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それぞれの思惑~後編~
#20
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仕舞には、譲さんの優しさが名刺を通してジンワリと伝わってくるようで、あったかいものがホロリと零れ落ちそうになって。
「美菜ちゃんっ。お願いだから、もうこれ以上泣かないでくれる? 要が戻って来ちゃうからぁ……。お願い。ね?」
それをいち早く察知した譲さんの必死な言葉のお陰で、なんとか泣かずに済んだのだけれど……。
「何を騒いでるんだ? まさか、譲。美菜に変なことでもしてたんじゃないだろうな?」
「まっ、まさか、そんな訳ないじゃん」
「譲、また棒読みになってる。そんなにホルマリン漬けにされたいか?」
「めっそうもないっ。美菜ちゃん助けて~!」
「・・・」
「譲、美菜に近づくな!」
「はーい、ごめんなさーい!」
「ベッドに隠れても無駄だ。来ないならそっちに行くぞ?」
「ひゃー!!」
直後、病室に戻って来た副社長と譲さんの賑やかなじゃれ合いは、迎えの夏目さんが到着するまでの間、続いたことは詳しく説明するまでもないだろう。
***
お昼前に退院してマンションへと帰ってきてからも、副社長は入院中と変わらず優しいままだ。
今日はまだ土曜日だから、これが明日まで続くのかと思うと憂鬱な気持ちになってくる。
こんな調子でずっと傍に居られたら、副社長なしでは居られなくなりそうで、怖くなってきちゃうんだもん。
そんなことを考えてる時点で、もう完全に副社長依存症になっちゃってると思うんだけど……。
リビングのソファでそんなことを本気で心配しちゃってるおバカな私のことを心配そうに、
「なんだか元気がないようだが、大丈夫か?」
そう言って気遣ってくれる優しい副社長。
お向かいのソファでゆっくりと寛いでいた筈の副社長がいつのまにやらすぐ傍に居て。
さも当然のことのように私の隣に腰を下ろすと、私のことをヒョイと膝に乗せてしまわれた。
物思いに耽っていたおバカな私が気付いた時には、副社長に後ろからフワリと優しく包み込むようにして抱きしめられてしまっていて。
現在、私の額に大きな手を当てて熱があるかを確認してくれている。
――のはいいんだけれど……。
身体をピッタリと密着させてくっつかれているお陰で平熱だった体温は徐々に滾るように熱されて、鼓動も忙しなく暴れはじめてしまったようだ。
お陰で、カーッと顔から火を噴くくらいに真っ赤になるのが自分でも分かるくらいだ。
それに加えて、暴れ出した鼓動の騒がしい音までが副社長に気づかれやしないかとヒヤヒヤもんだ。
おまけに、最近は忙しかったり、入院してしまったりしていたせいで、副社長と口に出せないようなあんなことやこんなことをしていなかったからか……。
そういうことをしようとしてこない副社長に、まるでお預けでもされているようで、なんだか寂しいなんて思っちゃっている自分に戸惑ってしまうくらいだ。
そんな自分のまるで欲求不満のような思考に蓋をしつつ、コクコクと首を縦に何度か振って応えると……。
「美菜ちゃんっ。お願いだから、もうこれ以上泣かないでくれる? 要が戻って来ちゃうからぁ……。お願い。ね?」
それをいち早く察知した譲さんの必死な言葉のお陰で、なんとか泣かずに済んだのだけれど……。
「何を騒いでるんだ? まさか、譲。美菜に変なことでもしてたんじゃないだろうな?」
「まっ、まさか、そんな訳ないじゃん」
「譲、また棒読みになってる。そんなにホルマリン漬けにされたいか?」
「めっそうもないっ。美菜ちゃん助けて~!」
「・・・」
「譲、美菜に近づくな!」
「はーい、ごめんなさーい!」
「ベッドに隠れても無駄だ。来ないならそっちに行くぞ?」
「ひゃー!!」
直後、病室に戻って来た副社長と譲さんの賑やかなじゃれ合いは、迎えの夏目さんが到着するまでの間、続いたことは詳しく説明するまでもないだろう。
***
お昼前に退院してマンションへと帰ってきてからも、副社長は入院中と変わらず優しいままだ。
今日はまだ土曜日だから、これが明日まで続くのかと思うと憂鬱な気持ちになってくる。
こんな調子でずっと傍に居られたら、副社長なしでは居られなくなりそうで、怖くなってきちゃうんだもん。
そんなことを考えてる時点で、もう完全に副社長依存症になっちゃってると思うんだけど……。
リビングのソファでそんなことを本気で心配しちゃってるおバカな私のことを心配そうに、
「なんだか元気がないようだが、大丈夫か?」
そう言って気遣ってくれる優しい副社長。
お向かいのソファでゆっくりと寛いでいた筈の副社長がいつのまにやらすぐ傍に居て。
さも当然のことのように私の隣に腰を下ろすと、私のことをヒョイと膝に乗せてしまわれた。
物思いに耽っていたおバカな私が気付いた時には、副社長に後ろからフワリと優しく包み込むようにして抱きしめられてしまっていて。
現在、私の額に大きな手を当てて熱があるかを確認してくれている。
――のはいいんだけれど……。
身体をピッタリと密着させてくっつかれているお陰で平熱だった体温は徐々に滾るように熱されて、鼓動も忙しなく暴れはじめてしまったようだ。
お陰で、カーッと顔から火を噴くくらいに真っ赤になるのが自分でも分かるくらいだ。
それに加えて、暴れ出した鼓動の騒がしい音までが副社長に気づかれやしないかとヒヤヒヤもんだ。
おまけに、最近は忙しかったり、入院してしまったりしていたせいで、副社長と口に出せないようなあんなことやこんなことをしていなかったからか……。
そういうことをしようとしてこない副社長に、まるでお預けでもされているようで、なんだか寂しいなんて思っちゃっている自分に戸惑ってしまうくらいだ。
そんな自分のまるで欲求不満のような思考に蓋をしつつ、コクコクと首を縦に何度か振って応えると……。
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