101 / 259
level 11
「モデルなんて、本当にわたしにできるのでしょうか?」
しおりを挟む
「モデルにならない?」
「え?」
「凛子ちゃん、モデルを目指してみないか? プロの」
「プロのモデル… ですか? わたしが!?」
いきなりなにを言い出すのだろう?
訝《いぶか》しげに見返すわたしに、ヨシキさんはいつになく真面目な表情で続けた。
「はじめて撮影したときから、感じてたんだ。凛子ちゃんには『華』があるって」
「オーラ?」
「凛子ちゃんはモデルの素質があるよ。背も高くてスタイルもいいし、容姿にも恵まれてる。日舞やバレエをやってただけあって、姿勢もいいし仕草も洗練されてる。運動神経もモデル勘も、抜群にいい。礼儀正しくて人当たりもいいのに、負けん気も強い。
なにより、そこにいるだけでパッと周りが輝くような、オーラがある。それは、努力じゃどうにもならない、天性のものなんだよ。
凛子ちゃんならきっとやれる。プロのモデルとして!」
「そんな… わたしなんか」
「絶対できるって。今度スタジオで撮らせてくれないか」
「え? スタジオですか?」
「オレの勤め先のスタジオ。社長に頼めば空いてるときにでも借りれるし、白ホリで凛子ちゃんをキチンと撮ってみたい」
「はい。それは嬉しいですけど」
「うちはモデル事務所とのつき合いもあるし、いちばんふさわしい事務所に凛子ちゃんを紹介することだってできる。モデル事務所だって、凛子ちゃんを見れば欲しがると思うよ。絶対モデルになれるって」
「そ、そうですか?」
「じゃあ約束な。日取りはまた連絡するよ」
「はっ… はい」
返事を確認して、ヨシキさんはお別れのキスをくれた。
モデル?
プロ?
わたしが?!
こうして、バカンスの最後は思いがけない展開となった。
突然のできごとに戸惑ったまま、わたしはヨシキさんに見送られながら家に入っていった。
そして、ヨシキさんのこの言葉は、そのあとのわたしたちを、大きく変えることになったのだ。
『モデルかぁ。ヨシキさんはああ言っていたけど、本気かな?
モデルなんて、本当にわたしにできるのかな?』
居間で荷物の整理をしながら、わたしはさっきのヨシキさんとの会話を、何度も何度も思い返していた。
『モデル』とひと口に言っても、いろいろなジャンルがあるはず。
華やかなファッションショーのステージに立つモデルから、イベント会場で案内をするモデル。テレビコマーシャルのモデルに、雑誌のモデル。
雑誌にしても、いろいろな年齢向けのファッション誌や情報誌があるし、男性向け雑誌でエッチなポーズをとっているグラビアモデルも、モデルには違いない。
いったいわたしには、どんなモデルが向いているのだろう?
そもそも本当に、わたしはモデルになれるの?
雲を掴むような話に、全然現実味が湧いてこない。
「凛子、旅行どうだった?」
そんなことを考えながら、グズグズと片づけをしているところに、母がやってきた。
はたと思い出して、わたしはバッグのなかから、おみやげの箱を取り出す。
昨日ヨシキさんからもらった、天城産のわさびの漬け物だ。
「あら、ありがとう。まあ、『藤喜の大吟醸わさび漬け』ね。お父さまの大好物なのよ。喜ぶわよ」
そう言っておみやげを受け取った母は、旅行の感想を訊いてきた。
つづく
「え?」
「凛子ちゃん、モデルを目指してみないか? プロの」
「プロのモデル… ですか? わたしが!?」
いきなりなにを言い出すのだろう?
訝《いぶか》しげに見返すわたしに、ヨシキさんはいつになく真面目な表情で続けた。
「はじめて撮影したときから、感じてたんだ。凛子ちゃんには『華』があるって」
「オーラ?」
「凛子ちゃんはモデルの素質があるよ。背も高くてスタイルもいいし、容姿にも恵まれてる。日舞やバレエをやってただけあって、姿勢もいいし仕草も洗練されてる。運動神経もモデル勘も、抜群にいい。礼儀正しくて人当たりもいいのに、負けん気も強い。
なにより、そこにいるだけでパッと周りが輝くような、オーラがある。それは、努力じゃどうにもならない、天性のものなんだよ。
凛子ちゃんならきっとやれる。プロのモデルとして!」
「そんな… わたしなんか」
「絶対できるって。今度スタジオで撮らせてくれないか」
「え? スタジオですか?」
「オレの勤め先のスタジオ。社長に頼めば空いてるときにでも借りれるし、白ホリで凛子ちゃんをキチンと撮ってみたい」
「はい。それは嬉しいですけど」
「うちはモデル事務所とのつき合いもあるし、いちばんふさわしい事務所に凛子ちゃんを紹介することだってできる。モデル事務所だって、凛子ちゃんを見れば欲しがると思うよ。絶対モデルになれるって」
「そ、そうですか?」
「じゃあ約束な。日取りはまた連絡するよ」
「はっ… はい」
返事を確認して、ヨシキさんはお別れのキスをくれた。
モデル?
プロ?
わたしが?!
こうして、バカンスの最後は思いがけない展開となった。
突然のできごとに戸惑ったまま、わたしはヨシキさんに見送られながら家に入っていった。
そして、ヨシキさんのこの言葉は、そのあとのわたしたちを、大きく変えることになったのだ。
『モデルかぁ。ヨシキさんはああ言っていたけど、本気かな?
モデルなんて、本当にわたしにできるのかな?』
居間で荷物の整理をしながら、わたしはさっきのヨシキさんとの会話を、何度も何度も思い返していた。
『モデル』とひと口に言っても、いろいろなジャンルがあるはず。
華やかなファッションショーのステージに立つモデルから、イベント会場で案内をするモデル。テレビコマーシャルのモデルに、雑誌のモデル。
雑誌にしても、いろいろな年齢向けのファッション誌や情報誌があるし、男性向け雑誌でエッチなポーズをとっているグラビアモデルも、モデルには違いない。
いったいわたしには、どんなモデルが向いているのだろう?
そもそも本当に、わたしはモデルになれるの?
雲を掴むような話に、全然現実味が湧いてこない。
「凛子、旅行どうだった?」
そんなことを考えながら、グズグズと片づけをしているところに、母がやってきた。
はたと思い出して、わたしはバッグのなかから、おみやげの箱を取り出す。
昨日ヨシキさんからもらった、天城産のわさびの漬け物だ。
「あら、ありがとう。まあ、『藤喜の大吟醸わさび漬け』ね。お父さまの大好物なのよ。喜ぶわよ」
そう言っておみやげを受け取った母は、旅行の感想を訊いてきた。
つづく
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
還暦妻と若い彼 継承される情熱
MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。
しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。
母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。
同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる