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続編・後日談
SS:大学入って半年(後)R
しおりを挟む酒田は、背中を丸め小さくなって俯く慶介にかけるべき言葉を探した。子供を産まなくていいとは言えないので、とりあえず今は漠然とした不安を払拭できるような何かが欲しい。
(まずは、水瀬の伯父さん達の出産経験とかを聞いて、他に男オメガで・・・)
「あ、そうだ。」
野本がもうすぐ安定期だったはずだ。と思いつく。竹林との雑談の中で野本のウェディングパーティが来年に延期されるという話をした記憶も思い出し、スマホのメール履歴を遡り、見つけた。
計算上は4ヶ月以上経っている。問題がなければ安定期だから面会も可能なはず。
早速、竹林に野本の様子をメールで聞いた。
「慶介。野本と一度会ってみないか?多分、今、妊娠4ヶ月くらいなんだ。」
「えっ?もう子供いんのっ?」
「進学しなかったオメガなら、普通だ。」
竹林からの返信は早く、野本のお腹の写真付きで返ってきた。慶介にも画像を見せた。
「・・・これで、妊娠してんの?」
「みたいだな。今、18週って書いてるから、4ヶ月半くらいか。」
酒田も妊娠について勉強していないので、ちょっと太っちゃった~。くらいにしか見えない野本のお腹を見ても妊娠しているように見えなかった。
慶介から不安そうな顔がなくなり、ただただ疑問という顔になっている。顔を見合わせても答えがわかるわけでもないので、素直に感じた疑問を竹林に聞いてみることにした。
<お腹あんまり出てない気がするんだが?>
<男オメガは女性よりもお腹が出ない傾向があるらしいよ。子宮の向きで決まるとからしい。>
竹林の返信に「へぇー。」と酒田と慶介の声が被った。
タイミングが被ったことで顔を見合わせてちょっと笑った。そのあとも慶介のちょっと眉の下がった微笑みが続き、酒田は慶介の表情を分析する。
運命の番である永井なら匂いで感情まで嗅ぎ取れるだろうけど、運命ではない酒田にはそれが出来ない。だから、顔の表情、手先の動き、体全体をつぶさに観察して感情や考えを読み取らねばならない。
慶介の微笑みは作り笑顔か照れた時に出るが、作り笑顔の時には眉は下がらない。慶介の眉が下がるのは困った時だ。そして、困った時の作り笑顔の時の口はワザと歯を見せるくらいに大きく開く。
(作り笑顔で出る緊張感がないから、これは作っていない顔だ。なら、表情のままに受け取るべき。)
困る、照れ。つまりは、不安と恐怖一色だったのが少しは好奇心が湧いたけど、まだ拒絶から忌避感に変わったくらいか?と分析した酒田はさらに不安を取り除くために自分の想いを口にする。
「なぁ、慶介。俺もまだ妊娠と出産については何も知らないから分からないことだらけなんだ。でも、これから勉強するから、慶介の不安なことには答えられるようになるから、俺の子供、産んでくれないか?」
酒田の「俺の子供」という言葉が慶介の体に染み込むように入ってきて、漠然と恐れを感じていた子供というものが「得体のしれない未知なる存在」ではなく、酒田と自分の血の通った絆の1つなのかもしれない。という認識に塗り替えられていく。
動揺で白くなった指先に血が通う頃には、恐れという不安が消えて残ったのは「出産とかよく分かんねぇし、怖い」だけになっていることに気づく。
だったら、知らないことは知ればいい。酒田の言う通り勉強すればいいだけのことだ。
「俺も、一緒に勉強する。」
声がつっかえて掠れた声になって、やたら弱々しい返事になってしまった。慶介としては、結構前向きに捉えられる気がするのに、この言い方ではまだまだ不安があります。みたいな感じになってしまうと、言い直そうとしたら、
「まだ3年先の話だから、徐々にでいい。その時になってもまだ不安だったら1年くらいなら伸ばしてもらえるだろ。慶介が納得するまで無理強いとかはしないから。そこは安心していい。」
と、言われて、先延ばしOKを確保しておきたい気持ちから言い直すつもりだった言葉はコッソリ隠した。
「慶介、もう眠いか?」
「へ?いや、なんで?」
「SNSチェックするのは寝る前の癖だろ?」
スマホを充電し直した酒田が、振り向いて言った。そして、酒田の手が鎖骨から胸鎖乳突筋を伝って耳たぶをクニクニとイジる。
首筋を触られるとつい吐息が漏れてしまい、気分もグングン上がる。前が兆すというより、こう、中が濡れてしまうような感覚がして、ソワソワする。
「・・・酒田は?もう、寝る?」
「まさか。寝れるわけがない。」
項を鷲掴みにするようにして引き寄せられて、舌を入れるキスをされる。
ーーこういう時、手の置き場に困るんだ。
胸元を掴みたくても酒田の服はピチッとインナーだから掴めないし、鍛えた胸筋に爪を立てると酒田が興奮してしまう。腕を掴むと「止めて欲しい」の合図とごっちゃになって酒田がキスを止めてしまう可能性がある。酒田の気分がちょっとずつ上がっていく段階的なものを感じたいのに、良さげな場所が見当たらなくて、いつも、胸にしなだれかかって、押し倒す流れになってしまう。
たまには違う流れにしたい。と、迷って置いたのは酒田の太腿と首の襟足。
首を鷲掴みにされたのをやり返す感じになって、酒田の舌の動きが一瞬止まった。うっすら開けた目が見たのは楽しそうに細めた酒田の目。いつもと違う流れにしたいことが伝わればいいんだけど。と思いながら、普段は閉じる目をうっすらと開けたままにして目で伝えてみる。
すると、酒田は慶介が太腿に置いた手を自分の股間に持っていき、自分の手もそっと重ねる。シゴけということではなく添えていろ。と言うことか?と問いかけの視線を飛ばそうとしたら、項を掴んでいた酒田の手が数センチ下げられて頭を持ち上げそこねた慶介は天井を見る形になる。そこに酒田が上から覆いかぶさるようにキスをして、舌の裏まで舐め回すような濃いキスをしてきた。
少し反応していた酒田のソコがキスと供に硬さを増して、慶介の漏らす息や声にピクンと反応して跳ねるのが解る。興奮しすぎてくると舌を絡めるのを止めてバードキスをして熱を冷ました後、また唇を舐めて口を開けるように促してくる。
慶介は酒田が自分を使って興奮しているのを感じて感動して、「もっと、好きにしていい。」と、心の内だけで酒田を煽る。
背中や胸を撫で回していた酒田の手が尻に向かって、ギュッと握りこまれると、濡れたオメガの部分がクチュと音がした気がした。恥ずかしさで腰をモゾと動かすと、酒田の口が離れて慶介を押し倒した。
「あぁっ、・・・ん、ふっ、・・・んぅ、・・・はぁ、酒田ぁ・・・」
酒田は慶介の体が上へ逃げないように二の腕を掴んでガッチリと固定してから、慶介の尻を太腿でグリグリと押し上げる。押し上げられる度に中が揺さぶられて気持ち良さが腹からジワジワと広がっていく。
酒田の目が慶介を観察しているのが解る。「どんな反応も見逃さない」と、言いたげな真剣な表情に慶介はまるで撮影でもされているかのような恥ずかしさと、もっと自分で興奮して欲しいという欲がでて、ちょっとだけ声を出してみた。演技のつもりが興奮が抑えられなくて「酒田、もう・・・」と言ってしまったら、酒田は完全にスイッチが入る。
「慶介、今日は何回してもいい?」
慶介の上にまたがり、黒いスポーツインナーを脱ぎ捨てて、見下ろす姿は獰猛な熊のよう。
1回じゃ物足りない、最低でも2回戦はしたい、とぼんやりと思ったところで、ふと、回数指定したら「俺はまだイッてない」とか言われて朝までされてしまう。なんてことになったりして?と性欲にトロけた脳に僅かな不安がよぎった。もし、2回と言って、それが慶介の2回だったら、寸止めの快楽責めになる可能性もあると気づき、そんなことをされては体が持たない!と、一生懸命に考えて、回数ではなく時間指定を思いついた。
「2・・・、や、やっぱ1時までっ。」
「わかった、間をとって1時半な。」
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