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ぶんぶん

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 ぽぽるるっぽっぽっぴ~!

 アオがジゼの護衛になりました!

 ジェディス家の衛士の白い装束に身を包んだアオは、見あげるほどの長身と、獣人らしいしなやかな逞しい身体と、細い腰が輝くようだ。

「アオ、すごぃ!」

 ぱちぱち拍手するリトに、真っ赤になったアオのしっぽがぶんぶんだ。

 成人したての3歳なアオは、人間でいうと18歳くらいかな?

 白い衣によく映える群青の長めの髪と、切れあがる群青の瞳の凛々しさ + ふわふわの青い耳と、もふもふの青いしっぽの愛らしさ = イケメン獣人最強説爆誕?

「……おもしろくない」

 背の高いアオを見あげてふくれるジゼの頬の愛くるしさが、世界の至宝だ──!

「人間はおっきくなるのが遅いんだよな? がんばって」

 ジゼより背が高いのがうれしそうにしっぽを振るアオに、ぶすくれるジゼ、尊い──!

「はぅあ! すねすねジゼしゃま、至高でし──!」

 拝むリトに、ジゼがほんのり赤くなって

「……ちぇ」

 すねたアオの青いしっぽが、ぺしゃんとしてる。


「楽しいことになりましたね」

 ジゼとリトとアオを代わる代わる見つめたセバが、によによしてる。


「父上にご挨拶を」

 ジゼの言葉に、ぺしゃっとなっていたアオのしっぽが、ぴんとする。

「は」

 うやうやしく腰を折るアオが、完璧だ!

「アオ、すごぃ!」

 ぱちぱち拍手するリトに、赤くなったアオが照れくさそうに笑う。


「いちおう獣人を代表してると思うから、ちゃんとした方がいいだろ?」

「はぅ──!」

 そうでした。
 貴族の人間にお仕えしている獣人は、とてもとても少ないと思う。
 リトは自分以外を知らない。

 ということは、獣人を代表してジゼしゃまにお仕えしているのに……!

「……僕、あんぽんたんでし……」

 ぺしょぺしょになった耳としっぽで項垂れるリトに、ジゼがぶんぶん首を振った。


「リトはとても優秀だ。お茶だって完璧だ!」

 ジゼの言葉にセバが微笑む。

「研鑽の余地はありますが、短期間でよく学んでいます。精霊語もすこし読めるようになっただろう? よくがんばったな」

 ペンだこのあるセバの大きな手が、リトの頭をなでなでしてくれる。


「……ふぇ……僕、獣人、だいひょ、自覚、なかた……アオ、えらぃ、でし……」

 しょんぼりするリトを、ジゼの腕が抱きしめる。


「最初から完璧な者など、存在しない。毎日のように現れる欠点や足りないところを見つめて、ほんのすこしでもやさしい光のほうへ向かおうと力を尽くすことこそ、生きるということだと思う」

 微笑むジゼの腕を、熱い頬で抱きしめるリトの隣で、アオが群青の瞳を細めた。


「……リトを救ってくれたから、感謝していた。獣人に手を差し伸べてくれる人間がいるのだと。
 あなただから、助けてくれたんだな」

 アオは深く頭をさげた。


「ありがとう」

 真摯な声に、ジゼは首を振る。


「遅くなった。すまなかった」

 頭をさげるジゼのつむじを見つめたアオが、膝をつく。


「リトを救ってくれたのが、あなたで、よかった」

 微笑んだアオがこうべを垂れる。



「ジゼさまにお仕えできることを、うれしく思います」

 ぽふりと青いしっぽが揺れた。






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