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第2弾 いつか王子様が
18Memory⑤(エイティーン・メモリー)
しおりを挟むそれから、
午後もメラリーはウェスタン・タウンの新入社員と一緒に新人研修で興味のないアメリカ西部開拓時代の歴史の講習のようなものを受けた。
「――すぴ~」
資料映像のようなものを観せられているうちに居眠りしていたので内容は分からない。
午後5時過ぎ。
やっと退屈な新人研修が終わってメラリーはガンマンキャストの練習場にやってきた。
「今日から練習を始めるのでよろしくお願いします~」
すでに練習場にいたジョー、トム、フレディにペコリとする。
「お~」
「あ~」
トムとフレディは的に向かってライフルを構えたままメラリーに目もくれない。
(――あ、なんか感じ悪い)
メラリーはムッとして2人の背中を睨む。
「メ~ラリ~ィ、待ってたぜ~。ちょい、ちょい」
ジョーがあからさまな猫撫で声と笑顔でメラリーを手招きした。
「は、はい?」
メラリーは嬉しそうにパタパタとジョーに走り寄っていく。
「ちょい、手ぇ、貸してみ」
ジョーはメラリーの右手を掴んで、
「はい?」
パーに広げた指の間に赤、青、黄、緑のピンポン玉4個を挟んだ。
「――何すか?これ?」
メラリーはキョトンとしてピンポン玉の挟まった自分の手を見る。
「このピンポン玉を俺が撃つんだよ」
ジョーは獲物を狙うような目付きでニヤリとした。
「――え――??」
メラリーは(まさか?)という顔で自分の手を二度見する。
「お前がそこに立って、俺がこっから撃つ」
ジョーが射撃の的の前を指差す。
「で、でも、これ、ピンポン玉の中心から1、5cmでも弾が外れたら俺の指に当たりますけど?」
「うん」
「む、難しいんじゃ」
「うん」
いちいち笑顔で頷くジョー。
ガン!
ガン!
トムとフレディの練習する銃声が響く。
「――っ」
銃声にビビッてメラリーはピンポン玉を指からポトポトと落とした。
「――や、やですっ。俺、痛いの苦手なんでっ」
パッと身体を背けて逃げるメラリー。
「な、何だよ。当然、指に当たるみてえに言うんじゃねえよ」
メラリーのジャージのフードを掴んで引き留めるジョー。
「……」
メラリーは振り返って、疑いの眼差しでジョーを見やる。
「練習では完璧なんだって。――見ろよ。これっ」
ジョーが壁際に置かれた何かを覆った布をサッと取っ払うと、1体のマネキンが現れた。
「――ひえっ?」
メラリーはまたビビッた。
マネキンはかなりの年代物らしく肌色で眼球に睫毛まである栗色の巻き毛のリアルマネキンだ。
(――なんか、こわ――っ)
メラリーの世代では全体が単色の無機質なマネキンしか見たことがなく、人間っぽいリアルマネキンは不気味だった。
古びて黄ばんだ白いドレスに頭の黄ばんだ白いリボンがみすぼらしく恨めしげだ。
マネキンは「Hi!」と笑顔で挨拶するように右手を顔の横に上げたポーズで、指の間にピンポン玉4個が挟んである。
「ほら、フィラデルフィアの手。かすり傷ひとつ、ねえだろーが?」
ジョーがマネキンの手を指差す。
「――フィラ――デルフィア?」
クリームチーズかと首を捻るメラリー。
「あ、このコの名前な」
親しげにマネキンの肩を抱くジョー。
「……」
メラリーは怪訝にジョーとマネキンのフィラデルフィアを見つめた。
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