美形貴族のお坊ちゃん×極悪非道のツン/ヤンデレ海賊の激甘執着ラヴ

ゆっくり

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一章

裏切り者

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 牢屋に閉じ込められたのも束の間、また私は彼の部下によって金髪の男の部屋に連れられた。アルバートさんは不安そうな表情で私を見つめ、その目には疑念がにじんでいた。私はアルバートさんの頭をよしよしと撫でてからその場を去った。

「私も死刑です?」

「いや、お頭が話をしたいらしいが」

 ひげもじゃの男は私を抱き上げて、彼の部屋に連れて行った。なぜ私を抱きかかえる必要があるのか、最初は疑問に思ったが、先ほど抱き上げろと強請った男だとわかった。つい先ほどのことなのに、あまりにもどうでもよくて彼の顔を忘れていた。


「失礼します」

 また、あの趣味の悪い部屋に連れてこられた。内装は豪華で絢爛だが、先ほどの処刑で体にでもついていたのだろうか、血の跡があちこちに滴っている。そして骸骨が見せしめのように飾られていた。

「そろそろ、王族共の話をする気なったか」

 急に何の話だ。
 混乱しつつも考えが頭を巡る。そういえば以前、祖国の情報、特に王族に関しての情報について何か言えと言われていたんだった。

「いいえ」

 知らない理由を教えようと思っていたんだった。長い期間が開いたためすっかり忘れていた。そう思い、話そうと思って口を開いたが、怒り狂った彼がこちらにやってきた為口を閉じる。そして頬を張り倒される。
 屋敷で暴力を振るわれた経験がここで役に立つとは。口を開けたまま殴られたら歯が飛んでいくらしいから閉じた。

「あの醜悪な王族どもを神格化し、忠誠でも誓ってやがるのか?」

 彼は低い声で憤りを表し、その声はまるで冷たい氷柱のように鋭く、深い怒りを含んでいた。低いトーンの声は部屋に響き渡り、後ろにいた彼の部下は彼の怒りに当てられて怯えていた。

「テメェのお気楽な脳は何度殴れば治るんだ?あぁ!!?」

 彼は怒りに狂って、声を荒げて怒鳴り散らした。そう言ってもう一発私の頬を打った。彼は容赦なく私の顔に暴力を振るう。

「お前に教えてやろう、あの王族どもがどれほど悪逆非道なクズどもなのか教えてやる!!」

 彼は怒りに駆られて叫んだが、その目には深い悲しみがにじんでいる。彼は私に醜悪な王族の話をして、私を落胆させ、国への嫌悪を共有しようとしているのだろう。でも、そんなことをしなくても私はあの国をずっと嫌っていて、王族も貴族も大嫌いだ。

「…………」

 大激怒の彼を見ながら私はふと、彼が海賊らしからぬ発音や文法や語彙をその言葉の端々に滲ませていることに気がついた。そしてその彼の瞳を見てなにか明確に言葉にはならないが違和感を抱いた。

「あなたのその目は……」

 彼は怒り狂っている。ただそれよりも私には気になることがあった。近くで見た彼の瞳。私は彼の頬に指を触れ、彼の緑の瞳を見つめた。
 彼は驚いたような顔をし、黙った。彼は、まるで人形が突然意思を持って話し始めたのを見るような目で見てくる。
 その明確にならない違和感。

「触んじゃねぇよ殺すぞ」

 そして、顔をぶん殴られた。彼は不快そうな顔をして私を睨んでいた。どうやらボディータッチは嫌いなようだ。

「チッ……まあいい」

 彼は結局、悪逆非道の王族の話はしなかった。先程彼もあの国出身だと知った。もしかして彼は王族から酷い扱いを受けてきたのだろうか。
 なんとなく気になったが、彼の過去を不躾に詮索するのは失礼だと思い、黙っていた。

「次に、誰がお前を牢屋から出したのかを言え」

 彼は質問を続けた。次は、裏切り者が誰なのかを割り出すための質問だった。私は、自分を逃がそうとした人物が誰だったかを思い出そうとした。

「…………」

「…テメェまたダンマリか?」

 どんな顔、どんな顔だったか。あの時は混乱とアルバートさんのこととでいっぱいで誰が私を助けようとしたのかわからない。先ほど日の下で話をしていた男ですら、一瞬顔を忘れていたのだから。

「わかりません、どんな人だったか覚えていない。夜だったし、顔が見辛かった」

「こいつらそこまで庇う価値のある連中じゃねぇぞ。」

 どうやらまた、私が口を割りたくないとただを捏ねていると思っていたらしい。私は本当にため息がつきたくなった。

「そこかしこで殺人強盗強姦なんでもやってきたゴミどもを集めただけ」

 私は、知らないと言う私の言葉を信用しない彼に少しイラッとした。なぜ私の言葉を文字どおり受け取ってくれないのだろう。知らないものは知らないのである。

「ここの人たちみな髭もじゃで汚くて、見ていられないんですよ」

「…………」

「揃いも揃って歯は黄色いし。不潔だし。見分けつきません。ましてや暗がりだと尚更です」

 彼は深いため息をついた。まるで心の奥底から湧き上がるような深い憂鬱を表していた。そしてガックしと肩を落とした。

「あいつら風呂入らせるか…チッ汚いのは同意だが、ちっとも顔も覚えていないのか」

「ええ、そもそもどうでも良い人たちの顔は覚えられないタチなのですよ」

 彼はもう一度大きくため息をついた。そして、私の瞳をじっと見つめた。先程までの怒り狂っていた様子とは違い諦めたような顔をした。俗に言う、バカの子を見る目だ。私はその目線が少々不服だったが、諦めてくれたのなら好都合だと思った。

「チッしかたねぇな。おい、お前ら、こいつ連れて行け」

「……はい」

 彼らはあんなにも酷いことを彼に言われていたが、すごすごと言うことに従った。私の後ろにいたヒゲモジャが私を抱き抱えて、地下牢の方へ連れて行く。
 どうやら私から裏切り者の情報を聞き出すのは諦めてくれたらしい。


 彼はなぜ金髪の男に抵抗しないのだろう。さっさとあのヒゲモジャが言っていたようにさっさとクーデターでもすれば良いのに。
 そう考えた時点で、クーデターの時に話していたヒゲモジャのことを思い出した。地下牢のところまで着いた時点で、私のことを抱き抱えていたヒゲモジャをじっと見る。そうだ、今思い出したがこの男ではないか。様々な点で色々と世話を焼いていたヒゲモジャだ。

「死ななくてよかったねあんた」

 ギョッとした顔をして私の方を見るひげもじゃ。私はその顔を見てケタケタ笑った。幸い周りには彼も彼の部下も誰もいない。

「あんだけペラペラ言い訳していたくせに、お前覚えてたのか」

「うんそうだよ」

 今思い出したことは言わずに、彼に恩を売ろうと思った。私が同意すれば彼は嫌そうな顔をした。本当に忘れていれば良かったのにと言う顔だった。
 私は無事にアルバートさんの元に届けられた。その際ガシガシと雑に頭を撫でられたが、汚い手で触んなよとしか思えなかった。

「心配しなくても言わないから。安心して」

「……お前…」

 私はゆるくヒゲモジャに手を振った。彼は何が言いたそうにしたが、そのまま足早にその場を離れた。

「ルイスちゃんどうやった」

「まーた本当に何も知らないってこと信じてもらえなかったよ」

「ああ…まああいつ人間不信やからな」

 アルバートさんはまた、私のことを後ろからぎゅっと抱きしめた。もはやここが定位置となっていた。
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