【改稿版】それでも…

雫喰 B

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45. 幼馴染み

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    僕は彼女が好きだった。幼い頃から…。

    だから、彼女が何をしてたか知っていた。だから、利用されていただけだったとしても…それでもいいと思った。

    気が弱くて、なよなよしてて女みたいだと、悪ガキ達から小突かれ、虐められていた僕の事を、いつも気に掛けてくれていたのは彼女だけだったから…。

    実の両親ですら、気が弱くておどおどして、人の顔色ばかり気にして、ビクビクしている僕に腹を立てるだけだったのに…。

    彼女はいつも優しくて、「嫌な事は嫌って言っていい。」「イアンは何も悪くない。」だから、悪ガキ達にされた事に対して、もっと怒ってもいいって言ってくれた。

    そう言った彼は悲しそうだった。そして、自分が何を間違えたのか、今なら分かると寂しそうに言った。

    彼に同情するつもりは無い。無いが、何だか遣りきれない思いがした。

    彼の口から聞いた話が信じられなかった。

    でも、さっき聞いた彼の言葉に、本当の事だったと分かった時に、に対して言い知れない恐怖を感じた。

    ふと、同じ“雑草”の中で、暗殺部隊に属している同僚が思い浮かんだ。
    彼も彼女と同じだったのだろうか?

    そして、その同僚に、ある指令を出した。
勿論、「嫌ならば断ってもいい。」と付け加えて。

    
    そして今、彼は相棒と共にヤコブ村にいて彼女達の幼馴染みの内の一人、イアンに話を聞いていたのだった。

~~~~~

    彼らが村に到着した時、既に事件が起きた後で、村にはリーゼロッテの妹シャロンは、その姿を消していた。

    村人達の話だと、養父母の村長夫妻が亡くなり、何日か前に家出した姉を追いかけて行ったという事だった。

    村の大人達から話を聞き終わり、姉妹と接点があったと思われる子供達に話を聞いていくうちに、何だか嫌な予感がした。

    そして、最後に話を聞く事になったのが彼…。イアンだった。

    最初の方は、他愛も無い世間話をして、自分達を相手に話をするのに慣れてきたら、姉妹の話をするように誘導していく。

    すると、この村で姉妹の事情に一番詳しいのが彼だと分かった。
    恐らく、養父母と同じか、それ以上に詳しいのではないか…?とは相棒の言だ。

    だが、話を聞くに従って、その内容が不穏当な物へと変わっていく。
    報告書で知った姉妹像と、どんどんかけ離れていった。            

    そのうち、自分が知っている報告書の姉妹と彼の話、どちらが本当の姉妹なのか…わからなくなっていく。

    そんな俺を余所に、相棒の顔付きが険しくなっていった。
    俺は不安に駆られた。

「マーカス、何かあるのか?」
「…いや…俺の気の所為ならいいんだが…。」

    眉間に皺を寄せて言う彼を見て、不安が的中したと悟る。

「マジかよ…。」

    思わず呟いた俺の言葉にイアンが反応した。

「何です?」
「イアンだっけ?お前にも一緒に来てもらわないと…。おい、タークス、戻るぞ。」
「何だよ…まさか、そうなのか?」
「あぁ、類友だな…。」

   マーカスは底意地の悪い笑顔を俺に向けて、そう言った。

    『勘弁してくれよ。』と心の中だけで言うと、警備隊の騎士に、イアンの家族へ伝言を頼んだ。

「姉妹を村長夫妻の養子にする時に、その後見人になったローランドに事情を説明させる為にイアンを、領都に連れて行く。」と。

~~~~~

    俺達三人は馬を走らせ、男だけだから野営をしながら先を急いだ。

    長い間マーカスの相棒をしていたから分かるのだが、俺の眼には彼が焦っているように見えた。
    「それだけ事態が深刻だという事か。」と、独り言ちた。

    そして、先を急いだ甲斐があって、丸三日で領邸に着いた。
    野営している時に纏めた報告書を、家令に預け、お嬢様達のいる別荘へと急いだ。

    領邸に寄らずに別荘へ直行していれば、結果が違ったのだろうか?
  
    俺が考えていた事が分かったのか、その時のマーカスは、結果は同じだったと思う。と苦々しく言ったのだ。

    別荘へ直行するルートは道が悪く、走りなれた者なら間に合ったかもしれないが、イアンを連れていた俺達は、彼の安全を考えたら、領都から行ってもそれ程時間は変わらなかったのだ。

    けれど、もしかしたら…。という思いが頭から離れない。
    端から見ていれば、無表情にしか見えない相棒は、まるで自分に言い聞かせているようだった。

    そんな相棒の横顔を見ながら、『こいつは、これまでどれだけの思いと、折り合いをつけてきたのだろうか?』と、考えた。

    けど、今までもそうだったように、いくら考えてみても俺には想像がつかなかった。

    それをそのまま言ったら、「当たり前だ。」と笑われた。

    でも、その後のマーカスの何とも言えない表情を、俺は一生忘れる事など出来ないという事だけはわかったのだった。


    







    
    

    



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