44 / 297
第2弾 いつか王子様が
18Memory②(エイティーン・メモリー)
しおりを挟むキャスト控え室。
「ここはショウのキャストがダラダラしたり、グダグタしたりする部屋よ。あら~?みんな、まだ夕飯から戻ってないみたいね~」
ゴードンに続いてメラリーは室内に入る。
「……」
ジョーが一人、長椅子に足を投げ出してダラダラしていた。
「――?」
メラリーに気付き、まじまじと見るジョー。
(――あ、ショウの主役のガンマンのヒトだ。なんか怖そう)
ややビビるメラリー。
ガタンッ。
ジョーが勢い良く長椅子から立ち上がる。
「コイツ、新しいキャストだろ?可愛いじゃ~~ん♪」
嬉々としてメラリーに駆け寄るジョー。
(――コイツ――?)
ムッとしてジョーを見上げるメラリー。
188cmのジョーと168cmのメラリーでは身長差が20cmもある。
「……」
ジョーは期待いっぱいの面持ちでメラリーの顔を見つめている。
「ゴードンさん?コイツ、俺の曲撃ちのパートナーにしていいんだろっ?」
ガシッ。
両手でメラリーの肩を掴んでジョーがゴードンに見返る。
「勿論よ」
ゴードンはニッコリと頷いた。
(きょくうち?)
耳慣れない言葉にメラリーは意味が分からない。
「ひゃっほ~♪やたっ。練習の成果がや~っと実戦で試せる~っ」
ジョーが歓声を上げてメラリーの脇を持ち上げて軽々と頭上までリフトした。
「――ひぇっ?」
おそらく赤ん坊の時に父親にされて以来の高い高いだ。
「ひゃっほ~っ♪」
グルン、
グルン、
ジョーは肩にメラリーを天秤棒のように担いで回転する。
「――な、なんなんすか~~~~?」
訳も分からずにメラリーはジョーの背中に逆さまになって何周もグルングルンと回った。
「んじゃ、早速、練習に――っ」
ジョーは回転をピタリと止めると、メラリーを肩に担いだまま性急に控え室から出ようとする。
「ちょ、ちょっと、待ってっ。他のみんなにも紹介まだなのよ」
慌ててジョーのTシャツの裾を掴むゴードン。
「あ、ああ――」
ジョーはつまらなそうにメラリーを肩から下ろした。
ゴードンが手招きして廊下にジョーを促し、
「もぉ、ついさっき来たばかりのコなのよ。いきなり射撃の的に立たせるなんて聞いたらビックラこいて逃げ出しちゃうでしょ?」
コソッと声を潜めて注意する。
「あっ、そっか」
ジョーはハッと察した。
「……」
控え室のメラリーはグルグル回転のせいで、まだ呆然としていた。
その後。
ショウのガンマンキャストが室内に揃った。
「今日からガンマンキャストになったメラリーこと、米良涼太くんで~す」
ゴードンが声高らかに紹介する。
「――?メ、メラリーって、何すか?」
メラリーは不可解な表情で訊ねた。
「あなたの名前よ。このウェスタン・タウンは西部開拓時代を模した舞台。キャストはみな舞台に立つ役者よ。――ってことで、本名とは別にキャスト名を付けるの。あなたは今日からメラリーちゃんよっ」
ゴードンが断言するように言う。
パチ。
パチ。
拍手する一同。
「……」
メラリーは腑に落ちない表情である。
ゴードンが一人一人を指し、紹介する。
「ガンマンキャストのリーダーのロバートちゃん」
「よろしくな」
ニッコリとするロバート。
「紅一点のマダムのマリーちゃん」
「よろしくね」
妖艶にニッコリとするマダム。
「――(ポ~~)」
マダムがグラマー美女で色っぽいのでメラリーは嬉しそうになる。
「トムちゃん、フレディちゃん」
巨漢のトムと金髪で地味顔のフレディは無愛想に顎をしゃくる。
「――あとは、さっきのジョーちゃん」
ニンマリとして頷くジョー。
「よ、よろしくお願いします~」
メラリーは殊勝にペコリとして、
(他のヒト達はみんなマトモそう。良かった)
ホッと安堵した。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる