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第1弾 黄色いリボン

spurt①(スパート)

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 あくる日の午前中。

 今日も曇り空。

「……」

 乗馬クラブの馬場にメラリーが立っていた。

 青いチェックのウェスタンシャツにフリンジのスエードのベストを着て、青いカウボーイハットを被った姿。

 初心者のくせにご丁寧にウェスタンブーツにspurスパー(拍車)まで装着している。



 メラリーは一日体験レッスンを受けに来たのだ。


「あっ、あんにゃろ。いっつもジャージのくせに。一人前いっちょまえに、おめかししてんじゃん」

 ジョーが柵の前に馬を止めてニヤリと片頬で笑った。

「意気込みを感じるな」

 ロバートも馬を止めて真顔で頷く。

 2人は乗馬がてら、横木の柵を隔てたタウンのモニュメント・バレーから乗馬クラブの馬場を見物しているのだ。


「一日体験レッスン方、こちらで~す」

 馬場に馬を伴ってくる快活そうな美女のインストラクター。

「は~い♪」

 メラリーは満面の笑みで美女のインストラクターに駆け寄る。

 連日の悪天候のせいか一日体験レッスンを受けるのはメラリーだけだ。


「えっ?おいおい、あのコがインストラクター?可愛いじゃ~ん♪」

 ジョーが美女を見て小さく口笛を吹いた。

「う~ん、童顔だが、年齢としの頃は26、7歳というところか?メラリーの奴、年上好きだな」

 ロバートも納得の表情で美女を判定した。


「――あれ?」

「ダンさんじゃねえか?」

 ジョーとロバートが馬場の隅で飼葉桶を提げて働くダンの姿に気付いた。


「ああ。ダンさん、元々、この乗馬クラブのヒトなのよ」

 馬に乗ったゴードンがジョー達に近づく。

「――おや?これは皆さん、お揃いで」

 ダンも3人に気付いて横木の柵のほうへやってきた。

「……」

 それを見ていた美女のインストラクターも馬を伴ってやってくる。

「――?」

 メラリーも美女のインストラクターの後ろをくっ付いてくる。

「お父さん。ショウのキャストのヒト達でしょ?」

 美女のインストラクターがダンに声を掛けた。

「――お、お父さんっ?」

 ジョーとメラリーが揃って目を丸くした。

「……」

 美女のインストラクターはペコリと会釈する。

「ホンット~にお父さん?年の離れた夫婦とかってんじゃねえだろな?ホンット~に娘?」

 ジョーは疑い深く確認する。

「やだ。ホンット~に娘です。絵馬です。よろしく」

 エマは元気溌剌とした笑顔を見せた。

「見てのとおりのじゃじゃ馬で」

 娘の名前からして相当に馬好きのダンはそんな謙遜をしつつ、エマを見返った。

「やあね。もぉ、そればっかり」

 エマはちょっとダンに怒ってみせて、はにかみ笑いを浮かべた。

「――(ニマニマ)」

 スケコマシ笑いのジョー。

「――むむっ?」
   
 メラリーは(またか?)と思った。

 ジョーは女のコは誰でも手当たり次第なのだ。

 そこそこ若くて、そこそこ綺麗。

 スケコマシのジョーの基準はそれくらいだった。
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