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第7弾 明後日に向かって撃つな!

Covert plan(秘策)

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 パアッパァ~ッ♪

 楽団の演奏が高らかに響き渡る。

『ウェスタン・ショウへようこそ~』

 キャラクタートリオがステージに登場し、賑やかにダンスが始まった。

 新バージョンでオープニングの曲も振り付けも新たになってバッキー、バミー、バーバラはリハーサルと変わらずノリノリで踊っている。

「ああ、もうすぐ曲が終わっちゃう。もうすぐ出番になっちゃう」

 メラリーはみるみるうちに顔が強張っていく。

「ナーバスになってるわね」

「う~ん」

 マダムとロバートは心配そうに目を見交わす。


 キャラクタートリオのダンスが終わった。

「わわっ、ステージで頭、真っ白になりそうっ」

 メラリーは頭を抱えて喚く。

「大丈夫よっ。メラリーちゃん。わたしが本場アメリカのウェスタン・ショウでガンマンデビューした時のとっておきの秘策を伝授するわっ」

 ゴードンが頼もしげにガシッとメラリーの両肩を掴んだ。

「――ひ、秘策っ?」

 パアッとメラリーの目が輝く。

「その秘策とやら俺等にもっ」
「ぜひっ」

 トムとフレディも期待いっぱいに身を乗り出す。

「……」

 ロバート、マダム、ジョーはすでに自分のガンマンデビューの時にゴードンからこの秘策を伝授されたらしく懐疑的に首を捻った。


「いいこと?『あしたのジョー』方式よっ。的に浮かんだ憎いあんちくしょうの顔を目掛け、撃つべしっ、撃つべしっ。これでもう百発百中よっ」

 ゴードンは自信たっぷりだ。

「――憎いあんちくしょう?」

 メラリーは「う~ん」と的に顔を浮かべる人選を考えた。


「ジョーとメラリーのシーン5分前で~す」

 ショウの裏方スタッフが告げる。

「あ、もっぺんトイレっ」

 メラリーは楽屋のトイレへ走る。

 さっきから2度もトイレに行ったのだが念のため3度目のトイレだ。

「メラリー、急げ。2分前っ」

 ジョーの大声でメラリーは慌ててトイレから戻ってきた。

 2人は楽屋の階段を駆け下りて地下通路からステージへ上がって酒場のセットにスタンバイする。

 ~~♪

 楽団がムーディーな曲を奏で始める。

 ステージのビュート(岩山)がクルリと回転し、酒場のセットに立つジョーとメラリーが登場した。


「メッラッリーーンッ」

 応援団から野太い声援が飛ぶ。


「寸劇に声援かよっ」

「やりにくいっ」

 ジョーとメラリーは小声で声援に突っ込む。


『ジョー。もう貴方のことで頭がいっぱい』

『俺もさ。ハニー』

 あらかじめ録音した音声が流れる。

「――えいっ」

 メラリーはリハーサルどおりにヤケクソで体当たりするようにジョーに抱き付いた。
 

「あっ、もぉう、あんなに口を酸っぱくして注意したのにっ。やっぱりメラリーちゃんの抱き付き方、相撲のもろ差しにしか見えないじゃないのっ」

 ゴードンはプリプリする。

「あ~、いよいよね~。早変わりのドレス、上手く剥がれますように~っ」

 コスチューム担当のタマラは祈るように手を合わせる。


 そうして、

 ババッ。

 裏方スタッフが酒場のセットの陰でメラリーの早変わりのドレスのマジックテープをベリッと剥がし、巻き毛のウィッグを取ってカウボーイハットを被せて、

 ジャジャーン♪

 華々しいシンバルの音と共にカウボーイ姿のメラリーが颯爽とステージに登場した。
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