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続編・後日談
SS:大学入って2年目の夏・R18(前)
しおりを挟む夏の熱さが和らぎ、夜はそこそこ涼しいもののやっぱり寝苦しくてエアコンをつけてしまう夏と秋の境目。
慶介はなかなか寝付けず、何度も寝返りをうっていた。
「・・・慶介、甘い匂いがする。」
酒田が慶介の背中にくっついて来た。
夏は暑苦しい筋肉の塊のような男の体温が心地よく感じられる様になったのはやはり秋が近づいた証拠。寝返りをうって酒田の胸に顔をうずめるのも悪くないと言いたいところだが、今は、ちょっと憚るものがある。
慶介が身を固くしていると、酒田がするりと服の下に手を滑り込ませて来た。腹をを撫でた手が胸を撫でようと上がって来たところで、慶介はその手を捕まえて言った。
「やめろ。やらない。」
「なんで? シたいだろ? 甘い匂いする。」
その通り。慶介は、今、ムラっと来てる。何かきっかけがあるでもなく、なんとなーくしたい気分というやつだ。
酒田は項に鼻を押し付けながら体を撫で、慶介の欲情を煽るように良い所をかすめて爪を引っ掛けたりする。元々うずいていた慶介の体はあっさり乗せられて、前は固くなり下着の中が汗ばんだ。
「やーめーろー、セックスしたいんじゃない。俺はサクッと抜いてサクッと寝たいんだ・・・!」
さっきまではムラムラが収まるのを待とうと思っていたのに酒田のせいで勃ってしまった。でも、セックスがしたいというわけでもない。いわゆる『一発抜いて寝る』がしたい気分だった。
「なら、手伝う。」
「やだ。お前、寸止めするもん。」
「じゃあフェラ。慶介が俺の口を使うだけ。」
「・・・前じゃなくて、中でイキたい・・・。」
「だったらなおさら、俺じゃないと無理じゃないか?」
「だからぁッ、こういう時のためにディルドが欲しいって言ってるんだよ・・・!」
「嫌だ。俺以外のものは入れたくない。」
これは慶介が高校を卒業してから繰り返し要求しても通らない、酒田が認めてくれない唯一のお願い。
慶介が信隆に自分名義のクレジットカードが欲しいと言ったのもこれが理由の1つだった。
元々、オメガの慶介が1人で出歩くことはないので外でする買い物や飲食の代金はだいたい警護についてきているアルファが支払う。家でネットショッピングをする時もクレジットカード決済は家族カードでも出来るので、現代のオメガは自分で財布を持つ必要もないし、自分の銀行口座すらも必要ない。
だが慶介は、親に知られるのが憚られるプライベートな買い物、つまりアダルト系の商品を購入するために自分のクレジットカードを作りたかった。
そして、念願のクレジットを手に入れてアダルトグッズをネットで注文したのだが、思わぬ弊害があった。
こっそり商品を購入しても家で受け取るのは家人である酒田の家令や警護の皆だったのだ。しかも、届いた箱は誰のものであろうと開封され、盗聴器などが仕込まれていないかが確認される。『俺宛ての箱は開けないで!』などという要求は通らず、プライバシーなど存在しなかった。
そのため、慶介の秘密の買い物は即刻、酒田にバレてアダルトグッズは没収、廃棄された。
酒田はアダルトグッズの使用に強い拒絶を示した。
『アダルトグッズの使用は絶対に許さない。浮気認定する。』
『1人でしたい時もあるだろ!』
『道具を使わない自慰行為まで咎めはしない。』
『なら、酒田もオナホ禁止だからなッ!』
『わかった。元より興味ないけどな。』
『ぐぅッ・・・!』
それでもコッソリと購入しようと過去3回挑戦したが全て見抜かれて捨てられてしまった。そのうちの1回は恥を偲んで水瀬に購入を依頼し、アルファだけが出来るコンビニ受け取りをして商品をゲットしたのに、部屋の中に隠した段階で酒田に目ざとく見つけられ捨てられた。
酒田が咎めないと言った自慰行為も、中の疼きを指で収めるのは難しい。
男オメガの膣部を満たすには最低でも10cmの長さが必要で、入口までの長さは8cm程度と言われている。この数字は男オメガの平均なので慶介は体の大きさに比例してより長さがあると思われる。なにせ8cmある慶介の指では膣部の入口を撫でることも出来ないのだ。
過去に一度、太いマーカーペンを使ってオナニーをしたところ、うっかり中に入って取れなくなって大慌てという失敗経験から、その辺の道具を代用することもできなくなった。そのため、中がうずいた時はただただ熱が収まるのを待つしかないのである。
そうして今日も熱が収まるのを待っていたのに、酒田は慶介の努力を水の泡にしてしまった。
勃ってしまった前を隠そうと膝をクロスさせた慶介の動きに気づいた酒田は、手を太ももの間に滑り込ませ竿の方ではなく男の急所の方を揉んできた。生殖機能がほぼないオメガでも急所を掴まれると本能的に動けなくなってしまう。慶介の注意が緩んだ隙に酒田のもう一つの手が慶介の胸の先をキュッと摘んだ。
「あ、んぅ・・・ぁ、やめ、・・・ッだぁーー!! やめろ! 離せ! 触るな! もう、寝るっ!」
ジタバタと暴れて、クイーンサイズベッドを転がり端っこまで逃げて、夏用の薄い羽毛布団を頭まで引っ被った。
薄くとも布一枚で作られた布団の中は独特の無音空間。少しの沈黙のあと、ベッドが揺れて酒田がゆっくりと近づいてくるのが分かった。クンと布団を引っ張られたけど、慶介が固く握っていたので布団は剥がれそうにないとふんだらしい酒田は掛け布団ごと慶介を抱きしめて、腰の固くなったものを押し付けてきた。
「慶介・・・、したい」
「やだ。絶対しない。」
「頼む。棒に徹する、動かないって約束するから。」
「気分じゃねぇもん。」
「・・・俺は慶介の中に入りたい・・・」
することになったのは結局のところ、慶介は酒田に甘く、酒田の性格が基本粘り強いため。なので夜の交渉事は酒田の意見が通りがち。
酒田が棒に徹するのなら慶介が選べる体位は騎乗位しかない。ちゃっちゃと済ませるのだからと慶介は下だけ脱いだのだが、酒田は全裸になって慶介のTシャツも全て脱がせてしまった。
すでにガチガチに固くなった酒田はスタンバイOK状態。慶介も自分の後ろの穴に指を入れて濡れ具合を確かめたが、今日はまだ足りない。周りを見渡してローションを探したけど見当たらなかった。いつもは酒田がドロドロになるまで前戯をしてくれるし、ローションを使うとしても酒田が用意するので慶介はある場所も知らない。
自分の指で濡らすのも、ローションを探すのも、まどろっこしくて慶介は酒田の棒をパクっと咥えた。
「はっ、う・・・、慶介っ・・・」
ローションが見つからないのなら、手っ取り早くフェラで棒の方を唾液で塗らせて挿れてしまおうと考えた。
頭を撫でてきた酒田の手を「触んな」と手で払い除けて、喉にこすらせるように深く飲み込む。
フェラは酒田の方が圧倒的に回数も技量も上だが、慶介も負けてはいないと思う。フェラはヒート中はご奉仕を受けてばかりの慶介でも出来るお返しだから、普通に頑張るし酒田も褒めてくれるので上達しているはず。ただ、比較対象はいないし確認するすべはない。今までもこれからも慶介が知るのは酒田だけだ。
そんなフェラも今日はおざなりに済ませる。唾液をまとわせたらすぐに喉の奥まで飲み込んだ。まだ慣れていないから喉に当たるとえずきたくなるけど、今は粘性が高い唾液が欲しいので少しだけ我慢。何度か頭を上下させて竿全体がヌルついてきたらパッと口からだした。
口の中が気持ちよかったと訴えてビビッと揺れる肉棒を突き上げたい気持ちを押さえつけるために、酒田は歯を食いしばり堪える顔を一瞬見せた。その顔に「してやったぜ」とやり返しが出来たことにちょっと満足した。
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