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第一章 追放された召喚師編
第6話 追われていた獣人少女
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「もしかして追われてる?」
僕はそっとフェレスに耳打ちした。近づいてくる連中に対して彼女から怯えを感じる。
するとフェレスがコクッと顎を引き答えてくれた。どうやら予想は当たったようだ。
「ならこっちへ――」
彼女の手を引き一旦その場を離れる。フェレスと一緒に藪に身を潜めることにした。
声は近づいてきているから安易に移動するより一旦やり過ごしたほうがいいと考えた。
「この辺りにいるのは間違いないんだな?」
「森に逃げ込んだのは見たからな」
「あのメス猫が。捕まえたら先ず俺らで愉しむか?」
「馬鹿。商品に傷つけたらお前殺されるぞ」
間もなくして柄の悪いいかにもといった風貌の男たちが姿を見せた。やっぱりフェレスを探しているみたいだ。
追われてるフェレスが悪者という可能性を考えなかったわけじゃないけど、隠れる直前に聞こえていた話し声と目の前で繰り広げられている会話から、その可能性は完全に消え去った。
「あいつらもしかして奴隷商?」
ささやき声でフェレスに確認する。彼女が首肯した。フェレスは獣人。ここプロスクリ王国は人間至上主義なところがあり多種族は差別を受けやすい上、奴隷商人に狙われることも少なくない。
ただフェレスは冒険者だと言っていた。冒険者になると冒険者証が発行されそれが身元証明書の代わりとなる。
そういう意味で冒険者はギルドの保護下にあるという考え方が強い。にも関わらず冒険者であるフェレスを奴隷として捕まえようだなんて僕からしたら正気の沙汰じゃない。
そもそも人間以外を差別する風潮も嫌いなわけだけど。
「向こうを探してみるか――」
フェレスを追っかけてきた連中がこの場所から遠ざかっていく。
「今のうちにここを離れよう」
僕がそう伝えるとフェレスが頷いたので一緒に逆方向に移動した。このまま上手く逃げ切れることを祈る。
どこかで標識を召喚して移動した方がいいかもしれない。頃合いを見て召喚しようかと思っていると、ヒュンッという風切り音がして正面の足元に矢が刺さった。
「見つけたぞ! こっちだ!」
声は上から聞こえた。見上げると丈夫そうな喬木の梢に人の足が見えた。小柄な人物だ。叫んだのもこの人だろう。声からして男だ。
弓を放ったのもこの男か。僕から見て左側の枝葉が激しく揺れた。数人の男たちが姿を見せる。
その中に一人肥えた男が立っていた。他の連中とは様子が異なる。赤いケープを纏いダボッとしたズボン。腰にはオモニエールという小型の鞄が下げられている。貴族であればこういった鞄を自分では持ち歩かない。雰囲気的には商人の可能性が高いと思う。
「手間を掛けさせおってからに。こうやって余計な時間を掛けて探し出すのにも金が掛かるのだぞ。さぁもう悪あがきはやめてさっさとこっちへ来い」
金にがめつそうな男だ。何となくこの男が何者か察しがつくが、念の為確認しておく。
「突然何なのかなお前たちは。この子に何の用があるの?」
「何だこのガキは?」
質問を質問で返された。この男はまるで僕のことが眼中にないようで、今気がついたような態度を見せる。
「わかりませんが、女と一緒に移動してましたぜ」
梢から小柄な男が飛び降りてきた。さっき矢を射って来た男か。
「何者か知らんが関係ないなら引っ込んでることだな。その獣人は奴隷だ。所有権は私にある」
やはりこの男が奴隷商人なようだ。周りを固めているのは金で雇った取り巻きと言ったところだろう。
「奴隷の首輪もないのにそんなこと言われても信じる価値ないよ」
「それは首輪を付ける前にその獣人が逃げ出したからだ」
「そう言われてもね。そもそも彼女は冒険者だ。ギルドにも登録されているだろう? それなのに何故奴隷にされる必要があるのか」
勿論これはフェレスの言ってることが正しければだけど、装備品もしっかりしてるしあの場で冒険者だと嘘を付くメリットもない。
だからフェレスが冒険者だという話には信憑性があると感じている。
「フンッ。その獣人はどうせ自分にとって都合のいいことしか言ってないのだろう」
鼻を鳴らしながら奴隷商人が続ける。
「確かにその女は冒険者だが、とある貴族の荷物を運ぶ依頼を受け失敗した。その結果賠償金が発生し多額の借金を負うことになった。それが支払えないから奴隷堕ちとなったのだ。その上逃亡までしている。借金奴隷としてだけでなく犯罪奴隷としても確定だな」
僕はフェレスに視線を移した。本当かどうか確認する意味もある。
「確かに荷運びの依頼は受けたにゃ。だけどあたし以外にも受けた冒険者はいたにゃ。それに荷物もしっかり引き渡したにゃ! それなのに後になって……」
フェレスが耳を伏せしゅんっとなった。
「フェレスはこう言ってる。他にも冒険者がいたなら彼女一人に責任を負わせるのはおかしな話だ」
「馬鹿が。寧ろそれこそが証拠になる。何せ仕事を受けた冒険者はその獣人の扱いが雑だったから壊れたと後から証言してるのだからな」
「う、嘘にゃ! 荷物は荷車を使ったにゃ! その間あたしも含めて誰も触ってないにゃ!」
「そう言われてもな。全員が証言している」
「何ですぐに確認しなかったんだ」
「何だと?」
この話には正直穴が多い。信憑性に欠ける。
「奴隷堕ちになるぐらいの賠償金が発生する荷物なんでしょう? それなりに高価な物だったんだよね? それなら引き取った時点で確認ぐらいするだろう」
「……たまたま忙しくてそれどころじゃなかったんだろう」
「そんな馬鹿な。そもそも後から証言した冒険者もおかしい。もし本当にフェレスが荷物を乱暴に扱ったなら荷物を引き渡した時点で言うだろうし確認を求めるだろう」
「一々そんな事をするのが面倒だったんだろうさ。冒険者にはがさつな連中も多いからな」
「それなら他の冒険者が傷つけた可能性も高いってことだね。がさつなんだから」
「ぐ、ぐぬぬッ!」
商人が随分と悔しがってる。ただこれで諦めるとは当然思えないわけで――
僕はそっとフェレスに耳打ちした。近づいてくる連中に対して彼女から怯えを感じる。
するとフェレスがコクッと顎を引き答えてくれた。どうやら予想は当たったようだ。
「ならこっちへ――」
彼女の手を引き一旦その場を離れる。フェレスと一緒に藪に身を潜めることにした。
声は近づいてきているから安易に移動するより一旦やり過ごしたほうがいいと考えた。
「この辺りにいるのは間違いないんだな?」
「森に逃げ込んだのは見たからな」
「あのメス猫が。捕まえたら先ず俺らで愉しむか?」
「馬鹿。商品に傷つけたらお前殺されるぞ」
間もなくして柄の悪いいかにもといった風貌の男たちが姿を見せた。やっぱりフェレスを探しているみたいだ。
追われてるフェレスが悪者という可能性を考えなかったわけじゃないけど、隠れる直前に聞こえていた話し声と目の前で繰り広げられている会話から、その可能性は完全に消え去った。
「あいつらもしかして奴隷商?」
ささやき声でフェレスに確認する。彼女が首肯した。フェレスは獣人。ここプロスクリ王国は人間至上主義なところがあり多種族は差別を受けやすい上、奴隷商人に狙われることも少なくない。
ただフェレスは冒険者だと言っていた。冒険者になると冒険者証が発行されそれが身元証明書の代わりとなる。
そういう意味で冒険者はギルドの保護下にあるという考え方が強い。にも関わらず冒険者であるフェレスを奴隷として捕まえようだなんて僕からしたら正気の沙汰じゃない。
そもそも人間以外を差別する風潮も嫌いなわけだけど。
「向こうを探してみるか――」
フェレスを追っかけてきた連中がこの場所から遠ざかっていく。
「今のうちにここを離れよう」
僕がそう伝えるとフェレスが頷いたので一緒に逆方向に移動した。このまま上手く逃げ切れることを祈る。
どこかで標識を召喚して移動した方がいいかもしれない。頃合いを見て召喚しようかと思っていると、ヒュンッという風切り音がして正面の足元に矢が刺さった。
「見つけたぞ! こっちだ!」
声は上から聞こえた。見上げると丈夫そうな喬木の梢に人の足が見えた。小柄な人物だ。叫んだのもこの人だろう。声からして男だ。
弓を放ったのもこの男か。僕から見て左側の枝葉が激しく揺れた。数人の男たちが姿を見せる。
その中に一人肥えた男が立っていた。他の連中とは様子が異なる。赤いケープを纏いダボッとしたズボン。腰にはオモニエールという小型の鞄が下げられている。貴族であればこういった鞄を自分では持ち歩かない。雰囲気的には商人の可能性が高いと思う。
「手間を掛けさせおってからに。こうやって余計な時間を掛けて探し出すのにも金が掛かるのだぞ。さぁもう悪あがきはやめてさっさとこっちへ来い」
金にがめつそうな男だ。何となくこの男が何者か察しがつくが、念の為確認しておく。
「突然何なのかなお前たちは。この子に何の用があるの?」
「何だこのガキは?」
質問を質問で返された。この男はまるで僕のことが眼中にないようで、今気がついたような態度を見せる。
「わかりませんが、女と一緒に移動してましたぜ」
梢から小柄な男が飛び降りてきた。さっき矢を射って来た男か。
「何者か知らんが関係ないなら引っ込んでることだな。その獣人は奴隷だ。所有権は私にある」
やはりこの男が奴隷商人なようだ。周りを固めているのは金で雇った取り巻きと言ったところだろう。
「奴隷の首輪もないのにそんなこと言われても信じる価値ないよ」
「それは首輪を付ける前にその獣人が逃げ出したからだ」
「そう言われてもね。そもそも彼女は冒険者だ。ギルドにも登録されているだろう? それなのに何故奴隷にされる必要があるのか」
勿論これはフェレスの言ってることが正しければだけど、装備品もしっかりしてるしあの場で冒険者だと嘘を付くメリットもない。
だからフェレスが冒険者だという話には信憑性があると感じている。
「フンッ。その獣人はどうせ自分にとって都合のいいことしか言ってないのだろう」
鼻を鳴らしながら奴隷商人が続ける。
「確かにその女は冒険者だが、とある貴族の荷物を運ぶ依頼を受け失敗した。その結果賠償金が発生し多額の借金を負うことになった。それが支払えないから奴隷堕ちとなったのだ。その上逃亡までしている。借金奴隷としてだけでなく犯罪奴隷としても確定だな」
僕はフェレスに視線を移した。本当かどうか確認する意味もある。
「確かに荷運びの依頼は受けたにゃ。だけどあたし以外にも受けた冒険者はいたにゃ。それに荷物もしっかり引き渡したにゃ! それなのに後になって……」
フェレスが耳を伏せしゅんっとなった。
「フェレスはこう言ってる。他にも冒険者がいたなら彼女一人に責任を負わせるのはおかしな話だ」
「馬鹿が。寧ろそれこそが証拠になる。何せ仕事を受けた冒険者はその獣人の扱いが雑だったから壊れたと後から証言してるのだからな」
「う、嘘にゃ! 荷物は荷車を使ったにゃ! その間あたしも含めて誰も触ってないにゃ!」
「そう言われてもな。全員が証言している」
「何ですぐに確認しなかったんだ」
「何だと?」
この話には正直穴が多い。信憑性に欠ける。
「奴隷堕ちになるぐらいの賠償金が発生する荷物なんでしょう? それなりに高価な物だったんだよね? それなら引き取った時点で確認ぐらいするだろう」
「……たまたま忙しくてそれどころじゃなかったんだろう」
「そんな馬鹿な。そもそも後から証言した冒険者もおかしい。もし本当にフェレスが荷物を乱暴に扱ったなら荷物を引き渡した時点で言うだろうし確認を求めるだろう」
「一々そんな事をするのが面倒だったんだろうさ。冒険者にはがさつな連中も多いからな」
「それなら他の冒険者が傷つけた可能性も高いってことだね。がさつなんだから」
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