8 / 22
8.猫が繋ぐ縁……と思いきや元夫が
しおりを挟む
そんな私に、急に飛び込んできたスカイラー様からの『問い合わせ』だったのだ。
私は「いったい何事なの」と執事に聞いた。
すると執事は、
「迷いネコを預かっているそうです。こちらの猫ではないかという問い合わせでした」
と端的に答えた。
私は飛び上がった。
「まあっ! リリーが見つかったの? そしてリリーは、スカイラー様に保護していただいたの? 何という偶然なんでしょう! すぐにお迎えに参りますとお伝えして」
私はリリーが見つかってほっとしたと同時に、とんでもない偶然が重なったことに胸が不自然に脈打つのを感じていた。
スカイラー様がリリーを保護……。
しかし、私はそれをどんな気持ちで受け止めてよいのか正直すぐには判断できなかった。
極力心の中から排除していたスカイラー様。
いくら大事なリリーを保護してもらったからといって、私が迎えに行ってスカイラー様に直接会うのは……ちょっと避けたい。
スカイラー様への気持ちは完全に心の奥へしまい込んで蓋をしたのだから。
私は夫に浮気されたバツイチで、憧れの人の前にそんな惨めな姿をさらけ出すなんてしたくない。
あの時の思い出は、どうぞあの時のままに……。
かといって、せっかくリリーが見つかったのに他人任せにはできない気もする。
何かの不手際で、またリリーが行方不明になってしまったら? それはすごく困る!
もう私にはリリーくらいしか慰めてくれるものはいないというのに。
するとその時、部屋の外の方が騒がしくなった。
「何事?」
と私が眉を上げると、下男が勢いよく駆けてきて、状況を把握しようと部屋の外に出た執事に何やら耳打ちするのが見えた。
執事が慌ててパッと対処に向かおうとするので、
「待ちなさい、どうしたの」
と私が少しキツめの口調で執事を呼び止めると、執事は、
「それが、マクギャリティ侯爵様(※元夫のこと)がおみえだそうです!」
と答えた。
私は驚いた。なぜ元夫が? っていうか、これからリリーを迎えにスカイラー様のところを訪ねようと思っていたところだったのに、なんてタイミングで現れるの、あの人は!? うざっ!
私は急に水を差されたような気持ちになり、こんなときに訪ねてくる元夫を煩わしく思った。
「追い返してちょうだい」
と私は執事に短く命じた。
しかし、元夫は頑として帰ろうとしない。
「なぜ帰らないの」
私はスカイラー様のところへ行く準備を始めていたが、元夫が帰ろうとしないという報告を受け、余計にイライラした。
執事は困った顔をしている。
「それが、『リリーちゃんを探しに行くなら自分も同行させろ』と仰っています」
私は呆れ返ってしまった。
どこまでもリリーですのね! それが私の気持ちを逆なでしているとも知らずに!
「断ってくれたんでしょう?」
「もちろんです。でも『人手は一人でも多い方がいいだろう?』とかなんとか仰って居座っています」
私はまた腹立たしく思った。
――ああ、でも、こうして元夫がしゃしゃり出てきたおかげで、スカイラー様への情緒なんかどこかへ吹き飛んでしまいましたわ!
元夫なんかが絡んできたら、しんみりした気持ちになんかなりようがありませんね!
全く私の人生を引っ掻きまわすことにかけちゃ一流なんですから!
今ここで元夫を物理的に強引に追い返したところで、絶対ついてくるんだろうなと思った。
「ああ、もう!」
と私は心の中でぶつくさと文句を百も並べていましたが、ついに観念して元夫の同行を許すことにした。
ええ、ええ!
元夫がスカイラー様のところに同行するなんて、私の人生史上一番の「どういうこと!?」ってヤツですよ。
私の唯一の大事にしたかった思い出の人の元に、私の人生をぶち壊してばっかりの元夫を連れて行くんですからね。
私は思い出の人の前に、3倍増しの惨めな姿をさらすわけです! ああもう、言葉にならないわ。一言で言うなら、カオス!
もう逆に、全てのことにきっぱり諦めがついていいんじゃないかしらね!
私は「いったい何事なの」と執事に聞いた。
すると執事は、
「迷いネコを預かっているそうです。こちらの猫ではないかという問い合わせでした」
と端的に答えた。
私は飛び上がった。
「まあっ! リリーが見つかったの? そしてリリーは、スカイラー様に保護していただいたの? 何という偶然なんでしょう! すぐにお迎えに参りますとお伝えして」
私はリリーが見つかってほっとしたと同時に、とんでもない偶然が重なったことに胸が不自然に脈打つのを感じていた。
スカイラー様がリリーを保護……。
しかし、私はそれをどんな気持ちで受け止めてよいのか正直すぐには判断できなかった。
極力心の中から排除していたスカイラー様。
いくら大事なリリーを保護してもらったからといって、私が迎えに行ってスカイラー様に直接会うのは……ちょっと避けたい。
スカイラー様への気持ちは完全に心の奥へしまい込んで蓋をしたのだから。
私は夫に浮気されたバツイチで、憧れの人の前にそんな惨めな姿をさらけ出すなんてしたくない。
あの時の思い出は、どうぞあの時のままに……。
かといって、せっかくリリーが見つかったのに他人任せにはできない気もする。
何かの不手際で、またリリーが行方不明になってしまったら? それはすごく困る!
もう私にはリリーくらいしか慰めてくれるものはいないというのに。
するとその時、部屋の外の方が騒がしくなった。
「何事?」
と私が眉を上げると、下男が勢いよく駆けてきて、状況を把握しようと部屋の外に出た執事に何やら耳打ちするのが見えた。
執事が慌ててパッと対処に向かおうとするので、
「待ちなさい、どうしたの」
と私が少しキツめの口調で執事を呼び止めると、執事は、
「それが、マクギャリティ侯爵様(※元夫のこと)がおみえだそうです!」
と答えた。
私は驚いた。なぜ元夫が? っていうか、これからリリーを迎えにスカイラー様のところを訪ねようと思っていたところだったのに、なんてタイミングで現れるの、あの人は!? うざっ!
私は急に水を差されたような気持ちになり、こんなときに訪ねてくる元夫を煩わしく思った。
「追い返してちょうだい」
と私は執事に短く命じた。
しかし、元夫は頑として帰ろうとしない。
「なぜ帰らないの」
私はスカイラー様のところへ行く準備を始めていたが、元夫が帰ろうとしないという報告を受け、余計にイライラした。
執事は困った顔をしている。
「それが、『リリーちゃんを探しに行くなら自分も同行させろ』と仰っています」
私は呆れ返ってしまった。
どこまでもリリーですのね! それが私の気持ちを逆なでしているとも知らずに!
「断ってくれたんでしょう?」
「もちろんです。でも『人手は一人でも多い方がいいだろう?』とかなんとか仰って居座っています」
私はまた腹立たしく思った。
――ああ、でも、こうして元夫がしゃしゃり出てきたおかげで、スカイラー様への情緒なんかどこかへ吹き飛んでしまいましたわ!
元夫なんかが絡んできたら、しんみりした気持ちになんかなりようがありませんね!
全く私の人生を引っ掻きまわすことにかけちゃ一流なんですから!
今ここで元夫を物理的に強引に追い返したところで、絶対ついてくるんだろうなと思った。
「ああ、もう!」
と私は心の中でぶつくさと文句を百も並べていましたが、ついに観念して元夫の同行を許すことにした。
ええ、ええ!
元夫がスカイラー様のところに同行するなんて、私の人生史上一番の「どういうこと!?」ってヤツですよ。
私の唯一の大事にしたかった思い出の人の元に、私の人生をぶち壊してばっかりの元夫を連れて行くんですからね。
私は思い出の人の前に、3倍増しの惨めな姿をさらすわけです! ああもう、言葉にならないわ。一言で言うなら、カオス!
もう逆に、全てのことにきっぱり諦めがついていいんじゃないかしらね!
83
あなたにおすすめの小説
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~
水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」
第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。
彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。
だが、彼女は知っていた。
その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。
追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。
「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」
「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」
戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。
効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる