PictureScroll 昼下がりのガンマン

第６弾 日は沈み 日は昇る

I have tomorrow （明日がある）

（んふふ）

　クララはロビーの観葉植物の陰でニンマリする。

　ひとまず今日のところはジョーのスケコマシ活動を阻止することが出来た。

　最初からメラリーにご注進すれば簡単だったのだ。

　メラリーと友達になっていてホントに良かった。

（そうだ。明日はメラリーちゃんのガンマンデビューだからマシュマロ入りのブラウニー、メラリーちゃんの分も作ってあげよ♪）

　クララはまたレストルームで身だしなみを整えてからルンルンとスキップ加減で多目的ホールへと戻った。


「あ、クララちゃん。もう順番、次だよ」

　アランが駆け寄ってくる。

　騎兵隊の黄色いスカーフを真新しいのと取り替え、鼻の穴のティッシュも取って通常どおりにイケメン光線を放っている。

「うん」

　クララはアランにニッコリしてみせた。

　この瞬間からアランの彼女のフリというクララの小芝居は始まったのだ。


「はい、チーズ」

　舞台ではアニタとケントがキャラクタートリオとフレンチカンカンのハイキックのポーズで撮影していた。

　５ポーズまで撮ってくれるのだが、アニタはダンスをやっているだけにポーズもバッチリ決まっている。

「撮った写真、新年号のいなご新聞に掲載オッケーか有無のところにチェックして下さい～」

　オフィスの広報部の社員がアニタとケントに用紙を渡して確認を取る。

　１２月はバックステージのイベントが盛りだくさんなので新年号のいなご新聞は増量ページの豪華版だ。

「掲載オッケーよねっ？」

「勿論っ」

　アニタとケントは「ラブラブカップルという紹介で」と広報部の社員に注文まで付ける。

「あ、あと、わたし、次のオーディションでカンカンを目指してるんです。コメントにそのことも書いて下さいっ」

　アニタはわざわざ撮影でカンカンのハイキックのポーズをして、いなご新聞で自分をアピールしようと考えたのだ。

　新年号のいなご新聞にはダンス大会で優勝したバミーとバーバラも載るのでアニタも負けられないと必死なのだろう。

（すごいわ。アニタ、なんて押しが強いの）

　クララはあの押しの強さを見習わなくてはと思った。

（わたしもここはアランとラブラブカップルな写真を撮って、いなご新聞に載って、ジョーさんに見せつけてやらなくっちゃっ）

　新年号のいなご新聞にはロデオ大会で優勝したメラリーも載るのでジョーは必ず見るに決まっている。

（んふふ）

　クララはやおら闘志を燃やして両手でグッと拳を握り、気合いを入れた。


「２番目のヒト～」

　クララとアランの撮影の順番になった。

「最初はバストアップから撮ります～。真ん中に顔を寄せて～」

　カメラマンの指示でキャラクタートリオに囲まれてクララとアランは身体を密着させて肩をピッタリとくっ付けた。

「はい、バター」

　広報部のカメラマンがシャッターを切る。

「――（ニッコリ）」

　クララは可愛いらしくアランの肩に小首を傾かしげて微笑みを作った。

　目は笑っていない。

　その笑顔にはそこはかとなく腹黒さが滲み出ていた。


　第７弾につづく。