美形貴族のお坊ちゃん×極悪非道のツン/ヤンデレ海賊の激甘執着ラヴ

ゆっくり

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一章

処刑中

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 金髪の彼は剣の血を振り払い、その剣を腰に戻した。怒りに満ちたまなざしで、彼は元の位置に戻り、処刑の準備が整ったことを示した。

「はじめろ」
 
 彼がそう告げた途端に、彼の部下たちは処刑を開始した。その光景は残酷で、捕虜たちは恐怖に身を震わせながら、船内に響く凄絶な光景を見ていた。

「………」

 その凄惨な光景を見ながら、私は黙っていることが最善だと感じた。処刑の光景はかなり残酷で、その記憶は二度と忘れることはないだろうと思った。なぜこんなにも残酷なことをするのか理解が難しいものであり、ただ黙って見守るしかなかった。

「……」

 船内には血の匂いが漂い、恐怖によって嘔吐する捕虜もいる。その嘔吐物の匂いと血の匂い、そして海の塩気とも混じり合っている。かなり凄惨な現場だった。
 

「なぜ、私は殺さないのですか」

 私は隣に戻ってきた金髪の彼を見る。金髪の彼は怒りに満ちた瞳で私を睨みつけた。

「そんなに死にたいのか。」

 私は彼に胸ぐらを掴まれた。彼の手の力が強く、私はそのまま彼の顔を見つめるしかなかった。
 死にたいのかと聞かれれば、死にたくはない。でも生きたいかと聞かれれば、答えは出せなかった。私は生きるのを諦めているといえた。

「どちらでも」

 そう答えた私を、彼は心底軽蔑した目で見つめた。
 非情な死の光景が目の前で繰り返されている。血の溜まりや、ぐちゃぐちゃになった肉片が散乱し、その凄絶な光景を見ても、私は死ぬことに恐怖を覚えていなかった。

「お前はただの人形だ。心底つまらない、生きる価値も死ぬ価値もない。人間の形をした何か」

「…………」

 彼は心底つまらなさそうな表情を浮かべ、私に唾を吐きかけた。その液体を私は顔を背けて避ける。そして、彼によって床に突き飛ばされた。ジンジンとお尻に痛みが走った。

「………」

「あなたはどう思います?」

 金髪の彼が激怒している、とんでもない空気感の中で近くにいたひげもじゃに話しかける。彼は先ほど私をバカにした表情とは打って変わって、とんでもなく怯えた顔でこちらを見て、話を振るなと言いたげな顔をした。

「私のこと、人間の形をした別の生物だと思います?」

「知るかぼけ話しかけるな」

「えでも私何度もここから脱走しようとしてるんですよ?それで生きる意思がないって意味わかんなくないですか。矛盾してると思いません?」

「お頭に舐めた口きくな黙ってろ!!…殺されるぞお前」

 非常に怯えた様子ながらこそっとそう告げてくる。だってつまらない。もうどうでもいい。目の前の光景は一人一人死んでいく。同じことの繰り返しで飽き飽きしてきた。私は何か話をしたいんだ。

「なぜあの人たちは逃げないのです?かなりの人数いますし、全力で抵抗すれば教祖くらい逃がせたんじゃないですか」

 そうだ、彼らは私とは違う。何人もの味方がいて、慕うべき信仰先もいる。屋敷でもここでも一人の私とは違うのに、なんの大きな抵抗もせずに死んでいく彼らのことが理解できなかった。

「知るかぼけ。話しかけるな」

「えーーなんで」

 結局その後も何を話しかけても部下たちは何も答えなかった。そして途中、流石にうるさすぎたのか金髪の彼に激怒されて一度ぶん殴られたのでそれからは黙っておいた。


 




 処刑が終わり、甲板には血溜まりや人間の油が残っていた。このまま染み込んで甲板が腐っていくのではないかという不安が湧いてきた。
 船員たちは処刑された捕虜たちの遺体を海に投げ込む作業を始めた。遺体が水面に落ちる様子は、この船の残酷な実態を物語っていた。

「おら坊ちゃんはまた地下牢戻りだ」

 先ほどから話をしているけむくじゃらの船員が話しかけてきた。
 甲板は血の跡や他の液体が広がり、足を踏み入れたくないような場所になっていた。

「甲板が汚いので抱き上げてください」

「泣き言言ってねぇでさっさと来い!」

 テコでも動かないぞと強く決意した。先ほどはあんなふうに言われたが、自己主張することで自信が少し湧いてきた。私にも普通の感情があるのだ。
 手を挙げて抱き上げろと要求すると、そのヒゲモジャの男は少しでれっとした表情を浮かべ、最終的には私を抱き上げてくれた。

「マジで人使いが荒れぇしマジお貴族様うぜえわ」

 ぐちぐち文句を垂れていたが、ひげもじゃの男は結局地下牢まで送ってくれた。





「ルイスちゃん!!」

 アルバートさんが熱烈に迎え出てくれた。私はモジャデブに頼んで、アルバートさんと同じ牢屋に入れてもらうことにした。
 牢屋に入った途端にアルバートさんは私に抱きついてきた。そしてぱんぱんと背中を叩かれる。少し痛い。

「うわー!無事やったん?あいつに殺されんかったん?」

「うん、まだだったみたい」

 アルバートさんは嬉しそうに笑っていた。そんなにも私のことを心配してくれていたとは、少し照れ臭く感じる。

「よかった、ほんままた一人になったら今度こそ狂うとこやでほんま…」

「狂わないで、いっぱいおしゃべりしよう」

 ここのつまらなさは私もよく把握している。話し相手がいないと狂いそうになるというのは同感だ。アルバートさんは私の手を何度も握りながら嬉しそうに笑っていた。

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