【完結】夢魔の花嫁

月城砂雪

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第三章(出産編)

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 まるでお城のようだと、そう思ってしまうほどに至る所が広く美しいこの館は、その実彼の一族が無数に所有する、別宅の一つでしかないと言う。彼と、彼の一族が住まう屋敷はここよりもずっと広大で、花嫁のために新しい部屋を作っているところだと。いつかの睦言の狭間に囁かれたことを思い出しながら、ジュゼは妖魔と荒淫の日々を過ごした寝台に横たわった。
 部屋を出た時にはドロドロになっていたはずの寝台はいつの間にか綺麗になっていて、さらさらとした肌触りの真新しい黒いシーツに覆われている。紗の帳が天蓋から下がる豪奢な寝台の中はまるで別世界で、紗の布を押さえる銀細工はお伽噺の星々のように美しかった。
 なだらかに膨らんだ腹部を無意識にも庇うように背を丸めて、赤子を万が一にも潰すまいとするジュゼの仕草に愛しさの籠った眼差しを注ぐと、妖魔は官能に溺れたままの小柄な身体を側臥位に整える。蕩けるような快楽ばかりをもたらす美しい指が肌に触れるだけで、すぐに気持ちよくなってしまうジュゼはそれだけの接触にも耐えられずにひくひくと身をよじり、熱く潤んだ吐息を漏らした。

(――きっと、今から)

 自分はいよいよ、悪魔の赤ちゃんを産むのだと。未知の不安に震える小さな体を背後から抱き締めるようにして、自らもまた寝台に横になったレーヴェは、長い手足をジュゼの身体に絡ませながら熱の籠った囁きを吹き込んだ。

「可愛いジュゼ、私の伴侶。今から、一人目の子を、一緒に迎えてあげましょうね」
「む、むかえ……」

 何をすればいいのか解らないジュゼが、不安そうな声で繰り返す。
 教会で子を産む女性も、時にはいた。農家で羊や馬のお産の手伝いをしたこともある。けれど、子供のジュゼに出来ることは少なかった。精々お湯を沸かすか、手ぬぐいを運ぶか、その程度のことしかしたことがない。まして産むのが自分で、産まれるのが悪魔の子供とあらば、どうすれば正解なのかの見当もつかなかった。
 戸惑うジュゼの身体に指を這わせながら、どこか高揚した様子で、美しい悪魔はくすくすと楽しげに囁き笑う。艶めかしく肌を滑った指が、きゅう、と。淫らな証の刻まれた腹を柔く抑えつけた。

「こちらから、お部屋を開いて。赤ちゃんを外に出してあげるんですよ」
「ひゃ……っ⁉」

 赤ちゃんに刺激が過ぎるからと、あまり嬲られることのなかったその場所に、不意打ちのように触れられて。全身の性感帯が連動してざわめく感覚に、ジュゼが脚をバタつかせる。妖魔の力強い脚に絡みつかれたままでは、快楽を紛らわせる助けにもならず、抗い難い性衝動に足をピンと伸ばして喉を逸らしたジュゼの首筋に、生暖かい吐息が触れた。

「ふあぁっ♡ イっ、イっちゃ……‼」

 頼りない首筋に強く吸い付かれれば、執着と所有の証を肌に刻まれる悦びに身体が打ち震える。今は何も咥えていない尻穴がねだるようにうごめいて、その生々しいうねりが生む官能に喘いだ身体を強く抱き寄せられて視界が眩んだ。ぬちゅりと粘った音を立てて、いやらしく濡れた肉の蛇がジュゼの尻に潜り込み、隘路を割り開いて一息に最奥まで浸食する。

「~~~っ‼♡♡♡」

 丹念に重ねられた性交で、極限まで高められていた肉膣を、突然、滾るペニスに蹂躙された雌がどうなるか。そんな分かり切った問いの答え合わせをさせられたジュゼは、声も出せない絶頂に大きく仰け反った。
 精を吐き出せない未成熟なペニスから、透明なばかりの愛液が迸る。ぐちゃぐちゃに摩擦され、掻き回され、ぽってりと腫れた性感帯と、蕩けた粘膜。夢魔の体液を、もう一生取り返しがつかないくらいに塗り込まれたその場所は、すっかり雄の与える快楽に陥落していた。体内に突き込まれたその衝撃だけで、何度も背中がぞくぞくして、紅潮した肌に鳥肌が立つ。身を捩ってもがく身体に絡みついた手足を締め付けるようにして抱かれると、外でも内でも雄の力強い性を感じて、たまらない衝動が込み上げたジュゼが獣の嬌声を上げた。

「あお♡ おぉ~~~♡♡♡」
「っん♡ ふふ、まだ入れただけですよ、ジュゼ」

 あなたが善がってくれるのは嬉しいことですが、と。耳元で甘く囁いたレーヴェが、深い結合を保てるように腹部に腕を回して引き寄せながら、ゆっくりと腰を回して肉膣の粘膜を大きく捏ねた。
 あまりにも快楽が過ぎて、この三か月の記憶は飛び飛びだが。レーヴェは全体的に、ゆったりとした性行為を好んでいる気がする。ジュゼの身体を存分にとろとろにしてから、弱い部分をねっとりと擦り上げるような。奥を激しく突かれての絶頂とはまた別種の、ゆっくりと駆け上るような絶頂が何分も何時間も続くようなセックス。これをされると、ジュゼは毎回頭がぐちゃぐちゃになって、たっぷりと時間をかけて気絶するまでイかされてしまうのだった。
 しかも今日は、いつも以上に念入りにとろとろに蕩かされた体だ。もう知り尽くされた弱点もカリでこそがれるようにぐりぐりと抉られ、ジュゼは開始数分にして既に、いつイっているのかも解らない快楽の坩堝に叩き堕とされていた。

「――あああ~~~‼ あっ、ああ~~~っ♡♡♡」

 ぷくりと膨れた白い胎は、淫らな文様が汗と潮に濡れてますますいやらしい。びくんびくんと痙攣する体を抱き潰しながら、レーヴェはジュゼの耳に舌を這わせ、淫らな文様を揉み込み、雌の快楽に酔って頭を垂れた可愛らしいペニスにそっと指先を触れさせた。
 散々吐き出した潮と愛液に濡れ光るそれに指を添わせるように優しく撫で擦られ、ぐちゃぐちゃと水音を立てながら何度も揉み込まれて目の前が真っ白になる。

「ふぐぅ♡ あ、ああ~~~♡♡♡ らめ、あ、にぎっちゃ♡ ふぁっ! あぁんっ♡」

 尻には滾る男根を深く咥え込んだまま、芯が通らないまま健気に勃起した柔らかいままのペニスをむにむにと揉み潰され、ジュゼは絶叫と共に果てた。自身が精を吐き出す側の性であることを忘れそうな日々の中、未だ精通を迎えられないペニスからは透明な液体が飛び散るばかりで。それでも内と外、両方から迸る堪らない性感に、喉を逸らして絶頂する。
 縋るものを探してもがいた手が、ジュゼを抱き留める力強い腕に気付いて甘え絡んだ。きゅう、と。弱々しい力で抱き着きながら、自ら腰を揺らして尻を押し付けてくるジュゼの可愛らしい痴態に満ち足りたように笑ったレーヴェが、首を振り向かせて唇に深く口付ける。
 不自然な捻りに苦しい息を漏らしながら、必死に舌を絡め返して甘えるジュゼが縋り付く腕を微かに持ち上げると、レーヴェは赤く実った乳首を強めに嬲った。
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