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ばたばた
しおりを挟む「よき衛士を雇えたようだな」
やさしい低い声に、セバの唇がほころぶ。
「ゲォルグさま」
ジゼとおそろいの蒼い瞳を細めるゲォルグの前に、ぴしりと立ったアオは垂直に頭をさげた。
「青狼の血を継ぐ獣人アオにございます。此度ジゼさまの護衛としてお仕えすることになりました。ご厚情に報いるためにもジゼさまに誠心誠意お仕えし、リトを、ジゼさまを、かならずお守りします」
「その気持ちを、うれしく思う」
微笑んだゲォルグがアオの肩に手をおいた。
「リトを、ジゼを、頼む」
「この身に代えて」
膝をつき、こうべを垂れるアオに、ゲォルグの笑みが深くなる。
「リトとアオを連れ歩くジゼは、獣人差別を撲滅するどころか、獣人の素晴らしさを喧伝することになるだろうな」
楽し気にジゼの瞳が閃いた。
「広告塔になれと仰せですか」
「言わずとも、なるのだろう? ジゼの傍にはリトが、リトの傍にはアオが」
ふわりとジゼの前に屈んだゲォルグが、おそろいの瞳を覗き込む。
「がんばれ、ジゼ」
父の手が、息子の肩を励ますようにぽんぽんする。
ほんのり赤くなったジゼは、おそろいの父の瞳を見つめて微笑んだ。
「負けません」
「それでこそ我が愛息だ。ああ、アオも遠慮はいらない。正面から闘ってこそだから」
微笑むゲォルグの言葉に真っ赤になったアオが、こくりと頷いた。
会話の意味がよく解らなくて首を傾げるリトを、セバのてのひらがぽんぽんしてくれる。
やさしい。
獣人として素晴らしく強いらしいアオだけれど、護衛任務なんてしたことがないので、ジェディス家衛士長自ら教えてくれるらしく、お勉強だ。
獣人を代表している自覚をもったリトも、今までより一層熱を入れて、セバの教えに喰らいついている。……たぶん。
き、気持ちはしっかり、がんばるよ!
……け、結果は……結果は…………
うりゅうりゅの涙目になるリトに、ジゼもセバもアオも真っ赤になって胸を押さえてる。
「いやもうリトは、しっぽ、ぽふぽふしてたらいいよ」
毎日の診察をしつつ頭をなでなでしてくれるテデが、甘やかし大王だ。
「だ、だめでし! 僕、ジゼしゃま、従僕、ぉしごと、がんばゆ!」
「リトはとてもよく気がついて、とても頑張ってくれている!」
真っ赤な頬でジゼが拳を握ってくれる。
ジゼしゃまも、甘やかし大王でし。
「確かにリトは頑張っていますし、優秀です。ただ、おそらくアオは衛士として刮目されるほど優秀になるでしょう。比較されて落ち込まないよう、リトも刮目の従僕になる必要があるのです」
刮目の従僕──!
『絶対無理です』とか言ったらだめなのは解ってる!
「セバ、ありあと、でし、僕、がんばゆ!」
ちっちゃな拳を握って、しっぽを決意にぴんとしたら、ジゼもテデもアオもセバも、赤い頬で胸を押さえた。
「おい、休憩終わりだぞ、アオ! ったく、目を離したら即行、若のお傍に参るんだから。職務命というより、ジゼさま大すき過ぎだろ!」
ジゼの執務室に顔を覗かせた衛士長に呼ばれたアオが、真っ赤になってばたばたしてる。
「え、いや、違──!」
「そんなかっこいー顔して、しっぽぶんぶんじゃねえか! クソかわいーな!」
「ち、違──!」
青い耳までほんのり赤いアオが、ばたばたしてる。
かわいい。
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