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第1弾 黄色いリボン
Easy Come, Easy Go.④(簡単に来て、簡単に去る)
しおりを挟むその頃。
バックステージのロビーでは、
「あ~、雨キャンじゃないコ達は仕事中だっけ」
また戻ってきたクララは周りをキョロキョロと見渡してガッカリと窓際の椅子に座り込んだ。
「げ~、また、降ってきた?」
「ヤベ~。傘、タウンに置いて休憩、来ちゃったよ」
キャスト食堂から出てきた保安官キャスト達の声が耳に入る。
「――傘?――あ――っ」
クララは自分が傘をジョーの部屋に忘れてきたことに気付いた。
一方。
キャスト宿舎のジョーの部屋では、
「――れ?このヒト、リンゴ・キッド?この間と顔が違う」
西部劇を観ながらメラリーはキョトンとした。
「当たりめえだろ。演じている役者が違うんだから。この前はジョン・ウェインで、これはグレゴリー・ペック」
ジョーが呆れ顔で説明する。
「え~、余計、ややこしくなるじゃないっすか。誰が誰だか区別つかないのに。それに、このヒト、新聞記者だと思ってたのに」
「お前、他の映画と一緒くたにすんなよ」
「……」
西部劇に興味のないメラリーはガンファイトの場面以外ではすぐに飽きてしまう。
「……」
メラリーはベッドの枕の下やベッドカバーの下を覗き込む。
「――お前、何、探してんだよ?」
「……」
メラリーはブンブンと首を横に振る。
「ふうん」
ジョーは構わずDVDを観る。
「――お、この後がいいとこなんだって」
肘で横のメラリーを突く。
と、思ったらスカッと空振り。
いつの間にやら横にメラリーがいない。
「Zzz――~」
すでにメラリーはベッドで寝息を立てていた。
「はぁ~」
『それ見たことか』とジョーは吐息して、ブランケットを掛けてやる。
またテレビ画面に向き直ると、
ピンポン♪
玄関のチャイムが鳴った。
「――あ――」
ジョーが扉を開けるとクララが気まずそうに立っていた。
「――わたし、さっき、傘、忘れちゃって。傘、ないと困るし」
クララは仕方がなく取りに来たことを強調した。
靴脱ぎのトーテムポールに立て掛けた赤い傘を取ろうとして、うっかりと落としてしまう。
カタン!
牛柄のスニーカーの上に赤い傘が倒れる。
傘を拾おうと前へ身を乗り出し、クララは部屋の中を見てハッとなった。
テーブルの上にドリンクが2つ置かれて、ベッドの中に寝ている明るい茶髪がブランケットから覗いて見える。
「――っ」
クララはたちまち血相を変えて玄関から飛び出していった。
3時過ぎ。
キャスト食堂。
テーブルに3時休憩の女のコ達とまたまたタウンまで戻ってきたクララがいた。
「ええ~っ、ホントにぃ?」
ゼネラルストアの売り子のデボラ(出川ほなみ)が声を荒げてカウボーイ・クッキーをポロリと膝に落とした。
「約30分後に傘を取りに戻ったら、もう別のコがベッドにっ?」
シアターの受付のスーザン(山里すず)が眉をひそめて訊き返す。
「――そうなの――」
クララはまるで被害者のような顔をして切なげに目を伏せた。
「わあぁ、最低~~っ」
シューティング・ギャラリーのチェルシー(柴田ちえみ)が顔をしかめる。
「ちょっとモテモテだと思って、調子ぶっこいてんのよ。許せな~いっっ」
キャラクター・ショップの売り子のダイアナ(大島あきな)がプンプンとして叫んだ。
「――う、ん――」
クララは思った以上にみながジョーを非難するのに気を良くして、
「そ、それでね――」
ジョーに襲われかけた話をやや誇張気味に捲くし立てたのだった。
クララ
チェルシー スーザン
ダイアナ デボラ
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