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あなたのなまえ
しおりを挟む涙目で見あげるリトに、ジゼが胸を押さえる。
セバも胸を押さえてる。
おそろいだ。
これは──
「……くせ? 流行てる?」
「……あ、あぁ」
こほんと咳払いしたジゼは、涙目なリトの頭をなでなでする。
「俺の傍には、リトがいてくれるんだろ?」
「あい! 終生、あるじしゃま、お仕え!」
胸に手をあて、膝をつく。
一緒に屈んでくれたジゼは、リトと目をあわせて微笑んだ。
「なら、ひとりにならない」
「あぃ。で、でも……」
この世界は、獣人を蔑む人でいっぱいだ。
そうじゃない人のほうがずっとずっと希少で、ジゼの周りからジゼを支える優秀な人が消えてしまう。
「リトを傷つけるような輩は、俺の傍に置くに相応しくない。よく解ってありがたいよ」
ごつごつの指が、頭を撫でてくれる。
「……ぅ……っ!」
あふれる涙に、ジゼが跳びあがる。
「リト──!? 傷が痛むのか、今すぐテデを──!」
叫ぶジゼの小指を、きゅ、と握る。
「……ありあと、ござ、まし」
あふれる涙で、ささやいた。
見開かれた蒼の瞳が、揺れる。
ジゼの腕が、伸びてくる。
「リト」
あたたかな手が、背を抱いてくれた。
透きとおるように清冽な、なのにとろけるように甘い、ジゼの香りに包まれる。
最愛が、獣人の僕に、やさしくしてくれる。
夢みたいで
理想さえ、超えてゆくから
あふれる想いが、止まらない
『大すきです』
獣人の身でなんて言えないから、そっと、その背に手を回す。
「ジゼしゃま」
涙にかすれる、あなたの名が、こんなに甘い。
ジゼに仕えていた侍従も従僕も皆、獣人であるリトが重用されることが許せなかったらしい。
「臭い」
「死ね」
「獣め!」
いじわるされた瞬間、ジゼやセバが衛士を引き連れて、しゃっとやってきて
「帝国法違反で罷免、解雇!」
断言してくれた。
おかげでジゼの侍従も従僕も、ひとりもいなくなってしまった。
「ジゼしゃま……!」
泣きじゃくるリトを、ジゼが抱きしめてくれる。
「リトが、いてくれるだろ」
「ぁい……!」
わんわん泣いたリトは、決意する。
やさしいジゼに応えるために、完璧な従僕にならなくては!
涙の瞳で、猛勉強を開始した。
前世の記憶は朧気だが、あんまり勉強ができた覚えがない。
勉強と聞くだけで、鳥肌が立つ。
ピンチだ──!
だが、さいわい、リトはまだ5歳だ。
脳みそが、やーらかい!
……いや、おじいちゃんになっても脳みそはやわらかいと思うけど、硬くなったら命のピンチだと思うけど、でも多分、今が一番、勢いよく憶えられる時だと思う!
ちっちゃい拳を握ったリトは、セバにくっついて礼儀と所作を学び、セバにくっついて世界の一般常識を学び、ルディア帝国のことを学び、ジェディス家の領地のことを学び、ジゼの執務を学んだ。
朝から晩までセバの後ろをついて歩き、セバの執務室でお勉強している。
「セバ、これ……」
「あぁ、これが建前、こっちが本音」
「わかた」
貴族のドロドロな利権争いと領地争い、表の顔と心の奥まで教えてくれる。
ふんふん頷きながら、裏紙に勉強したことを纏めていると、扉が開いた。
月の髪が、さらりと流れる。
「おもしろくない」
ふくれるジゼの顎が、頭にのってる気がする。
ジゼやゲォルグの前では常に完璧なはずのセバのほっぺたがフグみたいになって
「ぶっフォ──!」
吹きだして笑ったが、何事もなかったかのように銀縁眼鏡を押しあげた。
「一般教養ですから、わたくしがお教えするのが相応しいでしょう。ジゼさまには執務も勉学も、鍛錬もあられます」
「いやお前今、吹いたよな」
突っ込むジゼに
「幻覚です」
にこりと微笑むセバは、いつもどおり完璧だ。
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はじめましての方、いつも見てくださる方、心からありがとうございます!
たくさんの方が見てくださったご様子で、お気に入りやいいねやご感想やエールをありがとうございます。
ひとつひとつのお気に入り、いいね、エール、ご感想が、応援してくださるお気持ちが、とてもとてもうれしいです。
そうそう、びっくりしたのですが、ご感想で、みなさま『ジゼさま』なんですが!(笑)
リトはあるじしゃまなのでジゼしゃまですが(笑)どうぞお気軽にジゼとお呼びくださいね!
リトと一緒にジゼを気に入ってくださる方がいらっしゃるご様子で、大変うれしいです。
今まできらわれる攻か、特に言及のない攻(笑)しか書けなかったので、初の愛され攻です!(笑)
リトかわいい、めちゃくちゃうれしいです、ありがとうございます!
リトも真っ赤なほっぺで、しっぽぶんぶんです!(笑)
これからもリトとジゼのお話を楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
いつも心から、ありがとうございます!
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