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第二章 サムジャともふもふ編

第26話 サムジャは子犬を飼う?

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「よし、とりあえず一度一緒に宿に戻るか? その後のことは一緒に考えればいい」
「!? アン! アンアンアンアン!」
「はは、全く甘えん坊だな」

 俺の言葉をある程度理解しているのかな? 嬉しそうに尻尾をパタパタさせてペロペロと舐めてきた。

 さて、一緒に宿に戻る。すると宿の主人が子犬も一緒だったから驚いていた。

「まさか一緒とはな。しかも随分と懐いているじゃないか」
「あぁ、実は――」

 俺は宿の主人に今日のことを伝えたが、それを聞いて更に驚いていた。

「まさかそんなことがな……畜生こんな可愛い子犬をよぉ。しかもそれこいつの飼い主を殺したのと一緒の奴だろう?」

 主人が憤る。そういえば飼い主も通り魔に殺されたんだったな。

 もしかしてこの子犬、主人の仇を取ろうとしたのか? 主人から食べ物をもらってもすぐにどこかへ行っていたのは仇を探すため?

 だとしたら、悲しいな。あれだけの怪我だ相手に一方的にやられたのかもしれない。

「でもよぉ、良かったぜ。本当助けてくれてありがとうな」

 床に座る子犬を撫でながら主人がお礼を言ってきた。

「俺は教会に連れて行っただけさ。命を救ってくれたのは教会のセイラだよ」

 彼女の顔を思い浮かべながら教えた。本当にセイラのおかげで助かったな。

「だとしても、あんたが見つけて連れて行ってくれなかったら今頃こいつの命はなかったと思うぜ。それにこいつだってあんたに感謝してるようだし、だからこそここまで懐いたんだろうしな」
「アンッ!」

 子犬が後ろに回って背中をよじ登ってきた。そして頭の上に前足を置いてアンッと鳴く。その位置が気に入ってるのだろうか?

「それにしても、あの教会にもまだそんな子が残ってたんだな……世の中捨てたもんじゃないな」
 
 うん? 今の一言が妙に気になった。

「教会に何かあるのか?」
「あぁ、そういえばあんたはこの街についてまだ詳しくないんだったな」
 
 そう前置きした後で、主人が教えてくれた。

「以前の教会は責任者が慈悲深い人でな。貧困に喘ぐ住人にも分け隔てなく治療を施し寄付金も善意でくれる人だけから貰うってスタンスだったんだ」
「ふむ、教会としては普通はそうだろうな」

 もっともそれはあくまで建前で実際は寄付金がなければ施しはしないということも多いのが現実だろうが。

「ところが前任の司祭様が突然、逝去されてしまい、その後任としてあのハデルという大神官が選ばれたんだ。だけど元の司祭様とは考え方そのものが違うようでな……庶民より貴族優先で寄付金の優劣で対応を決めるようになっちまった」

 そうだったのか……確かに寄付金で百万ゴッズは高い気もしたがな。危なく死にそうな目にあっていた子犬を助けてくれたから俺としては仕方ないと思って支払ったが。

「教会のセイラは優しい心を持った少女だったよ。それは間違いない」

 誤解を抱かせないようそこはしっかり伝えておかないといけないな。

「そうなんだな……そういう子ばかりならいいんだがなぁ」
「もしかして教会は評判が悪いのか?」
「最悪だな。ただ貴族には重宝されているようだ。元々あの大神官も魔法の腕は司祭より上ということで選ばれたようでな。特に呪いの解除や病の治療に長けているとは聞いていた。そのうえで新しい聖女も呼び寄せてより評判が上がっているらしい」

 その聖女というのがセイラなのだがな……これは言ってよいか迷うな。聖女という天職はかなり珍しい希少な天職だ。そう安々と話していいものではないかもしれない。

「アンッ! アンッ」

 すると子犬が鳴き声を上げ、俺の脚にすり寄ってきた。

「全く甘えん坊だなお前は」
「アンッ! ワウワウ!」
 
 抱えると舌を出して嬉しそうにしている。構って欲しい年頃なのかもしれない。まだ子どもだし。

「ふむ、なぁ今見てて思ったんだが、こいつも随分とあんたに懐いているし、良かったら飼ってやっちゃくれないか?」

 すると宿の主人が俺にそんな話を持ちかけてきた。それについては俺も確認しようと思っていたところだから丁度いいのだが。

「いいのか? 俺もそのつもりはあったが、一応あんたに確認しておこうと思ったんだが」
「全然問題ないぜ! むしろ嬉しいぐらいだ。うちじゃ店の事もあって飼えないしな。それにこいつも前の主人を失ってからここまで人に心を開いたことはない。あんたなら安心して任せられる」

 そうか。確かにこの子も俺を嫌ってる様子はない。なら断る理由もないな。

「わかった責任を持って飼うとしよう。だけど一緒に宿に泊まることになると思うがそれはいいのか?」
「問題ないさ。客がペットを連れてくるのを受け入れるかどうかは宿の自由だからな」

 それなら良かった。もっともこれだけの話をしておいて泊まらせないなんていうわけないとは思ったけど。

「お前は今後も俺と一緒でいいか?」
「アン! アンッ! ワウワウ!」

 両手で抱えあげたまま問うと、尻尾が更に勢いよく振られた。

  ふむ、納得しているというかかなり嬉しそうだし、ならよし、俺がしっかり面倒見るとするかな。
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