はりぼてスケバン

あさまる

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「そ、それ……滅茶苦茶恐いっす……。」

「……え?それ?何が恐いの?……何が?」
依然口角が上がっている。
そのはずの華子。

「……ナンデモナイッス……ウッス……。」
早口で小声。
目を逸らす丸雄。

見てはいけない。
彼の中で警鐘が鳴っていたようだ。

「……そもそもの話だが、お前と藤柴は付き合っていたのか?もし違うなら、奪われたと言うのはお門違いではないか?」

正論。
ぐうの音も出ない。
亥玄から出たあまりにも痛烈な言葉。
そんなものに、周囲すら三花に同情すらしてしまう。

「そ、そんな……そんなことっ!あんたに言われたくない!私とシバは付き合ってるの!」

「……そうなのか?」
三花から目を離す。
そして、彼は今度は丸雄を見る。

「……っ!」
ブンブンブン!
勢い良く首を横に振る丸雄。
それは、断固とした否定の意味を示していた。

「……と、あいつは言っているが?」

「そ、そんな……ね、ねぇ……シバ……。」
丸雄の言葉にガクッと肩を落とす三花。
縋るような声と態度。
その両目からは大粒の涙が落ち、頬を伝っていた。


これ以上、彼女にかける言葉はない。
それに、もう相手をしている場合ではない。
次は、華子の方へと向かう亥玄。

「怪我はないか?」

「う、うん……ありがとう……。」
もう左右の支えがなくとも立っていられる。
華子は二人に礼を言うと、亥玄へも礼を言った。

「そうか……。それで、こいつはどうする?」
こいつ。
それは、三花のことだろう。

「ど、どうするって……。」
そんなことを委ねられても困る。
華子は戸惑ってしまった。
しかし、これは彼女にしか出来ない決断だ。

他ではない、黒龍高校の番長は彼女だ。
そんな彼女へ歯向かった者への沙汰。
それは、彼女自身が決めなければならない。

「言わなくとも分かるだろうが……これはお前が決めなければならないことだ。」

「わ、分かってる……分かってるから……!」
目を閉じる。

思案。
どうしたいか。
どうすべきか。

「姐さん……。」
傍らにいる丸雄が心配そうに呟く。

周囲の者達が、彼女へ言葉を投げ掛ける。
どれもこれも、三花への処罰は厳しいものにしろというものだ。


「……決まった。」
目を開け、一度深呼吸した華子。
そして、真っ直ぐに三花を見るのであった。

「……。」
華子を見る生徒達。
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