っ」

 そう強がって大口を叩いた。

「その意気、その意気」

 ロバートがメラリーの肩をポンポンと叩く。

「俺を負かしてやるって?手加減なんかしてやらねえぜ~」

 ジョーはやれやれと吐息して、いつもどおり缶コーヒーをグビグビと飲む。


「せーの、L、O、V、E。ラブ、ラブ、メッラッリーーンッ」

 応援団の野太い声援の練習はまだ続いていた。
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