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すてきなしっぽ

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 アオも一緒にジェディス邸に帰ることになりました!


 従僕なのに護衛だなんてありえないし、申し訳なく思いながらも、でもきっとアオはジゼも守ってくれるから。

 ジゼを護る気持ちは人一倍だけど、リトの攻撃力と防御力は、たぶん1くらいだから。

 アオなら、絶対守ってくれる。
 無条件で信じられるほど、強くてやさしいアオが来てくれたら、きっとジゼも安全だ。

 うれしく思うリトのしっぽも、アオのしっぽも、ぶんぶんだ。

「よかたね、アオにーに!」
「よかた!」

 ちっちゃな獣人の皆が祝福してくれるのに、アオの顔が赤くなる。

「……ほんとに、いいのかな。なんか、ごめん。絶対だめだと解ってたから言ったのに」

 俯くアオの肩を、ジゼのごつごつの手が叩く。


「俺がリトの傍にいられない時もあるから。護ってほしい」

 微笑むジゼに、アオの顔が赤くなる。


「わ、わかった。あの、あんたのことも、ちゃんと守るから!」

 拳を握るアオの心象が、たぶん絶対、リトじゃなくジゼに傾いてる!

 見守るリトは、ちょっとほっとしたような、ほんのすこしだけさみしいような、でもやっぱりアオにはしあわせになってほしいのです。


「あんたじゃなく、ジゼさまです」

 セバの銀縁眼鏡がきらめいて、胸を拳で叩いたアオが頭をさげる。


「ご下命、承りました、ジゼさま」

 流れるようになめらかだった。


「アオ、すごぃ!」

 ぱちぱち拍手するリトに、赤い頬でアオが笑う。


「孤児院で、いろいろ教えてくれたんだ。誰が人間に仕えるか、と思って、あんまり聞いてなかったけど」

 照れくさそうに頭を掻いたアオは、孤児院を見あげる。


「俺らを傷つけ、虐げたのも、救ってくれたのも、人間だ。ちいさな俺たちは弱くて力なくて、服従することしかできなかった。救われたから生きてる。そんな情けないことは、終わらせたい」

 まっすぐな群青の瞳で、アオは告げる。

「獣人が、獣人であることを誇れる世界を。自らの足で立てる世界をつくりたい。獣人は強くて、賢くて、人間と対等になれる。それを世界に示すために人間に頼るのは、情けないけど。雇ってくれたこと、ありがとう」

 ジゼの前に膝をついたアオが、こうべを垂れる。


「誠心誠意、お仕えする」

 かすかに瞳を瞠ったジゼが、微笑んだ。


「期待する」

 ジゼの手がアオの肩をやさしく叩く。
 顔をあげたアオの頬が、ほんのり赤い。
 青いしっぽが、ぶんぶん揺れた。

「ぐ──!」

 セバとテデが胸を押さえてる。
 瞬いたジゼが、ふうわり笑った。

「しっぽはいいな。よくわかる」

「あぃでし」

 うむうむするリトに、アオがわたわたしてる。


「ち、違うから! 俺はリトひとすじだから!」

 ふるふるリトは首を振る。


「アオだけの誰か、きと、いるでし!」

 背伸びしたリトが、アオの群青の髪をなでなでする。


「はやはや、見つかゆ、祈てゆ」



「……リトだけの誰かは……」

 呟いたアオの瞳がジゼをかすめて、俯いた。
 ぎゅっと唇を噛んだアオが、顔をあげる。


「気持ちは変わるものだから。俺もがんばる」

 白い牙を見せて、アオが笑う。


「受けて立とう」

 ジゼの凍気があふれてる。







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