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1.委員長でお姉ちゃん
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鈴蘭とバイバイして、私は通学路を急ぐ。
ダッシュで帰宅したのは、自宅ではなくクレープ屋さんの『にじいろ』。おばあちゃんが店の切り盛りをしているんだ。
「おばあちゃんごめん、遅くなって」
裏口からお店に入り、ランドセルを奥に置いて手を洗ってからお店に出た。
「おかえり、陽乃葉ちゃん。いそがなくてもいいのに」
『にじいろ』は、放課後になると子どもたちがたくさん買いに来るからいそがしいんだ。クレープって高いイメージだけど、おばあちゃんは子どもたちでも買いやすいように安いハーフサイズやミニサイズも作ってくれるから、人気なんだよ!
にじいろは、おばあちゃんの「好き」がつまったすてきなお店。水色を基調に、にじいろの名のとおりカラフルな色使いの店内とクレープ包装紙……夢の世界みたいで、すごくかわいい!
でも、おばあちゃんは冬頃にヒザを悪くしてから、思うように動けないんだ。だから、あたしが助けなきゃ!
あたしが店の中を動き回り、おばあちゃんはなるべく動かないようにクレープを焼く。
「あ、委員長! メニュー見せて!」
しょっちゅう買いに来てくれる近所の子に呼ばれる。
「はい、これ! 季節限定メニューのいちご系がおすすめだよ」
「いーんちょー、くれーぷまだぁ?」
「ごめんね、こころをこめてつくってるから、まっててね」
小一の子にすら、私は「いーんちょー」という記号で呼ばれる。学校を離れても、あたしは委員長。
好きでやってるんだから、べつにいいけど!
放課後のいそがしい時間が過ぎる。外では、子どもたちは家に帰るようにとのアナウンスとともに、帰宅チャイムの「メヌエット」が流れていた。
「お疲れさま、陽乃葉ちゃん。ありがとうね」
夕飯前の時間になると客足は途絶えるため、閉店の準備に入る。
おばあちゃんは、ヒザに手をやりながらよっこいしょと片付けはじめた。見た目は若々しいけど、もうすぐ七十歳になるから、体のあちこちが痛いってよく言うようになった。
以前はウォーキングが趣味で、近所のおばあちゃんたちとたくさん歩いていた。でも、さいきんは家にこもりっきり。
そんなおばあちゃんの生きがいが、『にじいろ』なんだ。にじいろを守るためなら、あたしはどんなに疲れていても店の手伝いをするよ。
閉店時間を過ぎたのでお店をしめて、おばあちゃんと共に家に帰る。にじいろと家は、歩いて数分の距離だよ。
外は薄暗くなっていた。夏になれば、閉店時間をすぎてもけっこう明るいんだけどね。
「ほんとうに、陽乃葉ちゃんのおかげでお店を続けられてるよ。ありがとうね」
「いいんだよ。あたしはおばあちゃんの生きがいをなくしたくないだもん」
おばあちゃんはふと、険しい顔つきになった。いつもやさしくてほがらかなおばあちゃんにしてはめずらしい。
「でもね、陽乃葉ちゃんはまだ小学生だから、無理して……」
「あ、家の電気ついてる。もうみんな帰ってきてるね」
あたしはおばあちゃんの言葉を待たず、明かりのついた家に急いだ。
「がんばりすぎないで」って、お説教されそうだったからね。好きでやっていることなのに、どうして怒られるんだろう。
「ただいま!」
「おかえり、お姉ちゃん」
家の中から、お母さんの声が聞こえた。保育園にいる双子の由愛と愛生をお迎えに行って、帰宅したばかりみたい。
「お姉ちゃん、由愛と愛生の着替え手伝ってあげて! 悪いけど、あとお風呂にも入れてあげて」
「はぁい。こら、由愛愛生、お風呂入るからおもちゃ置いて!」
共働きで、双子の保育園児を育てるお母さんは、あたしよりも多忙だ。だったら、積極的にお手伝いしなくっちゃね!
委員長であり、お姉ちゃんの私に、安らぎの時間はない。
でも、ツラくはないよ。
これがあたしの存在意義だから、これでいいんだ。
ダッシュで帰宅したのは、自宅ではなくクレープ屋さんの『にじいろ』。おばあちゃんが店の切り盛りをしているんだ。
「おばあちゃんごめん、遅くなって」
裏口からお店に入り、ランドセルを奥に置いて手を洗ってからお店に出た。
「おかえり、陽乃葉ちゃん。いそがなくてもいいのに」
『にじいろ』は、放課後になると子どもたちがたくさん買いに来るからいそがしいんだ。クレープって高いイメージだけど、おばあちゃんは子どもたちでも買いやすいように安いハーフサイズやミニサイズも作ってくれるから、人気なんだよ!
にじいろは、おばあちゃんの「好き」がつまったすてきなお店。水色を基調に、にじいろの名のとおりカラフルな色使いの店内とクレープ包装紙……夢の世界みたいで、すごくかわいい!
でも、おばあちゃんは冬頃にヒザを悪くしてから、思うように動けないんだ。だから、あたしが助けなきゃ!
あたしが店の中を動き回り、おばあちゃんはなるべく動かないようにクレープを焼く。
「あ、委員長! メニュー見せて!」
しょっちゅう買いに来てくれる近所の子に呼ばれる。
「はい、これ! 季節限定メニューのいちご系がおすすめだよ」
「いーんちょー、くれーぷまだぁ?」
「ごめんね、こころをこめてつくってるから、まっててね」
小一の子にすら、私は「いーんちょー」という記号で呼ばれる。学校を離れても、あたしは委員長。
好きでやってるんだから、べつにいいけど!
放課後のいそがしい時間が過ぎる。外では、子どもたちは家に帰るようにとのアナウンスとともに、帰宅チャイムの「メヌエット」が流れていた。
「お疲れさま、陽乃葉ちゃん。ありがとうね」
夕飯前の時間になると客足は途絶えるため、閉店の準備に入る。
おばあちゃんは、ヒザに手をやりながらよっこいしょと片付けはじめた。見た目は若々しいけど、もうすぐ七十歳になるから、体のあちこちが痛いってよく言うようになった。
以前はウォーキングが趣味で、近所のおばあちゃんたちとたくさん歩いていた。でも、さいきんは家にこもりっきり。
そんなおばあちゃんの生きがいが、『にじいろ』なんだ。にじいろを守るためなら、あたしはどんなに疲れていても店の手伝いをするよ。
閉店時間を過ぎたのでお店をしめて、おばあちゃんと共に家に帰る。にじいろと家は、歩いて数分の距離だよ。
外は薄暗くなっていた。夏になれば、閉店時間をすぎてもけっこう明るいんだけどね。
「ほんとうに、陽乃葉ちゃんのおかげでお店を続けられてるよ。ありがとうね」
「いいんだよ。あたしはおばあちゃんの生きがいをなくしたくないだもん」
おばあちゃんはふと、険しい顔つきになった。いつもやさしくてほがらかなおばあちゃんにしてはめずらしい。
「でもね、陽乃葉ちゃんはまだ小学生だから、無理して……」
「あ、家の電気ついてる。もうみんな帰ってきてるね」
あたしはおばあちゃんの言葉を待たず、明かりのついた家に急いだ。
「がんばりすぎないで」って、お説教されそうだったからね。好きでやっていることなのに、どうして怒られるんだろう。
「ただいま!」
「おかえり、お姉ちゃん」
家の中から、お母さんの声が聞こえた。保育園にいる双子の由愛と愛生をお迎えに行って、帰宅したばかりみたい。
「お姉ちゃん、由愛と愛生の着替え手伝ってあげて! 悪いけど、あとお風呂にも入れてあげて」
「はぁい。こら、由愛愛生、お風呂入るからおもちゃ置いて!」
共働きで、双子の保育園児を育てるお母さんは、あたしよりも多忙だ。だったら、積極的にお手伝いしなくっちゃね!
委員長であり、お姉ちゃんの私に、安らぎの時間はない。
でも、ツラくはないよ。
これがあたしの存在意義だから、これでいいんだ。
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