はりぼてスケバン弐

あさまる

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「どうしてー?」

「その……。」
彼女が番長であるのは事実だ。
しかし、この呼び方はとにかく嫌であった。
それを上手く言語化出来ない華子。

「鼬原が止めてくれと言ってるだろ、止めてやれ。」

「そうっすよ!姐さん嫌がってるじゃないっすか!いくら生徒会長さんでも駄目っすよ!」

困っている華子。
そんな彼女へと、助け舟を出す二人。
それは彼女にとってこの上なくありがたいことであった。

「ふ、二人ともっ……!」
感謝の声。
つい感情が溢れて来る華子。

「……ありゃりゃ、恐い用心棒達がこれ以上怒る前に撤収しようかねーっと……。鼬原ちゃん、またねー。」
そう言うと、心司はそそくさと廊下へと去っていってしまった。

「え?あ、は、はい。」
まるで嵐のような人だ。
そんなことを思う華子であった。

ボランティア。
そのよつなものは、改めて考えてみると存外悪いものではないのかもしれない。
そうも思う華子であった。

一度担任教師である飛鳥に相談、ないしは提案してみよう。
彼女はそんなことも考えていた。


その時、彼女は一つ大きな見落としをしていた。
それは、ここが白辰高校と並ぶ不良校である黒龍高校だということだ。
元々そんな現状を打破する為の思考であったにも関わらず、その一番大事なことが欠落していた。

そもそも、ここの生徒達がそのような集まりに来るのだろうか?
所謂鼬原一派である丸雄や亥玄は来るだろう。
それに、提案者である心司もだ。
しかし、それ以外はどうか。
番長である華子が直に言ったとしても、恐らく極一部のみが参加するだけだろう。


「……さてさて、鼬原ちゃんの現在の支持率はどれくらいかなーっと……。」
廊下を歩く心司はボソリと呟いた。


「……というわけで、週末に近所のゴミ拾いボランティアをしたいんですが……。」

「おぉ、良いじゃないか。」

放課後。
華子は職員室へ来ていた。
飛鳥へ昼休みの時に心司が提案したことを伝える為だ。
この案は、彼には好印象なようで、リアクションは悪くない。

「本当ですか!?ありがとうございます。」

「……正直、鼬原がここをまとめる存在になってくれて安心してるんだ。」

「……え?」
突然の言葉に戸惑う華子。

「いや、まだ少ししか経ってないから何とも言えないが、他の奴らならもっと他校や近隣の住人と争いを起こすようなことをしようとするだろう?」
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