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第2弾 いつか王子様が

18Memory①(エイティーン・メモリー)

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 昨年の春。 

 3月に18歳になったばかりのメラリーは大きなスポーツバッグを一つ提げて長閑のどかな温泉地へやってきた。

 最寄り駅の西口の改札口を出ると、

「よく来てくれたわねっ。早速、キャストのみんなに紹介するから」

 ゴードンがタウンの送迎バスの停留所で待ち構えていた。

「は、はい」

 メラリーはやや緊張の面持ちだ。


 送迎バスが来ると言葉どおりに早速、

「カールちゃん。このコ、うちの新しいキャストよ。こちらタウンの送迎バスのドライバーのカールちゃん」

 送迎バスの運転手に紹介された。

(――カール――ちゃん?)

 40代後半の運転手を見てメラリーは怪訝な顔をした。

 まだ、この時のメラリーは知る由もなかったが、ゴードンは自分よりも年下は基本ちゃん付けである。

「よろしくっ」

 気さくな笑顔のカール(軽部道則かるべ みちのり)。

「よろしくお願いしま~す」

 メラリーは軽く頷く程度にペコリとする。


 15分ほどでタウンに着き、送迎バスを降りる。

 正面エントランスから少し離れた植え込みの横の『STAFF ONLY 関係者以外立ち入り禁止』の立て札のある通路へ進んでいく。

 途中にバックステージの敷地内に入るためのセキュリティ・ゲートがある。

「保安官キャストのロッキーさんよ。このコ、うちの新しいキャスト」

 ゴードンはゲートを通っていく他のキャストと同じように自分のIDカードを保安官キャストに示した。

 保安官キャストは警備の担当だ。

「よろしくっ」

 ゴリラのようにいかめしい顔付きの50代半ばのロッキー(驫木駿とどろき はやお)。

「よろしくお願いしま~す」

 ペコリとしながらロッキーと他の数名の保安官キャストを見て、(オッサンが多いな~)とメラリーは思った。


「バックステージの建物は東がエントランスのタウンを囲んで西南北の3ヶ所にあるの。ショウのキャストはここ、西――ウェストよ」

 ゴードンが指差したバックステージのキャスト用の建物も西部開拓時代を模した造りだ。

「はあ」

 メラリーはキョロキョロした。

 敷地がやたらに広いのでバックステージ内の西南北3ヶ所を移動するのにもキャスト用の巡回バスや配送のトラックが行き来している。

 ブルルンッ。

 バイクの轟音にメラリーが振り向くと、

 インディアンの派手な羽飾りをなびかせて先住民キャストが走り過ぎていく。

「ほほっ、バックステージではインディアンもアイアン・ホースよ」

「はあ」

 ゴードンはバックステージの建物の中へメラリーを促した。


 ロビーを抜けるとキャスト食堂がある。

「配膳係のマーサさんよ」

「あらぁ、可愛いコ。よろしくねえ」

 60代半ばのマーサ(山田まさえ)は仏頂面でトレイを拭いていたが、メラリーを見たとたんニコニコ顔に変わった。

 バックステージは地元のおばちゃん達のバイトによって支えられている。

「よろしくお願いしま~す♪」

 メラリーはあからさまに態度を変えて満面の笑みで挨拶した。

 食事の配膳をしてくれるヒトは食いしん坊のメラリーにとって大事な存在だ。

 この日からマーサはずっとメラリーを贔屓して盛り付けをオマケしてくれるのだった。
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