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獣国編
42 雷の洞窟 ①
しおりを挟む「これが開発した新しい魔道具アクアベールだ」
そう言ってリョダリが渡してくれた魔道具はアクアマリンのピアスだった。
「ピアス ?」
「戦闘してるときにペンダントやブローチだと落ちる可能性や、指輪だと武器を持ってるときに邪魔と感じる可能性もある、まぁ…結婚指輪以外基本はつけたくないだろう ?」
「あ…そっか」
「それにリオンが作ったんじゃなくて私が作ったやつだし余計にまずいだろう」
苦笑しながらも助言してくれるリョダリに嬉しさが込み上がってくる。
あの後私達は作戦や準備などの話し合いをし、リョダリが帯電対策の魔道具が出来次第出発することになった。
その魔道具が無事完成したということで今受け取っているのだ。全員分受け取った私達は今から雷の洞窟へ旅立つことに決めた。
「それでまた」
「ああ、洞窟の後はここに戻るのか ?」
「他の精霊の情報がありましたらそちらに向かう予定です」
「というわけなの」
「何かあったらケタイに連絡してくれると嬉しく思う」
「はい。リョダリも何かあったら連絡してね ?」
「ああ、リオンに連絡するよ」
「世話になった」
「それではまた、失礼いたします」
「セバスさん、マリーとリオンをよろしく頼むよ」
「勿論です」
そう言ってふと微笑んだセバスさんをリョダリは満足そうに頷いた。
ここまでしか見送れないからと王宮の門前まで見送ってくれたリョダリに背を向けて私達は王都を出ていった。
さわさわと心地よい風がそよぎ草原にある草花を揺らしていく…そんな周りの音風景を楽しみながら私達は雷の洞窟へと向かった。
時々狼型の魔獣やスライムも現れさくさくと倒しながら進んでいく。
日が暮れれば野営をし王都を旅だってから数日たった頃ようやく雷の洞窟にたどり着いた。
一歩足を踏み入れた瞬間そこからビリビリと足に痺れがはしる…
「これは…かなり強いですね」
「リョダリの魔道具がなければ入れないな」
「シルフとノームの力では無理だったでしょう」
「ピアスに魔力を注いで見ましょう」
「そうだな」
「この魔道具の改善点等あれば教えてほしいそうです」
「確認するには今回ちょうど良かったのかもしれませんね」
「リョダリったら…ふふ」
ピアスに魔力を注げば薄い幕のようなベールが全身を覆う、ひんやりと少し涼しく感じるのは水の属性だからだろう。
改善点等の報告を求めるのは完璧をやや求める日本人魂のせいだろう。そう思うと笑ってしまった。
王宮のリョダリの離宮にいる時、リオンがいないのを見計らって一回リョダリが会いに来たことがあった。
「雪さんは溺愛されてるね」
「うん…」
「雪って呼ぶなと怒られたよ、あのリオンに」
「ええ !?」
「あの誰にも興味がないって感じだったリオンが…ほんとに驚いた」
「ふふ、うん」
「同郷が幸せそうで良かった」
「ありがとう」
「式を挙げてないと聞いた。もし挙げるなら言ってくれ、前世の記憶をフルに活かした結婚式にしてやる」
「ぷっふふふ…それは楽しみね !! ゴンドラとか頼もうかなぁー」
「リオンが全力で嫌がりそうだがそれも楽しそうだな」
「打ち合わせ時に破壊されそう !!」
「本番当日まで黙っとけばいいさ、指定位地として二人で立った所を吊り上げる」
「ええー(笑)」
こんな話をして盛り上がった。一人でも見方の同郷がいるだけで心が安らぎ落ち着く…リオンとは違う安らぎだけど楽しかったなあー
そんな風に考えていた私をリオンが腰に手を回し引き寄せた。
「何を考えている」
「ん、リオンと一緒で幸せだなって」
「そうか」
そう言って少し微笑んだ後唇を寄せようとしたリオンをセバスさんが注意する…
「坊っちゃんそういう事は二人でおこなってください」
「ちっ」
「リオン…人前は」
「分かっている」
不機嫌になったリオンに私は苦笑しセバスさんは溜め息を付きキール様は見なかったフリをする。そんな感じで私達は雷の洞窟へと足を進めた
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