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7.目をきらきらさせて語る桐ケ谷

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 土曜日になった。
 待ち合わせ場所は、駅前のヘンな銅像の前。名前はわからないけど、むかしに作られたゆるキャラっぽい何かで、待ち合わせスポットになっているよ。
 駅までは自転車で来たから、ポニーテールが崩れていないか、前髪がオールバックになっておでこ丸だしじゃないか、駅の窓ガラスをちらちら見て手で直す。がっつり鏡を見て直すのはちょっと自意識過剰っぽくてはずかしい。
 もしクラスの子に見られたとして、何も言われないとは思うんだけどね。自意識過剰なんだよね。
 窓ガラスの向こうから、桐ケ谷が歩いてくるのが見えた。学校で見るのと違って、街中にいるとなんだか大人っぽくて中学生に見える。背が高いというか、しゅっとしているというか。顔が小さいのかな。うらやましい。
「陽乃葉、おまたせ」
 名前を呼ばれてどきどきする。
 桐ケ谷の私服は毎日学校で見ているけど、なんだか休日のスタイルはちょっとおしゃれに見える。
 あたしはというと……これといって、かわいい服も持ってないし、買いに行くヒマもないし。やっぱり、身体を動かしやすいジャージっぽい服だ。行先はショッピングモールだし、べつにいっかなって思って。
「お、おはよ桐ケ谷……」
 なんだか、声が小さくなってしまう。
 急に、恥ずかしくなってきた。桐ケ谷とあたしじゃ、釣り合いがとれないんじゃないかな……。
 もじもじしはじめたあたしを見て、桐ケ谷はくすくす笑いだす。
「な、なに笑ってんの」
「なんか、学校の陽乃葉と違うなーって。キンチョーしてんの?」
「は? してないし! いつもと同じでしょ!」
 あたしが軽くグーパンチをすると、桐ケ谷はそれを手のひらで受け止めた。そして、声をあげて笑う。
「服装も髪型もいっしょだけど、なんか違う」
「学校と違うのは桐ケ谷のほうじゃん」
「まぁ、学校じゃ寝てるばかりだし」
 あ、そうか。髪が整えられているんだ。学校ではいつも前髪がくしゃくしゃだけど、今はまっすぐで形が崩れていない。
 それだけじゃなくて、服装とか……雰囲気とか……いろいろ大人っぽいじゃんって言いたかったけど、はずかしいからやめた。
 あたしたちは、駅前のショッピングモール内にある手芸屋さんに向かいながら会話を続ける。
「桐ケ谷って、疲れたなーってとき、どうやって自分を癒してる?」
 昨日疑問に思ったことを聞いてみる。いろんな人のストレス解消方法を知りたい。
「べつに、疲れたなーってときはないけど」
「ないの? かわいいものが好きって親や友だちに言えないとかで、ストレスたまらない?」
「言いたくないから言わないだけで、それでストレスはたまらないよ。言ったら反対されて、余計ストレスたまりそうだから」
 平然と言う。そっか、桐ケ谷は言わないことで自分を守っているんだ。
「でも、あたしには話してくれたじゃん」
 桐ケ谷は、ちょっと悔しそうに顔を歪める。入店したショッピングモールは、すごい人の数。ぶつからないよう、きょろきょろと周囲を見回しながら歩く。
「陽乃葉がにじいろのとこの孫だなんて知らなかったから。俺の行きつけのお店で話をきいてくれそうな人は、にじいろのおばちゃんくらいしかいないし。仕方ない」
「そんな理由で教えたの~?」
「ま、結果的に陽乃葉は俺のよき理解者になってくれたからいいけどね」
「理解者に、なれてる? なんもしてなくない?」
 あたし、なんもしてないけど……。学校じゃ話もしないし。
 理解者になっていると言われても、ピンとこなかった。
「にじいろのおばちゃんにマスコットを置いてくれるように言ってくれたじゃん。あと、やりたいことを追い求めていてすごいってほめてくれた。そういうの」
「たしかに言ったけども。そんなんでいいの?」
 ぜんぜんわからない。あたしは特別なことはしてないよ。
「それが一番いいんだよ。口出しされるの、嫌いだから」
 桐ケ谷は、はっきり自分の好き嫌いを言う。その姿がすごく眩しかった。店内の照明を浴びているというのもあり、すっごくキラキラしている。
 すっかり、桐ケ谷にはきらきらフィルターがかかってしまっているみたい。
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