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それから、仕事についてや、アルファオメガの常識について学んでいたらあっという間に一年という期間は過ぎ去った。
あの頃と比べ、無知ではなくなったし、番というのもどういう存在かわかる。だが、あの時の匂いには未だに会えていない。
俺の、運命……。
「今年は二人だねぇ」
「そうだな」
今年も、俺を置いて紺野はゆきをエスコートしながら歩いて行った。
久しぶりに生で会ったゆきは、本当に幸せそうで何よりだと思う。
紺野も心なしか、ゆきと共にいたほうが、生き生きして見える。
ゆきと二人で歩きだせば、方々から挨拶される。ゆきも、オメガとしては有名なほうだったらしい。
「あれ……?」
そんな中、ふわりとあの時香ってきていた香りが微かに再びしてきた。
どこだろうか?と探していれば、春も行きたい方向があるらしく、二人で別れる。
どこだ、どこだと匂いを辿れば、あまり人気のない壁際にたどり着いた。
この辺りからとぐるり、と辺りを見回すと一人の青年と目が合う。
まだ年若い、大学生ぐらいの男の子。
あぁ、と声が漏れる。
「君が……あぁ、運命だ」
一目見て、分かった。彼がそうだ。
どくん、と胸が高鳴る。
彼も、俺を見て目を見開いてそれからふわり、と笑う。
「あなたが、俺の……俺のアルファですね」
優しそうな青年だ。
ベータ、と見間違えてしまいそうな。
だが、それでもわかる。俺の、俺のオメガなのだと。
そっと、彼に手を伸ばせば、彼はその手をつかんで微笑んでくれる。
何かの、ドラマのワンシーンのような、そんな場面で。
花のような甘く香しい香り。抱きしめれば、抱きしめ返してくれる。
あぁ、幸せだと思う。
足りないものが埋まっていくような、そんな、感じをなんと例えようか……。
「俺のオメガ……俺に、囚われてくれ……」
何を言っているのか、自分でも驚く。
だが、運命を囲いたがるアルファの気持ちを一瞬で理解できてしまった。
この青年を、まだ名すら知らないのにも関わらず、誰にも見せたくない。自分のものにしてしまいたい。
誰にも取られないように、誰もこの青年に触れないように。
「いいですよ。その代わり、教えてください。あなたの名前は?」
「俺の、名前は、天川、陸……陸だ」
「陸……そう、陸さん……俺は安岡緑。緑です」
名前を呼んで、と乞われ、緑の名前を呼ぶ。
同じ、りく、の音を響かせる。
正確には、りく、と発音するのはおかしいのかもしれない。
けれど、そうだ。
彼は緑であり、りくなのだ。
「りく、りく……」
感極まる、それがこういうことなのかとただただ思う。
ぶわっ、と自分のフェロモンが広がるのがわかる。
そっと、口づければ彼のフェロモンまで吸い込むようで。
「あ、陸さん……?」
俺の意思とは裏腹に、体は傾いでそのまま緑へと倒れこんでしまった。
「り……」
ごめん、その言葉は消えていく。
あの頃と比べ、無知ではなくなったし、番というのもどういう存在かわかる。だが、あの時の匂いには未だに会えていない。
俺の、運命……。
「今年は二人だねぇ」
「そうだな」
今年も、俺を置いて紺野はゆきをエスコートしながら歩いて行った。
久しぶりに生で会ったゆきは、本当に幸せそうで何よりだと思う。
紺野も心なしか、ゆきと共にいたほうが、生き生きして見える。
ゆきと二人で歩きだせば、方々から挨拶される。ゆきも、オメガとしては有名なほうだったらしい。
「あれ……?」
そんな中、ふわりとあの時香ってきていた香りが微かに再びしてきた。
どこだろうか?と探していれば、春も行きたい方向があるらしく、二人で別れる。
どこだ、どこだと匂いを辿れば、あまり人気のない壁際にたどり着いた。
この辺りからとぐるり、と辺りを見回すと一人の青年と目が合う。
まだ年若い、大学生ぐらいの男の子。
あぁ、と声が漏れる。
「君が……あぁ、運命だ」
一目見て、分かった。彼がそうだ。
どくん、と胸が高鳴る。
彼も、俺を見て目を見開いてそれからふわり、と笑う。
「あなたが、俺の……俺のアルファですね」
優しそうな青年だ。
ベータ、と見間違えてしまいそうな。
だが、それでもわかる。俺の、俺のオメガなのだと。
そっと、彼に手を伸ばせば、彼はその手をつかんで微笑んでくれる。
何かの、ドラマのワンシーンのような、そんな場面で。
花のような甘く香しい香り。抱きしめれば、抱きしめ返してくれる。
あぁ、幸せだと思う。
足りないものが埋まっていくような、そんな、感じをなんと例えようか……。
「俺のオメガ……俺に、囚われてくれ……」
何を言っているのか、自分でも驚く。
だが、運命を囲いたがるアルファの気持ちを一瞬で理解できてしまった。
この青年を、まだ名すら知らないのにも関わらず、誰にも見せたくない。自分のものにしてしまいたい。
誰にも取られないように、誰もこの青年に触れないように。
「いいですよ。その代わり、教えてください。あなたの名前は?」
「俺の、名前は、天川、陸……陸だ」
「陸……そう、陸さん……俺は安岡緑。緑です」
名前を呼んで、と乞われ、緑の名前を呼ぶ。
同じ、りく、の音を響かせる。
正確には、りく、と発音するのはおかしいのかもしれない。
けれど、そうだ。
彼は緑であり、りくなのだ。
「りく、りく……」
感極まる、それがこういうことなのかとただただ思う。
ぶわっ、と自分のフェロモンが広がるのがわかる。
そっと、口づければ彼のフェロモンまで吸い込むようで。
「あ、陸さん……?」
俺の意思とは裏腹に、体は傾いでそのまま緑へと倒れこんでしまった。
「り……」
ごめん、その言葉は消えていく。
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