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第5弾 踊り明かそう
Do you wanna dance?(踊りたくない?)
しおりを挟む「――マ、マリーさん。お、踊っていただけますか?」
30代半ばの保安官キャストが赤面しながら、おずおずとマダムの前に進み出た。
「ええ、喜んで」
マダムはニッコリと気軽に応じる。
~~♪
だが、
「あ、あれ?す、すみません。あれ?」
保安官キャストが初心者なうえにアガリ症らしくステップがまるで合わない。
おまけにマダムの顔を見るのも豊満な胸元を見るのも恥ずかしいのか目のやり場に困ってキョロキョロと目が泳いでいる。
「もっと背筋を伸ばしてっ」
「は、はいっ」
「そう、顎を上げてっ」
あまりに下手なパートナーにマダムは思わずダンス指導者の顔になっていた。
「ほら、足元を見ないっ。腕を下げないっ」
「は、はひっ」
いつの間にかビシビシとダンスの熱血指導をしているマダムだった。
「ねえ?パパ、わたし達も踊らない?」
ミーナは踊りたくてウズウズしてきたようにロッキーに声を掛ける。
だが、
「カレン~、ウルフく~ん、顔、こっち向けて~」
ロッキーは大きな図体で床に屈み込み、ビデオカメラをローアングルに構えて子供達の撮影に夢中だ。
「もぉう」
ミーナはブスッと頬を膨らませる。
「レッドストン~、踊って、踊って~」
先住民キャストがビュッフェでの腹ごしらえを終えるのを見計らったようにフレンチカンカンの踊り子4人がキャッキャと駆け寄ってきた。
「いっちょ踊るか」
先住民キャストも踊り子の手を取ってホールの中央へ行ってしまう。
「ゲッ?レッドストンも?アイツ等まで踊るのかよ?」
ジョーはギャフンという顔になる。
「あ、じゃ、料理がいっぱい残ってラッキー♪」
メラリーは嬉々としてまた料理を取りにビュッフェのテーブルへ飛び付く。
そこへ、
「も、限界だ~~」
「だな~~」
トムとフレディがぜぇぜぇと息を切らし、よろけながら椅子に倒れ込んできた。
2人はダンス大会の1曲目から、かれこれ1時間以上も踊り続けていたのだ。
「なに、お前等、そんな気合い入れて踊ってんだよ?」
ジョーは小馬鹿にしたように笑う。
「ジョ、ジョーさん、ポスター見てないんすか?こ、これは18時から0時までの6時間耐久ダンスレースなんすよっ」
「れ、0時までに一番、きょ、曲数を踊ったヒトが優勝なんっす」
トムとフレディは息も絶え絶えに説明する。
「えええっ?」
ジョーとメラリーは「なんてこった」と驚愕した。
「そんな勝負の掛かったダンスだったのかよ?知ってたら俺だって踊ったのによっ」
ジョーは悔しげに地団駄を踏み、
「ダンスの優勝賞品って何っ?」
メラリーはトムの胸ぐらに齧り付く。
「キャ、キャスト食堂の食券10万円分だよ」
「ええっ?じゃ、日替わり定食もビーフカレーも五目ラーメンもアップルパイもドーナツもっ?」
メラリーはバッと立ち上がる。
「今から踊っても間に合わないって」
フレディがメラリーのドレスの裾を掴んで引き止める。
もうすでにダンス大会の開会から2時間近く経過しているのだ。
「――あ~」
メラリーは落胆してポスンと椅子に腰を落とした。
「よしっ、次回はロデオとダンス。ダブルで優勝を狙おうぜっ」
「うんっ」
ジョーとメラリーは次回へと闘志を燃やした。
「あ~、もう駄目。腰が痛くなっちゃった」
ゴードンが腰をさすりながら戻ってきた。
「わたしは靴擦れよ~。慣れないハイヒールで踊るなんて無謀だったわ~」
タマラはヨタヨタと足を引きずっている。
日頃から鍛錬しているダンサーとフレンチカンカンの踊り子は変わらずにピンピンしている。
(まだまだ余裕よねっ)
(日頃、着ぐるみで踊ってるキャラクターダンサーの体力を思い知らせてやるっ)
バミーとバーバラは内心で自らを励ましながら疲れも見せずに軽やかなステップだ。
2人はド素人と踊って無駄に体力を消耗しないように男性ダンサーとだけペアを組んでいた。
(全曲、踊り切ってやるっ)
(絶対、食券ゲットしてやるっ)
クルクルと優雅にターンしながら内心で気を吐くバミーとバーバラ。
「なんか、すげー迫力だな。あのコ達」
ジョーは感心して2人を見た。
さっきから2人は目の前で踊っていたのだがジョーはバミーとバーバラの中身とは気付かなかった。
いつもTシャツに短パン姿で髪を結んで、すっぴん顔しか見たことがないのでドレス姿でヘアメイクを整えた2人はまるで別人に見えたのだ。
ちなみに2人のドレスの色はバミーがクリームイエローでバーバラがミントグリーンだった。
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