43 / 297
第2弾 いつか王子様が
18Memory①(エイティーン・メモリー)
しおりを挟む昨年の春。
3月に18歳になったばかりのメラリーは大きなスポーツバッグを一つ提げて長閑な温泉地へやってきた。
最寄り駅の西口の改札口を出ると、
「よく来てくれたわねっ。早速、キャストのみんなに紹介するから」
ゴードンがタウンの送迎バスの停留所で待ち構えていた。
「は、はい」
メラリーはやや緊張の面持ちだ。
送迎バスが来ると言葉どおりに早速、
「カールちゃん。このコ、うちの新しいキャストよ。こちらタウンの送迎バスのドライバーのカールちゃん」
送迎バスの運転手に紹介された。
(――カール――ちゃん?)
40代後半の運転手を見てメラリーは怪訝な顔をした。
まだ、この時のメラリーは知る由もなかったが、ゴードンは自分よりも年下は基本ちゃん付けである。
「よろしくっ」
気さくな笑顔のカール(軽部道則)。
「よろしくお願いしま~す」
メラリーは軽く頷く程度にペコリとする。
15分ほどでタウンに着き、送迎バスを降りる。
正面エントランスから少し離れた植え込みの横の『STAFF ONLY 関係者以外立ち入り禁止』の立て札のある通路へ進んでいく。
途中にバックステージの敷地内に入るためのセキュリティ・ゲートがある。
「保安官キャストのロッキーさんよ。このコ、うちの新しいキャスト」
ゴードンはゲートを通っていく他のキャストと同じように自分のIDカードを保安官キャストに示した。
保安官キャストは警備の担当だ。
「よろしくっ」
ゴリラのようにいかめしい顔付きの50代半ばのロッキー(驫木駿)。
「よろしくお願いしま~す」
ペコリとしながらロッキーと他の数名の保安官キャストを見て、(オッサンが多いな~)とメラリーは思った。
「バックステージの建物は東がエントランスのタウンを囲んで西南北の3ヶ所にあるの。ショウのキャストはここ、西――ウェストよ」
ゴードンが指差したバックステージのキャスト用の建物も西部開拓時代を模した造りだ。
「はあ」
メラリーはキョロキョロした。
敷地がやたらに広いのでバックステージ内の西南北3ヶ所を移動するのにもキャスト用の巡回バスや配送のトラックが行き来している。
ブルルンッ。
バイクの轟音にメラリーが振り向くと、
インディアンの派手な羽飾りをなびかせて先住民キャストが走り過ぎていく。
「ほほっ、バックステージではインディアンもアイアン・ホースよ」
「はあ」
ゴードンはバックステージの建物の中へメラリーを促した。
ロビーを抜けるとキャスト食堂がある。
「配膳係のマーサさんよ」
「あらぁ、可愛いコ。よろしくねえ」
60代半ばのマーサ(山田まさえ)は仏頂面でトレイを拭いていたが、メラリーを見たとたんニコニコ顔に変わった。
バックステージは地元のおばちゃん達のバイトによって支えられている。
「よろしくお願いしま~す♪」
メラリーはあからさまに態度を変えて満面の笑みで挨拶した。
食事の配膳をしてくれるヒトは食いしん坊のメラリーにとって大事な存在だ。
この日からマーサはずっとメラリーを贔屓して盛り付けをオマケしてくれるのだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる