PictureScroll 昼下がりのガンマン

薔薇美

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第1弾 黄色いリボン

You Can't Get A Girl With A Gun(鉄砲じゃ女のコは落とせない)

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 キャスト食堂。

 3時休憩でタウンのキャストの女のコ達がテーブルを囲んでおしゃべりしていると、

「ここ、いい?」
   
 ジョーが気安く女のコ達のテーブルに着いた。

「……」
   
 たちまち女のコ達は不快そうに顔を見合わせる。

「もう、行こっか?」

「そうだね」

「行こ。行こ」
   
 女のコ達はお互いに目配せをして次々と席を立ち上がった。

「――え?なんで?まだ休憩時間あるのによ」

 ジョーは壁の時計と女のコ達をキョロキョロと見比べる。

「……」

 女のコ達は返事もなくツンツンとして去っていった。


「ジョー。お前、タウンの女のコ達に評判悪いぜ~」

 近くのテーブルからロバート、トム、フレディがやってきた。

「――え??」

 ジョーは寝耳に水という顔をする。

「秒速でベッドインする男だとか、30分置きに女のコをチェンジする男だとか、そういう噂っすよ」

 トムも言う。

「ゲッ。何だよ。それ?」

 ジョーは思いも寄らないように目を瞬いた。

「もう、このタウンじゃあ女のコ達、全員、脈なしじゃないっすか?」

 フレディがダメ押しをする。

(女のコ全員、脈なしっっ?)

 ジョーはクラッと眩暈めまいがしたように、

 バッタリ。

 テーブルに顔をうっ伏した。

「新しい女のコの脈を開拓しろよ。フロンティア・スピリットなくして、何のウェスタンだ?西部魂を見せろっ」

 そうロバートがゲキを飛ばす。

『西部魂』

 とたんにジョーの目がメラメラと燃え上がった。


 その後、

 キャスト食堂では、

「――(モグモグモグモグ)」

 メラリーが1人寂しくトンカツ定食を食べていると、

「――お?メラリー、1人か?」
   
 ロバートがカキフライ定食をのせたトレイをメラリーの向かいに置いた。

「ジョーさん、トムとフレディの2人だけ誘ってキャバクラ行っちゃったんすよ。俺だって行きたかったのにっ。まだ未成年だからって飲み会はいっつも置いてきぼりで、つまんないっすよ」

 メラリーは口惜しそうにメソメソとしながらも大盛り飯をモリモリと頬張る。

「キャバクラだとぉ?ジョーの奴、何で俺も誘わねんだよっ」

 ロバートがギロリと怒りの目を剥いた。


 一方、

 駅近くのキャバクラ。

「いらっしゃいませ~」

 キメキメの私服のウェスタンウエアでジョー、トム、フレディの3人が入店する。

「あっ?ひょっとして、俺等、すげー場違い??」
   
 店内を見渡してジョーが足を止めた。

「……」

 店内の団体客が一斉に振り返ってジョー達を見やる。
   
 温泉旅館の浴衣に丹前姿の団塊世代以上の爺さんだらけだ。

 1人、2人と爺さんが席を立ってジョーに近付く。

 まじまじと顔を見て、

「ジョーだよっ」

「昼下がりのガンマン・ジョーじゃないのっっ?」

 爺さん連中は顔を見合わせながら口々に声を上げた。

「いや~、わし等、商店街の慰安旅行で毎年、春と秋に来てるんだけどさっ。ウェスタン・ショウ大好きでっ、毎回、観てんだよっっ」

「今日は生憎あいにくの雨で中止になっちゃってね~。でもっ、こんなとこで逢えるなんてツイてるな~っっ。ほらっ、飲もっ、飲も~~っっ」

 酒が入っているせいか爺さん連中はやたら威勢が良い。

「えっ?いや、お、俺、酒は――」

 ジョーは両手と顔を左右に振りながら後ずさる。

「いーからっ、いーからっっ」

 爺さん連中はジョーの腕を両側から掴み、自分達のテーブルに引っ張っていった。


「あっ?ジョーちゃん、烏龍茶?」

「チーズ食べる?チーズ。はいっ、あ~ん」
   
 爺さん連中はキャバクラ嬢そっちのけでジョーを取り囲んで座ってベタベタする。

 慰安旅行の度にウェスタン・タウンへ来ているほどなら相当な西部劇ファンなのだろう。

 やおら、商店街連合会の会長という70代後半とおぼしき爺さんが立ち上がり、

「それではっ、『ガンマン・ジョーを援護射撃する会』の発足をしゅくしましてっ」

 と音頭を取る。

「乾杯~!」
「乾杯~!」

 ビールのグラスを打ち鳴らす爺さん連中。

「な、なんだよっ?その会っ?聞いてねえぞっ」

 ジョーは面食らった。

 いつの間にやら訳の分からない後援会まで出来ている。


「ここが昔ながらの温泉地だってこと忘れてたな」

「だな」

 トムとフレディはジョーに構わず、別のテーブルにキャバクラ嬢とちゃっかり座っていた。


「――なんだよ。ここは爺キャバかよっ」

 ジョーは爺さん連中に囲まれ、身の置き場がなくキョロキョロとした。
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