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第2弾 いつか王子様が
18Memory④(エイティーン・メモリー)
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ガチョリ。
メラリーとジョーはほぼ同時に各々の部屋の玄関扉を開けて廊下でバッタリと顔を付き合わせた。
「あ、おはようございます~」
タウンのキャストの霜降りグレーのジャージの上下にピンク色のバミーのプリントTシャツのメラリー。
「はよ~」
黒いレースアップのシャツに白黒ストライプのパンツ、スエードのフリンジのジャケット、ウェスタンハットにブーツでキメキメのウェスタン・ファッションのジョー。
2人はキャスト宿舎のポーチのベンチに並んで座り、話しながらタウンの巡回バスがやって来るのを待った。
「何で昨日のプレゼントの服、着ねえの?」
「だって、あんな高い服、普段着にもったいないし」
「お前、貧乏性だな」
「ホントに貧乏っすから。うちの父親に大学に行かないなら自活しろって言われたし」
「私立大の附属校だったんだろ?そりゃ大学に行かないなんてったら反対するだろ」
「でも、俺、大学なんか行きたくなかったし。そしたら、ちょうどゴードンさんに声を掛けられて。父親もゴードンさんが説得してくれたら、あっさり折れたし」
「――え?そんで、ショウのキャストになったの?」
ジョーはいきなり落胆の表情になったが、
「そっす」
メラリーはケロッと頷いた。
ショウのキャストの男子更衣室。
「なんだよ、アイツ。ウェスタン・ショウを見て格好良いガンマン・ジョーに憧れてキャストになりたいとかじゃねえのかよ」
ジョーはロッカーの前でブツクサ言いながらコスチュームに着替える。
「俺等はロバートさんに憧れて入ったんすよ」
「そうそう。ジョーさんじゃないっすから」
トムとフレディが横から口を出し、わざわざ念を押す。
「ちえっ、そうかよ」
バンッ。
ジョーはロッカーの扉を乱暴に足蹴りで閉めた。
八つ当たりという訳ではなく普段からジョーは扉を足蹴りして閉めるのでロッカーの扉の下部はへこんでデコボコだ。
その昼。
キャスト食堂。
メラリーはメニューに目を見張った。
(――や、安い~)
日替わり定食とビーフカレーは500円、ラーメン、うどん、そば類は300円だ。
しかも大盛りでも値段は変わらないという大盤振る舞い。
「来月にギャラが出たら1ヶ月分の食券をまとめ買いしておくのが割安になってオススメよ」
「はいっ」
メラリーは食欲をそそるニオイに惹き付けられてビーフカレーに決めて、販売機で500円の食券を買うと、ゴードンに倣って黄色いトレイを取り、配膳台に並んだ。
「マーサさん、ビーフカレー大盛り下さ~い」
配膳係のマーサに愛想良く笑顔を振りまく。
「はいよ、ビーフカレー大盛り。うふふ、メラリーちゃんは育ち盛りだから、オ・マ・ケ」
マーサはご機嫌で牛肉増し増しに盛ってくれた。
「わぁい、肉、大好き~」
今後のオマケのために好物をアピールしておくことも抜かりない。
「好きなだけ取っていいよ」とマーサに言われたのでメラリーは配膳台に置いてあるセルフサービスの福神漬けもたっぷりと皿に盛った。
「いただきま~す。――うんんっ、美味しい~っ」
キャスト食堂の手作りビーフカレーは絶品だった。
「ウェスタン牧場の牛肉をたっぷり使ったビーフカレーよ。野菜も地元の農家で採れた新鮮野菜ばかりなの」
ゴードンが自慢げに言う。
「ホント美味しいっす~」
たとえギャラは安くても食事がこの安価でこの美味しさなら食いしん坊の自分でも生きていける。
メラリーは新生活の不安などたちまちどこかへ吹き飛んでいった。
「――あの、ショウのキャストのヒト達は?」
食べ終えてから急に気付いてキョロキョロとする。
「もう、とっくに食べ終わって控え室でコスチュームにお着替えよ。ショウが昼過ぎに開演だからキャストはお昼は早めに食べるの。メラリーちゃんも1週間の新人研修が終わったら一緒に11時前には昼食ね」
「はい。――あ――っ」
メラリーはゾロゾロと昼休憩にやってきた10人ほどのバイトの女のコ達に目を奪われた。
女のコ達はタウンのそれぞれの店によってデザインの異なる色とりどりのドレスに身を包んでいる。
「みんなドレスなんすね~?」
「ここは西部開拓時代のコスチュームだからね」
「へええ」
日常では有り得ないような大きなリボンを髪に着けたラブリーな女のコ達にうっとりと見惚れる。
「メラリーちゃんはああいうヒラヒラのドレスとかリボンとか好き?」
「は、はい。華やかで可愛いし、大好きっす~」
まるで花園だとメラリーは思った。
「そうお?それは良かったわ」
ゴードンは我が意を得たりとニンマリした。
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