上 下
161 / 166
魔国編

34 穢が生まれる前へ

しおりを挟む

身体へと巡らせた神力を掌へと集め終わった私は瞼を開け自身の前に来た穢を見つめた

… 全ての神力が掌に集まったな …
「これ、で…あとは如何すればいいの…?」
… その穢を封じた結界を包むように神力を纏わせ時を巻き戻す …
「分かったわ」
… だか、時の子一人では無理だろう我も力を貸す …
「うん。ありがとう」

私が結界に向け神力で穢を纏わせるようにしている両方の掌に後ろから手を重ねタイクロノスの時の魔力、神力を纏わせていく
私は結界の中の穢へと混ぜ合わせた神力を送り徐々に時を巻き戻していく
その時に見える光景、映像はとても……見れるものでは無かった



ーーーーー

「『あー、これであの女達を殺すことができる !! そしてあの女が大切にしていたこの樹を穢し腐り朽ちてしまえばきっとあの方も私の前に現れてくれるはずよ !! アハ、アハハハハ !!』」

世界樹の前で視点が合わない女神の衣装を着たナナミの姿

「『いやねぇ、こんな世界…私の思い通りに全て動かないなんて…、こんな世界は消えればいいのよ』」

空中に浮き世界樹の近くにある小さな村を見つめ、女神の衣装を纏っているナナミの身体から湧き出て来る黒い靄…

「『アハハハハ、全て穢朽ちてしまえ !!』」

そう笑い、黒い靄が村や木々、人や家畜にまとわりつき徐々に黒く穢れていき魔獣へと成り果てていく

「『この世界の全ては私のモノ、穢し穢れ朽ちて消えるのよ』」

そう言って業火の中何も熱さを感じないと笑い消えていくナナミの姿


『力を貸してやろう、その代わり私はその身体を貰うわ』

世界樹の森で業火に包まれながら燃えるナナミに妖艶に笑い近付き手を差し伸べる女神の姿

『あの女はどこへ行くつもりなの ?? このマナは……あの女あの、女ァァァ !! 自分の創り上げた世界に戻るつもりね !!赦さないわ !! あの女が元の力を取り戻すなんて !! 許さないわよ !!』

そう叫び、サキ達が飛び込んでいく空間の狭間、ひずみへと怒り狂い歪みきった形相で追いかけていく女神の姿

『なぜ、あの女は死なないよぉ !!』

そう叫び、遺跡の中で大きな魔獣と戦うサキとカイルを睨みつけ魔獣へと穢れた神力を送る女神の姿…


ーーーーー

神力を使い穢を巻き戻す度、女神が今まで行ってきた事を女神の視点で見えていく…
次第に自身がマリアンではなくあの女神なのかと思えてしまうほど、私は長く感じるその巻き戻しを止めずにしていく…

「リア !!」

私が私、マリアンだと思考を戻されるのは、リオンがそう声をかけてくれるからだろう…
リオンがいなかったら私は今頃、この過去の出来事に囚われ穢れていき女神の穢れに吸収されてしまっているかもしれない…

「リア !! もう止めろ !!」

そう声をかけてくれるリオンに意識を引き戻され時を巻き戻す力を更に込め再び続け巻き戻し進めていく
リオンはきっともう動けるようになっているはず…
でも、近づけないのはきっとこの神力と四神獣の力、穢れの渦巻く場所へ近寄れないのだろう…

「リア !!」

この世界を守りたい、お父様やお母様、私の大切な人や場所が存在するこの世界を守りたい
私は、リオンが産まれ生きた、これから生き続けるこの世界を守りたい

「リア !!」

口の端から何かが流れた気がした…
それが鉄の臭がすることから血が口から出たのだと分かる。
それでもやめることなんてできない私は時間の巻き戻しを続けた
脚の力がだんだんと入らず崩れそうになるのをタイクロノスが支えてくれる
息が乱れタイクロノスも辛そうな事が分かる。このままでは私だけでは無くタイクロノスも…
そう思った時、私は頭に流れて来ていた女神の映像が消えた
時の巻き戻しは続けているのになぜ ?? と瞼を上げ見ると私とは反対の方にサキとキール様が立ち結界に神力を注いでいるのが見えた

「『もぅ大丈夫、少ししかない私の力ですが貴女の負担は減らせるでしょう』」
「サキの事は私が守りますからマリアン嬢は気にしないでください」
「サキ…キール様」
「『ですが、私の力だけでは保たない』」
「私がなんとかします」
「『タイクロノス』」
… はい、創造神ミール様 …
「『残りの世界樹の力を使い向こうの世界樹と繋ぎます』」
… 分かりました …
「『私は精神体となり力を使う事になるわ』」
… はい …
「その間、少し力を貸してほしいの」

サキの口で顔で目で…そう話しかけるサキの中に眠っていた女神、否、創造神ミール
タイクロノスは私の顔を見つめ一瞬だけ掌に力を込め小さく呟いた

… 暫し離れることになる、その間辛くなるだろうがなんとか持ちこたえるんだ時の子よ …

その言葉に自信など1ミリもないけれど…
私は頷き返事した

「大丈夫よ…私は守る人がいるから」

しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。 女神『はい、あなた、転生ね』 雪『へっ?』 これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。 雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』 無事に完結しました! 続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。 よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです

斎藤樹
恋愛
事故で盲目となってしまったローナだったが、その時の衝撃によって自分の前世を思い出した。 思い出してみてわかったのは、自分が転生してしまったここが乙女ゲームの世界だということ。 さらに転生した人物は、"ラスボス令嬢"と呼ばれた性悪な登場人物、ローナ・リーヴェ。 彼女に待ち受けるのは、嫉妬に狂った末に起こる"断罪劇"。 そんなの絶対に嫌! というかそもそも私は、ローナが性悪になる原因の王太子との婚約破棄なんかどうだっていい! 私が好きなのは、幼馴染の彼なのだから。 ということで、どうやら既にローナの事を悪く思ってない幼馴染と甘酸っぱい青春を始めようと思ったのだけどーー あ、あれ?なんでまだ王子様との婚約が破棄されてないの? ゲームじゃ兄との関係って最悪じゃなかったっけ? この年下男子が出てくるのだいぶ先じゃなかった? なんかやけにこの人、私に構ってくるような……というか。 なんか……幼馴染、ヤンデる…………? 「カクヨム」様にて同名義で投稿しております。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?

もふきゅな
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。 王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト 悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

処理中です...