はりぼてスケバン

あさまる

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「だ、大丈夫……きっと……ここにいなきゃいけない……と思う……。」

「そう?無理してない?」

「……なら良いけど……。」

「その……でも、出来ればこのまま支えていて欲しいな……。」
あはは。
苦笑いし、弱音を漏らす華子。

「ふふ、良いよ。」

「オッケー、任せなよ、番長。」

「……ありがとう。」
快く快諾。
そんな彼女らに、素直に礼を言うのであった。


「……それで?」
再度の問い。
先ほどよりも強いものが、亥玄の口から出た。

集まってきた生徒達も、三花を見下している。
その大半が華子を庇おうとしている。
中には今にも殴りかかりそうな者もいた。
これではどちらが加害者か分からない。

「……だ、だって……だって……!」
怒りか。
それとも悔しさか。
声が震えている三花。

それは、何人もの不良に囲まれている恐怖から来るものだろうか。
それとも、華子への恨みを晴らすことに失敗したことに対する悔しさからだろうか。
それは、彼女にしか分からないだろう。

「……。」

「そいつ、ズルいじゃない!!」
廊下に響き渡る声。

「……うるさっ……。」
舌打ち。
そして、ボソッと呟いたのは、亥玄であった。
彼はまるで動じていなかった。

「私から……私からシバを奪って!それだけじゃなく……私から友達も……立場も奪って……!何で私がこんな目に合わなきゃいけないの!?」

「……お、俺を……?」
今度呟いたのは、丸雄であった。

「……。」
華子にも意味が分からない。

丸雄、そして友人に立場。
全てを華子が奪った。
そう彼女は叫んでいる。
しかし、華子にはまるで心当たりがない。

特に、丸雄に関してはなぜそんなことを言われるのか理解が出来なかった。
これではまるで、三花が丸雄へ対して好意を持っていたということになる。

記憶を辿る華子。
確か、三花と丸雄は揉めていたはずだ。
そして、そのせいで、自分は双葉と出会ってしまった。
その時だ。
その時に、事故とはいえ彼を倒してしまった。

全て、あの日から起きたことだ。
あの出来事がなければ、このようなことにはならなかったはずだ。

忘れかけていた怒り。
それが、今沸々と再沸騰して来た。

「……ひっ!?ね、姐さん!?」
そんな彼女の様子に気づいた丸雄。
情けなく声が裏返る。

「……うん?」
ニッコリ。
あくまで笑顔。
華子の顔には、そんなものが張り付いていた。
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