上 下
30 / 297
第1弾 黄色いリボン

You Can't Get A Girl With A Gun(鉄砲じゃ女のコは落とせない)

しおりを挟む
 
 キャスト食堂。

 3時休憩でタウンのキャストの女のコ達がテーブルを囲んでおしゃべりしていると、

「ここ、いい?」
   
 ジョーが気安く女のコ達のテーブルに着いた。

「……」
   
 たちまち女のコ達は不快そうに顔を見合わせる。

「もう、行こっか?」

「そうだね」

「行こ。行こ」
   
 女のコ達はお互いに目配せをして次々と席を立ち上がった。

「――え?なんで?まだ休憩時間あるのによ」

 ジョーは壁の時計と女のコ達をキョロキョロと見比べる。

「……」

 女のコ達は返事もなくツンツンとして去っていった。


「ジョー。お前、タウンの女のコ達に評判悪いぜ~」

 近くのテーブルからロバート、トム、フレディがやってきた。

「――え??」

 ジョーは寝耳に水という顔をする。

「秒速でベッドインする男だとか、30分置きに女のコをチェンジする男だとか、そういう噂っすよ」

 トムも言う。

「ゲッ。何だよ。それ?」

 ジョーは思いも寄らないように目を瞬いた。

「もう、このタウンじゃあ女のコ達、全員、脈なしじゃないっすか?」

 フレディがダメ押しをする。

(女のコ全員、脈なしっっ?)

 ジョーはクラッと眩暈めまいがしたように、

 バッタリ。

 テーブルに顔をうっ伏した。

「新しい女のコの脈を開拓しろよ。フロンティア・スピリットなくして、何のウェスタンだ?西部魂を見せろっ」

 そうロバートがゲキを飛ばす。

『西部魂』

 とたんにジョーの目がメラメラと燃え上がった。


 その後、

 キャスト食堂では、

「――(モグモグモグモグ)」

 メラリーが1人寂しくトンカツ定食を食べていると、

「――お?メラリー、1人か?」
   
 ロバートがカキフライ定食をのせたトレイをメラリーの向かいに置いた。

「ジョーさん、トムとフレディの2人だけ誘ってキャバクラ行っちゃったんすよ。俺だって行きたかったのにっ。まだ未成年だからって飲み会はいっつも置いてきぼりで、つまんないっすよ」

 メラリーは口惜しそうにメソメソとしながらも大盛り飯をモリモリと頬張る。

「キャバクラだとぉ?ジョーの奴、何で俺も誘わねんだよっ」

 ロバートがギロリと怒りの目を剥いた。


 一方、

 駅近くのキャバクラ。

「いらっしゃいませ~」

 キメキメの私服のウェスタンウエアでジョー、トム、フレディの3人が入店する。

「あっ?ひょっとして、俺等、すげー場違い??」
   
 店内を見渡してジョーが足を止めた。

「……」

 店内の団体客が一斉に振り返ってジョー達を見やる。
   
 温泉旅館の浴衣に丹前姿の団塊世代以上の爺さんだらけだ。

 1人、2人と爺さんが席を立ってジョーに近付く。

 まじまじと顔を見て、

「ジョーだよっ」

「昼下がりのガンマン・ジョーじゃないのっっ?」

 爺さん連中は顔を見合わせながら口々に声を上げた。

「いや~、わし等、商店街の慰安旅行で毎年、春と秋に来てるんだけどさっ。ウェスタン・ショウ大好きでっ、毎回、観てんだよっっ」

「今日は生憎あいにくの雨で中止になっちゃってね~。でもっ、こんなとこで逢えるなんてツイてるな~っっ。ほらっ、飲もっ、飲も~~っっ」

 酒が入っているせいか爺さん連中はやたら威勢が良い。

「えっ?いや、お、俺、酒は――」

 ジョーは両手と顔を左右に振りながら後ずさる。

「いーからっ、いーからっっ」

 爺さん連中はジョーの腕を両側から掴み、自分達のテーブルに引っ張っていった。


「あっ?ジョーちゃん、烏龍茶?」

「チーズ食べる?チーズ。はいっ、あ~ん」
   
 爺さん連中はキャバクラ嬢そっちのけでジョーを取り囲んで座ってベタベタする。

 慰安旅行の度にウェスタン・タウンへ来ているほどなら相当な西部劇ファンなのだろう。

 やおら、商店街連合会の会長という70代後半とおぼしき爺さんが立ち上がり、

「それではっ、『ガンマン・ジョーを援護射撃する会』の発足をしゅくしましてっ」

 と音頭を取る。

「乾杯~!」
「乾杯~!」

 ビールのグラスを打ち鳴らす爺さん連中。

「な、なんだよっ?その会っ?聞いてねえぞっ」

 ジョーは面食らった。

 いつの間にやら訳の分からない後援会まで出来ている。


「ここが昔ながらの温泉地だってこと忘れてたな」

「だな」

 トムとフレディはジョーに構わず、別のテーブルにキャバクラ嬢とちゃっかり座っていた。


「――なんだよ。ここは爺キャバかよっ」

 ジョーは爺さん連中に囲まれ、身の置き場がなくキョロキョロとした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

バーチャル女子高生

廣瀬純一
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ” (全20話)の続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211 男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は? そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。 格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。

処理中です...