標識しか召喚出来ない無能と蔑まれ召喚師の里から始末されかけ隣国に逃げ延びましたが、どうやら予想以上に標識の力は凄まじかったようですよ

空地大乃

文字の大きさ
上 下
6 / 47
第一章 追放された召喚師編

第5話 お茶の効果

しおりを挟む
 次の日も午前中に標識で移動した。これでもう里から大分離れた筈だ。僕が里の連中に見つかることもないだろう。

 ある程度進んでから標識を消して徒歩で移動することになる。

「シャァアア!」
「うわっと!」

 途中で蛇に襲われた。この辺りに出る蛇は毒がある。気をつけないといけない。

「標識召喚・危険!」

 召喚したのは黄色くて!マークの描かれた標識だ。正直これがどんな効果かは使ってみないとわからない。

「――ッ!?」

 何が起きるかと思えば、上空から鷹がやってきて蛇を捕まえて飛び去ってしまった。

「うん。確かにこれは蛇にとっては危険か――」

 どうやら何かしら危険な事が起きる標識なようだ。ランダム要素が強そうだけど罠っぽく使えるかもしれない。

 標識で移動もしていたこともあり、魔力が減ってきた感がある。それに喉も乾いた。途中で缶のスポーツドリンクを飲んだ。ペットボトルより量は少なかったけどそれでもそこそこ魔力は回復したと思う。

 空き缶は預かり所にあずけておく。パーキングエリアで捨ててもいいけど、空き缶は変わった素材で出来ている。記憶ではアルミというらしい。これはもしかしたら何かの役に立つかもしれない。

 周囲を見てみると大分森の密度も薄くなってきた。獣の気配も薄れてきたか。このまま行けばもうすぐ森を出れるかも知れない。

 木々をかき分けて行くと開けた場所に出た。そこで僕は見つけてしまった。大樹の幹に背中を預けて座り込んでる女の子を。

 最初はただ休んでいるだけかと思ったけど様子がおかしい。息が荒くてとても苦しそうだ。

「あの、大丈夫ですか?」

 放ってはおけなくて駆け寄った。頭からは猫耳が生えている。癖のある赤毛が特徴の可愛らしい女の子だ。マントを羽織り胸当てをしている。腰にはベルトが巻かれブーメランや短剣が装着されている。

「う、うぅ――」

 苦しげに呻いている。何かあったのかと思い、体を注視すると足首の辺りに何かに噛まれたような痕があった。これは蛇だろうか。

 だとしたら状況的に毒蛇の可能性が高い。熱も出ているだろうか。

 どうしよう――毒だとしても解毒に役立つ薬は持ってないし……。

「はぁ、はぁ、喉が、乾いて――」
  
 虚ろな瞳で少女が呟く。毒で熱があって喉が乾いているのか……。
 
 辛そうだし水分は摂ったほうがいい。毒のことは気がかりだけど先ずは水分を補給してもらおう。

 今あるのは水の入ったペットボトルが二本――そしてもう一本。うん、何となくだけど僕は倒れている少女にお茶を飲まそうと思った。

 預かり所から缶を出す。蓋を開けるのも辛そうだから僕がやる。
 
 飲み口を近づけて上げるとごくごくと喉が鳴った。どうやら飲む力はありそうだ。

 すると少女の目が見開かれ缶を手にとってくれた。僕が手を放すと少女は自分の手で缶を傾けグビグビと中身を飲んでいく。

「ぷはぁ~何にゃこれ! 最初ちょっと苦いかもと思ったけど、さっぱりしてて飲みやすいしグビグビいけるにゃ!」
「えっと、気に入ってもらえたなら良かったけど体は大丈夫?」
「え?」

 少女が目をパチクリさせた後、立ち上がり自分の体を確認し始めた。尻尾が生えていてそれがぴこぴこ揺れている。

「す、すごいにゃこれ! あたし毒蛇に噛まれてもう駄目かもと覚悟していたぐらいなのに。これ君が作ったの? 凄い凄いありがとうにゃ!」

 少女が僕の手を撮ってピョンピョン跳ねて喜びを伝えてきた。何だか可愛らしいけど、手を取られてちょっと照れる。

 でも、彼女の話していたとおりならお茶を飲んで毒が消えたってことだろうか。

 ふともう一つの魂の知識が頭に入り込んでくる。どうやらお茶には解毒作用があるようだ。

 そうか。それでお茶を飲んで毒が消えたんだ。中々凄い効果だと思う。

「本当に助かったにゃ。ありがとう。えっと、そういえば名乗ってなかったにゃ。あたしはフェレスだにゃ!」

 元気を取り戻した少女が自己紹介してくれた。フェレスというのか。この子が家を出て初めて出会った子になる。

「僕はマーク。宜しくね。ところで君はこの森で何を? 仕事とか?」

 この辺りは結構危険な森だ。女の子が一人で入るような場所ではないと思う。

「えっと、実はあたし冒険者をしているんだけどにゃ……」

 僕の質問にフェレスが答えてくれた。冒険者か。そう言われてみれば装備品にそれらしさがある。

「つまり冒険者の仕事でここに?」
「それは――」

 更に質問を重ねてみたけどフェレスはどこか答えにくそうだった。

 するとガサゴソと枝葉の擦れ合う音が聞こえてきた。何か男同士の話し合う声も近づいてくる。

「この辺りにいるはずだ」
「さっさと捕まえて奴隷にしちまうぞ」
 
 会話の内容がわかる位置まで近づいてきてる。何となくフェレスを見てみると怯えているのがわかった。これって――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

異世界で世界樹の精霊と呼ばれてます

空色蜻蛉
ファンタジー
普通の高校生の樹(いつき)は、勇者召喚された友人達に巻き込まれ、異世界へ。 勇者ではない一般人の樹は元の世界に返してくれと訴えるが。 事態は段々怪しい雲行きとなっていく。 実は、樹には自分自身も知らない秘密があった。 異世界の中心である世界樹、その世界樹を守護する、最高位の八枚の翅を持つ精霊だという秘密が。 【重要なお知らせ】 ※書籍2018/6/25発売。書籍化記念に第三部<過去編>を掲載しました。 ※本編第一部・第二部、2017年10月8日に完結済み。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

処理中です...