132 / 297
第7弾 明後日に向かって撃つな!
Covert plan(秘策)
しおりを挟むパアッパァ~ッ♪
楽団の演奏が高らかに響き渡る。
『ウェスタン・ショウへようこそ~』
キャラクタートリオがステージに登場し、賑やかにダンスが始まった。
新バージョンでオープニングの曲も振り付けも新たになってバッキー、バミー、バーバラはリハーサルと変わらずノリノリで踊っている。
「ああ、もうすぐ曲が終わっちゃう。もうすぐ出番になっちゃう」
メラリーはみるみるうちに顔が強張っていく。
「ナーバスになってるわね」
「う~ん」
マダムとロバートは心配そうに目を見交わす。
キャラクタートリオのダンスが終わった。
「わわっ、ステージで頭、真っ白になりそうっ」
メラリーは頭を抱えて喚く。
「大丈夫よっ。メラリーちゃん。わたしが本場アメリカのウェスタン・ショウでガンマンデビューした時のとっておきの秘策を伝授するわっ」
ゴードンが頼もしげにガシッとメラリーの両肩を掴んだ。
「――ひ、秘策っ?」
パアッとメラリーの目が輝く。
「その秘策とやら俺等にもっ」
「ぜひっ」
トムとフレディも期待いっぱいに身を乗り出す。
「……」
ロバート、マダム、ジョーはすでに自分のガンマンデビューの時にゴードンからこの秘策を伝授されたらしく懐疑的に首を捻った。
「いいこと?『あしたのジョー』方式よっ。的に浮かんだ憎いあんちくしょうの顔を目掛け、撃つべしっ、撃つべしっ。これでもう百発百中よっ」
ゴードンは自信たっぷりだ。
「――憎いあんちくしょう?」
メラリーは「う~ん」と的に顔を浮かべる人選を考えた。
「ジョーとメラリーのシーン5分前で~す」
ショウの裏方スタッフが告げる。
「あ、もっぺんトイレっ」
メラリーは楽屋のトイレへ走る。
さっきから2度もトイレに行ったのだが念のため3度目のトイレだ。
「メラリー、急げ。2分前っ」
ジョーの大声でメラリーは慌ててトイレから戻ってきた。
2人は楽屋の階段を駆け下りて地下通路からステージへ上がって酒場のセットにスタンバイする。
~~♪
楽団がムーディーな曲を奏で始める。
ステージのビュート(岩山)がクルリと回転し、酒場のセットに立つジョーとメラリーが登場した。
「メッラッリーーンッ」
応援団から野太い声援が飛ぶ。
「寸劇に声援かよっ」
「やりにくいっ」
ジョーとメラリーは小声で声援に突っ込む。
『ジョー。もう貴方のことで頭がいっぱい』
『俺もさ。ハニー』
あらかじめ録音した音声が流れる。
「――えいっ」
メラリーはリハーサルどおりにヤケクソで体当たりするようにジョーに抱き付いた。
「あっ、もぉう、あんなに口を酸っぱくして注意したのにっ。やっぱりメラリーちゃんの抱き付き方、相撲のもろ差しにしか見えないじゃないのっ」
ゴードンはプリプリする。
「あ~、いよいよね~。早変わりのドレス、上手く剥がれますように~っ」
コスチューム担当のタマラは祈るように手を合わせる。
そうして、
ババッ。
裏方スタッフが酒場のセットの陰でメラリーの早変わりのドレスのマジックテープをベリッと剥がし、巻き毛のウィッグを取ってカウボーイハットを被せて、
ジャジャーン♪
華々しいシンバルの音と共にカウボーイ姿のメラリーが颯爽とステージに登場した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる