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# 夏

二人きり⑤

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 戸部君と二人で施術なんて。
 入来ちゃんには申し訳ないけど、これが同じチームの定めということか。
 変に意識すると、戸部君にまでよそよそしくなってしまう。
 あくまでも自然体で、無駄な気を使わないように。
 今日は珍しく私が施術をする番で、戸部君が足を貸す係。

「ナオちゃん、思いっきりやってね!」

「そんな力を入れてやるもんじゃないでしょ。えーと、呼吸器系の反射区は……」

 土踏まずの上あたりの広いエリアを、優しく刺激していく。
 ここら辺は気管だったり肺だったり、呼吸に関わる部位が反射している。

「うーん、気持ちいいなぁ。ナオちゃん腕が上がったねぇ」
 
 戸部君の、冗談なのか本音なのかわからない発言には、苦笑いで返すしかない。
 自分では少しずつリフレクソロジーが上達してきたと思っているけど、実際は戸部君たちに比べたらまだまだ。
 こんなんじゃ、ユウキに温もりを伝えることなんてできない。
 実際にユウキにやるようにイメージして……。


「早野さん」
 
 
 完全に自分の世界に入っていると、無理やり現実世界に引き戻すように、先生が後ろから声をかける。

「は、はい!?」

「いや、指の動きはいいんだけど、爪が気になるのよね」

「爪……ですか?」

 爪は毎日短く切っているけど、一体何が気になるのだろう。
 リフレクソロジストが爪を手入れするのは、初歩中の初歩。
 そんな当たり前のこともできていないってことなのか。
 
 何だか悪い気がしてきて、か細い声で謝ってしまった。
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