お姉様から奪った結婚ですので泣き言なんて洩らせません!

希猫 ゆうみ

文字の大きさ
4 / 26

しおりを挟む
「エディ」

姉が口を開いた。
静かに呼び掛けるその声には、まだ理性があった。

「私をきっかけにしてノーラを選ぶなら、もっと視野を広げたら?」
「は?」

何を言い出すのか。
私は開いた口が塞がらず、暫く呆然と姉を見つめた。

どういう負け惜しみ?

「あなたの怒りは尤もだ」
「怒って言っているわけじゃないのよ」
「僕が全面的に悪い!それはわかっている」
「落ち着いて」
「その上でお願いしているのです。あなたに許して欲しい。あなたの許しがなければ、僕たちの結婚生活にはずっとしこりが残ってしまう。お願いだ。お願いします、イーリス。僕に、愛する人生を許してください」

エディの真剣さは私に心地よい感動を返してくれた。

そうだ。
余計な口を挟まないでほしい。

姉は捨てられたのだ。
捨てられた女の分際で、どうして上から物申せるのだろうか。

まったく高慢で嫌になる。
世界はお前のためにあるわけじゃないと耳元で叫んでやりたい。

「ノーラ」

エディが私を呼んだ。

「はい」

私は可愛い返事をしてから立ち上がり、席を離れ、エディの傍に立った。
そして手を繋いだ!

「本当に申し訳ない。心からの謝罪をしたかった。イーリス。僕たちはあなたの幸せを祈りたい。だからどうか、僕たちを恨まず、僕を、解放してほしい」

私への愛を証明するために頭を下げるエディの傍で、私は勝利に酔い痴れ姉を眺めた。

姉はまだ無言でエディを凝視している。
その表情がどれだけ不気味かわかっていないのは世界で姉一人だけだ。

暫く沈黙が続いた。
沈黙を破ったのはノルドマン伯爵夫人ティルダ、私の義母になる人だった。

「まあ、いいじゃない。ノーラの方が可愛いし、エディとも気が合うんだから」

義母からの最後通告!
これにはさすがの姉も一瞬だけ顔色を変えた。

「難しく考えないで?イーリス。結婚が駄目になったといって一生会えないわけではないのよ?だけどノルドマン伯爵家に相応しいのはやっぱりノーラの方なのよ。若い頃って勘違いもするでしょう?エディもそう。一生の相手だもの、過ちに気づいたなら正しい道を選ばなくちゃ。結婚ってそれはそれは大事なことなんだから」

ティルダは私の味方。
義母となる伯爵夫人からのお墨付きを得ているのは、美しい私のほうだった。

やっと現実に気づいた姉がうっすらと微笑んだのを見て、私はぞっとした。
そもそも婚約者から捨てられる立場でありながら、悲しむ素振り一つ見せない姉は異常だ。

愛情深く心優しいエディが姉のような将来確定枯木婆と結婚してしまったら、どれだけ傷ついただろう。どれだけ不幸になっただろう。

姉は誰かに愛を注ぐなど到底できない人間だ。
神を敬い正しく生きろとしか言わない冷たい人間だ。

愛の精霊が悪者を倒し、私とエディを導いてくれた。

これは愛の勝利。
簡単な話。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?

ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十周年。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。 ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。 しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。 それを指示したのは、妹であるエライザであった。 姉が幸せになることを憎んだのだ。 容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、 顔が醜いことから蔑まされてきた自分。 やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。 しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。 幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。 もう二度と死なない。 そう、心に決めて。

(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?

青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。 けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの? 中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。

[完結]だってあなたが望んだことでしょう?

青空一夏
恋愛
マールバラ王国には王家の血をひくオルグレーン公爵家の二人の姉妹がいる。幼いころから、妹マデリーンは姉アンジェリーナのドレスにわざとジュースをこぼして汚したり、意地悪をされたと嘘をついて両親に小言を言わせて楽しんでいた。 アンジェリーナの生真面目な性格をけなし、勤勉で努力家な姉を本の虫とからかう。妹は金髪碧眼の愛らしい容姿。天使のような無邪気な微笑みで親を味方につけるのが得意だった。姉は栗色の髪と緑の瞳で一見すると妹よりは派手ではないが清楚で繊細な美しさをもち、知性あふれる美貌だ。 やがて、マールバラ王国の王太子妃に二人が候補にあがり、天使のような愛らしい自分がふさわしいと、妹は自分がなると主張。しかし、膨大な王太子妃教育に我慢ができず、姉に代わってと頼むのだがーー

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

【完結】愛しい人、妹が好きなら私は身を引きます。

王冠
恋愛
幼馴染のリュダールと八年前に婚約したティアラ。 友達の延長線だと思っていたけど、それは恋に変化した。 仲睦まじく過ごし、未来を描いて日々幸せに暮らしていた矢先、リュダールと妹のアリーシャの密会現場を発見してしまい…。 書きながらなので、亀更新です。 どうにか完結に持って行きたい。 ゆるふわ設定につき、我慢がならない場合はそっとページをお閉じ下さい。

処理中です...