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第2弾 いつか王子様が

18Memory②(エイティーン・メモリー)

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 キャスト控え室。

「ここはショウのキャストがダラダラしたり、グダグタしたりする部屋よ。あら~?みんな、まだ夕飯から戻ってないみたいね~」

 ゴードンに続いてメラリーは室内に入る。

「……」

 ジョーが一人、長椅子に足を投げ出してダラダラしていた。

「――?」

 メラリーに気付き、まじまじと見るジョー。

(――あ、ショウの主役のガンマンのヒトだ。なんか怖そう)

 ややビビるメラリー。

 ガタンッ。

 ジョーが勢い良く長椅子から立ち上がる。

「コイツ、新しいキャストだろ?可愛いじゃ~~ん♪」

 嬉々としてメラリーに駆け寄るジョー。

(――コイツ――?)

 ムッとしてジョーを見上げるメラリー。

 188cmのジョーと168cmのメラリーでは身長差が20cmもある。

「……」

 ジョーは期待いっぱいの面持ちでメラリーの顔を見つめている。

「ゴードンさん?コイツ、俺の曲撃ちのパートナーにしていいんだろっ?」

 ガシッ。

 両手でメラリーの肩を掴んでジョーがゴードンに見返る。

「勿論よ」

 ゴードンはニッコリと頷いた。

(きょくうち?)

 耳慣れない言葉にメラリーは意味が分からない。

「ひゃっほ~♪やたっ。練習の成果がや~っと実戦で試せる~っ」

 ジョーが歓声を上げてメラリーの脇を持ち上げて軽々と頭上までリフトした。

「――ひぇっ?」

 おそらく赤ん坊の時に父親にされて以来の高い高いだ。

「ひゃっほ~っ♪」

 グルン、
 グルン、

 ジョーは肩にメラリーを天秤棒のように担いで回転する。

「――な、なんなんすか~~~~?」

 訳も分からずにメラリーはジョーの背中に逆さまになって何周もグルングルンと回った。

「んじゃ、早速、練習に――っ」

 ジョーは回転をピタリと止めると、メラリーを肩に担いだまま性急に控え室から出ようとする。

「ちょ、ちょっと、待ってっ。他のみんなにも紹介まだなのよ」

 慌ててジョーのTシャツの裾を掴むゴードン。

「あ、ああ――」

 ジョーはつまらなそうにメラリーを肩から下ろした。


 ゴードンが手招きして廊下にジョーを促し、

「もぉ、ついさっき来たばかりのコなのよ。いきなり射撃の的に立たせるなんて聞いたらビックラこいて逃げ出しちゃうでしょ?」

 コソッと声をひそめて注意する。

「あっ、そっか」

 ジョーはハッと察した。

「……」

 控え室のメラリーはグルグル回転のせいで、まだ呆然としていた。


 その後。

 ショウのガンマンキャストが室内に揃った。

「今日からガンマンキャストになったメラリーこと、米良めら涼太りょうたくんで~す」

 ゴードンが声高らかに紹介する。

「――?メ、メラリーって、何すか?」

 メラリーは不可解な表情で訊ねた。

「あなたの名前よ。このウェスタン・タウンは西部開拓時代を模した舞台。キャストはみな舞台に立つ役者よ。――ってことで、本名とは別にキャスト名を付けるの。あなたは今日からメラリーちゃんよっ」

 ゴードンが断言するように言う。

 パチ。
 パチ。

 拍手する一同。

「……」

 メラリーは腑に落ちない表情である。


 ゴードンが一人一人を指し、紹介する。

「ガンマンキャストのリーダーのロバートちゃん」

「よろしくな」

 ニッコリとするロバート。

「紅一点のマダムのマリーちゃん」

「よろしくね」

 妖艶にニッコリとするマダム。

「――(ポ~~)」

 マダムがグラマー美女で色っぽいのでメラリーは嬉しそうになる。

「トムちゃん、フレディちゃん」

 巨漢のトムと金髪で地味顔のフレディは無愛想に顎をしゃくる。

「――あとは、さっきのジョーちゃん」

 ニンマリとして頷くジョー。

「よ、よろしくお願いします~」

 メラリーは殊勝にペコリとして、

(他のヒト達はみんなマトモそう。良かった)

 ホッと安堵した。
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